研究課題/領域番号 |
22K03556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
外山 吉治 高崎健康福祉大学, 農学部, 教授 (50240693)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 線溶 / フィブリンソフトクロット / フィブリンハードクロット / 水晶振動子マイクロバランス / フィブリン / プラスミン / 流動場 |
研究開始時の研究の概要 |
線維素溶解(線溶)は血液凝固によって生じた不溶性のフィブリン塊を可溶性のフィブリン分解産物に分解する反応である.血栓症の治療や新規治療薬の開発において,線溶のダイナミクスとメカニズムの関係は極めて重要な課題である.フィブリン塊にはフィブリノゲンに酵素トロンビンが作用して形成される“ソフトクロット”とさらに,これにXIII因子が作用してできる安定で硬い“ハードクロット”がある.本研究では,流れのない静止場と血管内の血流を考慮した流動場におけるソフトクロットとハードクロットの線溶のダイナミクスを水晶振動子マイクロバランス法を用いて調べる.
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研究実績の概要 |
本年度の研究実績は次の1)~3)である。 1)静止場におけるソフトクロット線溶へのプラスミン濃度の影響:0.25 mg/mLフィブリノゲン水溶液にトロンビンを0.25 U/mLを加えて水晶振動子表面にソフトクロットを作製した。これにプラスミンを0.01および0.05 U/mLになるように添加し、線溶にともなう周波数変化を測定した。その結果、線溶に要する時間は0.01 U/mLでは25分、0.05 U/mLでは5分と酵素濃度の増加により減少した。 2)静止場におけるソフトクロット線溶へのトロンビン濃度の影響:ソフトクロットのゲルネットワーク構造はトロンビン濃度によって影響を受ける。0.25 mg/mLフィブリノゲン水溶液にトロンビンを0.025および0.25 U/mLを加えて振動子表面にソフトクロットを作製した。これにプラスミンを0.01 U/mLになるように添加し、線溶にともなう周波数変化を測定した。クロット形成に要する時間は0.025 U/mLで約75分、0.25 U/mLでは約25分とトロンビン濃度の増加によりゲル形成時間は短縮した。一方、線溶に要する時間は0.025 U/mLで約120分、0.25 U/mLでは約25分と時間をかけて作製したクロットの方か線溶に要する時間が長くなった。 3)静止場におけるハードクロット線溶へのプラスミン濃度の影響:カルシウムキレート剤により凝固阻止されてウシ由来血漿に塩化カルシウムを25 mM加えて水晶振動子表面にハードクロットを作製した。プラスミンを0.2 U/mLになるように添加し、線溶にともなう周波数変化を測定した。その結果、60分以上が経過しても線溶に伴う周波数変化は見られなかった。このことから、流れのない静止場ではプラスミンによるハードクロットの線溶は起こらないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内における具体的な目標は次の1)から4)である。 1)静止場におけるソフトおよびハードクロットの線溶過程の測定:ズリ応力の影響を知るために流れのない静止場におけるソフトクロットとハードクロットの線溶過程を測定する。2)線溶過程の解析方法の確立:酵素(トロンビンおよびプラスミン)濃度依存性の基礎データをもとに線溶過程に対する実験式を求め、線溶活性の指標となるパラメーターを決定する。3)流動場における測定装置の作製:現在の測定装置(静止場のみ)を流動場で測定可能な装置へと改良する。4)流動場におけるソフトおよびハードクロットの線溶過程の測定と解析:本研究の目的でもある線溶活性の測定法を確立し、得られたパラメーターよりズリ応力の影響を調べる。 研究計画で本年度の達成目標は1)および2)である。1)については、概ね予定通りに達成している。2)については、最適な解析法の確立には至っていないため当初の研究計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度未達成であった解析法を確立する。その後は当初の研究計画に沿って1)~3)を行う。1)流動場における測定装置の作製:静止場の測定装置を流動場で測定可能な装置へと改良する。2)線溶酵素プラスミン添加のタイミング:線溶はクロット形成後の経過時間(エイジング時間)に大きな大きな影響を受けるため、プラスミンを添加する時間を変えて線溶過程を測定する。3)クロット線溶過程へのズリ応力依存性:血管の太さは数ミクロンから数センチと様々で、それに応じて流量も大きく変化する。従って、血栓が形成された場所によってズリ応力は大きく変化する。チュービングポンプによるプラスミン等の線溶剤の環流速度を変化させて線溶過程を測定する。
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