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多階層性に注目した磁気圏界面におけるプラズマ乱流輸送機構の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K03568
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分14010:プラズマ科学関連
研究機関兵庫県立大学

研究代表者

沼田 龍介  兵庫県立大学, 情報科学研究科, 准教授 (30615787)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード電磁乱流 / ジャイロ運動論 / 階層性 / プラズマ加熱 / 微視的乱流 / シミュレーション / 磁気圏プラズマ / 乱流輸送 / 磁気リコネクション
研究開始時の研究の概要

宇宙空間における地球近傍の環境は,太陽風と呼ばれる太陽から放出されるプラズマ(荷電粒子や放射線)にさらされている.通常プラズマは地磁気を横切って磁気圏に侵入できないが,太陽風磁場と地磁気がつなぎ替わる磁気リコネクションと呼ばれる現象がおこると太陽風プラズマの磁気圏への輸送が起こる.このような太陽風と磁気圏プラズマの相互作用は,通信環境など人間生活に大きな影響を及ぼす.本研究では,プラズマの微視的不安定性によって太陽風プラズマが磁気圏に侵入する新たな輸送機構を提案し,先進的運動論モデルシミュレーションによってそのメカニズムの詳細な検証を行う.

研究実績の概要

本研究では,微視的なプラズマ乱流輸送がマクロな磁気圏ダイナミクスに与える影響を明らかにするために,運動論シミュレーションによる解析を行っている.
これまで,磁気圏プラズマにおける微視的乱流輸送を解析するために,真空ダイポール磁場を用いたシミュレーションが行われてきているが,本年度の研究では,有限プラズマ圧力を持つ平衡を取り扱えるようにシミュレーション環境の整備を行った.コイル電流が生成する磁場に対して電磁流体力学(MHD)平衡を計算するコードを用いて,環電流が生成する双極子磁場における有限ベータMHD平衡を計算し,得られた磁場,圧力分布から,局所的ジャイロ運動論シミュレーションの座標系生成のための計量を求めた.得られた有限ベータ平衡配位において,磁場曲率と圧力勾配が駆動する微視的不安定性(エントロピーモード)の解析を行い,電磁的な効果によって不安定性の成長率が大きくなることを示した.
また,エントロピーモードの不安定化機構を波動のエネルギーの観点から解析した.線形解析の過程で,背景プラズマの温度や注目する局所的な磁力線の位置によって,波動の伝わる向きが電子またはイオンどちらのドリフト方向かが決まることがわかった.このことは,不安定化機構が電子由来かイオン由来かが変わることを示唆していると考えた.波動のエネルギーを解析することにより,正負のエネルギーを持つ粒子種がカップリングすることによって不安定化が生じ,負のエネルギーを持つ粒子種が背景からエネルギーを取り出してゆらぎを成長させることが示された.非線形過程では,負のエネルギーを持つ粒子が他方の粒子を加熱することを明らかにした.このような機構により,磁気圏では無衝突であっても系は等温状態に向かうことが示唆される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画では,マイクロテアリング不安定性の理論を磁気圏磁場に拡張し,マイクロテアリングモードによる電磁的乱流輸送が磁気圏プラズマの自己組織化過程に与える影響を解析する予定であった.一方,今年度の研究中に,これまで取り扱っていた静電的なエントロピーモードが生成する乱流中でエネルギーを粒子種間で交換することによる新しいプラズマ加熱機構を見出した.線形の不安定性を解析することによって負のエネルギーを持つ粒子種がエネルギーを背景プラズマから取り出すことによって不安定化することを明らかにし,非線形段階において加熱が起こる方向を負のエネルギーをもつ粒子種から正のエネルギーを持つ粒子種であると対応づけることができた.磁気圏プラズマの自己組織化過程を理解する上で,新たに見出したプラズマ加熱機構は重要な役割を果たすことが考えられる.これまで,乱流輸送に注目していたが,次年度は,輸送と加熱をともに考慮に入れた解析に方向転換することを検討する.当初の方向とは異なるがより興味深い方向に研究が発展しつつあり,順調に研究は進展していると言える.

今後の研究の推進方策

磁気圏プラズマの自己組織化過程を解析する上で,これまで乱流輸送に注目し,静電的な乱流輸送から電磁的な乱流輸送へ理論を精密化する方向で研究を行ってきたが,今年度の研究で,新たなプラズマのエネルギー変換過程として乱流によるプラズマ加熱(粒子種間のエネルギー輸送)過程が見出されたことにより,輸送と加熱を考慮に入れた統一的な自己組織化プロセスを構築することを新たな目標とする.様々なパラメタによってシミュレーションを実施し,輸送や加熱が卓越するパラメタ領域を明らかにする.それによって磁気圏プラズマが自己形成する状態を予測する理論を構築する.
新たに見出されたプラズマ加熱プロセスを,実験・観測によって同定することも興味深い.近年の実験計測や宇宙プラズマ観測技術の精緻化により,プラズマの速度空間構造を明らかにすることが可能になってきている.エントロピーモードによるプラズマ加熱には波動と粒子の共鳴が重要であり,速度空間に特徴的な構造を形成する.実験室プラズマや宇宙プラズマの研究者と議論し,エントロピーモード乱流によるプラズマ加熱の可能性を検証する新たな研究を立ち上げることを検討する.

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Destabilization mechanism of the collisional microtearing mode in magnetized slab plasmas2023

    • 著者名/発表者名
      Yagyu Mitsuyoshi、Numata Ryusuke
    • 雑誌名

      Plasma Physics and Controlled Fusion

      巻: 65 号: 6 ページ: 065003-065003

    • DOI

      10.1088/1361-6587/accbeb

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] Electromagnetic Turbulence in Magnetospheric Plasmas2023

    • 著者名/発表者名
      R. Numata
    • 学会等名
      49th European Conference on Plasma Physics
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Energy dissipation in microtearing turbulence2023

    • 著者名/発表者名
      M. Yagyu and R. Numata
    • 学会等名
      49th European Conference on Plasma Physics
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Gyrokinetic simulations of electromagnetic turbulence in a dipole configuration2022

    • 著者名/発表者名
      R. Numata
    • 学会等名
      64th Annual Meeting of Division of Plasma Physics, Americal Physical Society
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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