研究課題/領域番号 |
22K03570
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14010:プラズマ科学関連
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
樋田 美栄子 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00273219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 高速粒子 / 不安定性 / 低域混成波 / 粒子シミュレーション / 高調波 / 加速 / 波動・粒子相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
多数の荷電粒子の集まりであるプラズマ中には幅広い周波数の波動が存在し、それらの波動と粒子は複雑な相互作用をする。本研究は、高速粒子が発生し続けるという状況下での波動の励起とその長時間発展を、スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーションにより解析する。広周波数帯波動のスペクトルの時間変化、それに伴う波と粒子の間のエネルギーの移送などを示すとともに、その物理機構を解明する。また、系統的シミュレーションによって、その機構が起こる条件を提示し、広周波数帯波動の長時間発展に関する体系的理解へと繋げる。これにより、核融合と宇宙のプラズマの様々な未解決問題に応用できる新たな知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
磁場に垂直方向の速度空間でリング状の分布を持つ高速イオンは、核融合プラズマでは、プラズマ加熱用の高速中性粒子入射によって、宇宙プラズマでは無衝突衝撃波や磁気再結合による粒子加速によって生成される。そのようなリング状の高速イオンが引き起こす不安定性という、核融合と宇宙のプラズマに共通する物理を切り出し、イオンサイクロトロン周波数から電子サイクロトロン周波数に及ぶ広い周波数帯の波動が関与する非線形発展を、電磁粒子シミュレーションを用いて研究している。高速イオンのリング速度がアルヴェン速度より小さい場合、イオンと電子のサイクロトロン周波数の間の周波数を持つ、低域混成波が不安定となることが線形理論により予測されている。これまでの研究で、高速イオンを注入し続けることにより、低域混成波が減衰せずに振幅を維持することが明らかになっている。今年度は、核融合プラズマと地球磁気圏プラズマの両方で、低域混成波の高調波が観測されていることに注目してシミュレーション解析を行った。 まず、低域混成波高調波が観測されている地球磁気圏極域上空の物理量に近いパラメータ値を使って、リング状の高速イオンを注入し続けるシミュレーションを行った。その結果、低域混成波の高調波構造を再現することに成功するとともに、高調波が数多く励起されるとイオンがより強く加速されることを示した。この結果は、地球極域からのイオンの大量流出という、長年の未解決問題の解決に向けた新たな可能性を示すものであり、本成果をまとめた論文を発表した。さらに、高調波の非線形励起機構について詳細な解析を行い、その結果をまとめた論文を投稿した。また、宇宙と核融合のプラズマでは、高速イオンの種類は様々なものがあり得ることから、低域混成波不安定性の非線形発展における高速イオンの質量依存性についても研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題は、リング状の速度分布を持つ高速イオンによる不安定性の非線形発展を、開放系非線形粒子シミュレーションを用いて解析することで、核融合プラズマにおける広周波数帯の電磁波放射、宇宙プラズマにおける粒子加速など、様々な未解決問題に適用できる新たな知見を得ることを目指している。核融合と宇宙のプラズマは磁場、密度、温度などは何桁も異なるが、電子サイクロトロン周波数とプラズマ周波数の比 、β値(プラズマ圧/磁気圧)はほぼ同程度となりうる。また、プラズマの波の分散関係は、それららの値と、高速イオンのリング速度とアルヴェン速度の比などによってきまる。そこで本研究は、これらを支配パラメータとして解析を行っている。
今年度は、リング速度がアルヴェン速度の数パーセントという小さい場合について集中的に解析を行い、地球磁気圏で観測されていた現象を再現するとともに、イオン加速に関する新たな可能性を提示することができた。また、核融合と宇宙のプラズマはともに多種類のイオンを含むが、そのようなプラズマに対応するようにシミュレーションコードを拡張して研究を開始した。以上のことから、初年度は、おおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を発展させ、高速粒子による低域混成波不安定性の非線形発展に関して系統的シミュレーションを行い、高調波の非線形励起機構の詳細を解析するとともに、高調波が生成される条件を明らかにする。また、低域混成波高調波は、地球磁気圏だけでなく核融合プラズマでも観測されているため、それらの共通点ならびに相違点を明らかにする。また、低域混成波の高調波によってイオン加速が促進される物理機構を調べる。 核融合と宇宙のプラズマの高速粒子には、水素やヘリウムなど様々なイオン種が存在しうる。そこで、低域混成波の非線形発展における高速粒子種の依存性を明らかにする。そして、その結果を基に、多種類のイオンを含むプラズマにおいて、高速粒子の速度分布の変化、波動スペクトル、背景プラズマの各種イオンへのエネルギー輸送量などが、どのように決まるのかを調べる。 以上の解析は、高速粒子の速度がアルヴェン速度より小さいことを仮定する。また、高速粒子を系に注入し続けるというシミュレーションモデルを用いる。これを発展させて、高速粒子の損失効果を取り入れたシミュレーションを行い、その効果を解析する。さらに、より複雑な非線形発展が予想される、高速粒子の速度がアルヴェン速度より大きい場合についての研究を開始する。
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