研究課題/領域番号 |
22K03557
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
岡野 真人 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 准教授 (10612525)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | テラヘルツ分光 / ファイバーレーザー / ポリ乳酸 / 高分子結晶化 / 位相分解分光 / 高分子材料 / デュアルコム分光 / テラヘルツ振動分光 / 高分子 |
研究開始時の研究の概要 |
高分子は時空間上でマルチスケールな階層構造を有しており、各階層の構造体が相互作用することでマクロスコピックな物性が決定される。そのため、高分子物性を真に理解するには各構造体の応答を系統的かつ網羅的に調べる必要がある。本研究では、様々な波長帯の光を同時発生可能かつ位相敏感なデュアルコム分光装置を実現し、複素誘電率スペクトル測定を通じて不可逆相変化にともなう高分子内部での振動構造の変化を明らかにすることを目的とする。そして、分光学に立脚した新しい高分子階層構造解析法の確立を試みる。
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研究実績の概要 |
本年度は、前年度で成果が得られたテラヘルツ光領域に焦点を絞り、広帯域テラヘルツ分光装置の開発と高分子の結晶化機構の研究を中心に行った。前者に関しては、前年度から取り組んでいるファイバーレーザーを光源、非磁性体/磁性体薄膜で構成されるスピントロニックテラヘルツエミッタを発生素子に用いたテラヘルツ時間領域分光測定装置の広帯域化を試みた。発生および検出帯域がレーザーのパルス幅で制限していることがわかったため、非線形シュレディンガー方程式を利用してファイバーレーザーの短パルス化を行った。その結果、ファイバーアンプを構成する各種ファイバーの長さのみを調整することで140フェムト秒までパルス幅を圧縮することに成功した。このように空間光学系を使用せずにパルス圧縮を行うことで、光源の汎用性を拡げることができる。併せて、テラヘルツ分光光学系を改善することで、1 THzから4 THzまで帯域を拡げることに成功した。後者に関しては、ポリ乳酸を試料とし、加熱結晶化と延伸結晶化の2つの異なる結晶化過程についてテラヘルツ帯の複素誘電率スペクトルを利用して調べた。加熱結晶化については、前年度に観測されたX線回折法による計測結果との違いを明確化するために、加熱方法や加熱温度などの条件の最適化と再現性の確認を行った。その結果、テラヘルツ分光結果から得られた加熱結晶化ダイナミクスはX線回折の結果に比べて、立ち上がりが遅く、飽和するまでの時間が長いことが明らかとなった。このような違いは、両手法が異なるスケールの結晶構造をプローブしていることに起因していると明らかにした。また、延伸結晶化については、テラヘルツ分光を利用した結晶化過程の観測方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から開発に取り組んでいるファイバーレーザーベースのテラヘルツ光源の広帯域化について大きな進展が得られた。また、テラヘルツ複素誘電分光を用いたポリ乳酸の結晶化過程の研究を通じて、計画当初は予想していなかった既存の手法であるX線回折では見られない結晶化過程に関する新しい知見を得ることができた。さらに、高分子結晶化の研究に対するテラヘルツ分光の有用性を調べるために、延伸結晶化過程についても研究を進めている。いくつかの顕著な成果が得られており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
延伸結晶化過程をさらに詳細に調べるためには偏光測定が必須であるため、広帯域テラヘルツ光源を偏光測定に適用するための光学系の開発を行う。さらに、もう1台ファイバーレーザーを作製し、2つのレーザーの周波数制御を通じて非同期サンプリング測定の実現も試みる。本年度は最終年度であるため、外部発表を積極的に行うとともに、今まで得られた研究成果をまとめて論文として投稿する。
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