研究課題/領域番号 |
22K03577
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
河野 晴彦 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (70710846)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | シース / 高周波加熱 / 磁場核融合 / 有限要素法 / RFシース / 磁場閉じ込め核融合 / プラズマ物理学 / 数値解析 |
研究開始時の研究の概要 |
RF(radio frequency)プラズマが導体壁面に接することにより壁面上に生じるRFシースの制御は,高周波波動加熱を採用する核融合炉において重要な課題である.本研究では,まず,磁力線と壁面の接点を有する場合に対しても適用可能なマイクロスケールRFシースモデルを構築するために,電子に関する物理量を求めるための式を再考し,影領域を導入するための方法を考案する.そして,開発した数値計算コードを用いて,接点近傍で大きく変化することが予想されるシースの性質を解明することを目指す.
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研究実績の概要 |
まず、研究代表者らが開発した、2次元領域に適用しうるマイクロスケールRFシースモデルに基づく計算スキームの詳細、およびそれにより得られた成果をまとめた論文が採択された(H. Kohno et al., Comput. Phys. Comm. 291, 108841 (2023))。これにより、これまで正確に計算することが困難であった、シース幅の時間平均値と壁面の曲率半径が同程度となる条件においても、シースアドミタンス等の重要な値を正しく求めることが可能になった。 しかし、この段階でのマイクロスケールRFシースモデルは、イオン電流が壁面において解析領域(プラズマ)の内部に向かうような場合に計算が不安定となることが確認された。そこで、イオンの速度とイオン密度に適切な境界条件を定めたところ、計算が安定し、物理的にも正しい解を得ることができた。さらに、無次元イオンサイクロトロン周波数が1よりも大きく、かつそれがRF波動の無次元角周波数ωとほぼ等しくなる場合に、イオンアドミタンスの値が急上昇する共鳴現象を捉えることもできた。これは、1次元領域においてPIC法を用いて得られたRezazadehらによるシースの計算結果(M. Rezazadeh et al., Nucl. Fusion 63, 126024 (2023))と定性的に似たものであるが、無次元イオンサイクロトロン周波数を横軸にしたグラフにおいて、ω>>1ではイオンアドミタンスの値が共鳴周波数近傍で周期的に振動するなど、新たな知見も得られた。 上記の計算スキームでは電子の運動にMaxwell-Boltzmann近似を施しているが、その近似が成り立たない場合に、電子に対してもイオンの連続の式および運動方程式と同等の方程式を適用するスキームの開発も継続している。現在は計算の安定性に問題があるため、引き続き改良を重ねる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に大きな課題の一つとなっていた、壁面におけるイオン電流の向きに関係する計算の不安定性を「研究実績の概要」で述べたように解決することができた。これにより、磁力線が壁面に対してほぼ接するような角度で交差する場合においても安定に計算を行うことができ、そのような条件において、周期的定常状態の1サイクル中で壁面近傍のイオン電流がプラズマの内部へ向かう時間が生じることが確認された。このような結果や「研究実績の概要」で述べた共鳴現象などの成果は、核融合分野を扱う科学学術雑誌に投稿する予定である。 電子に対して、Maxwell-Boltzmann近似を適用しないスキームの開発も進めているが、現状はイオンサイクロトロン周波数がRF波動の角周波数に近づく場合に計算が不安定になることが確認されている。このスキームでは、2次元領域に適用しうるMaxwell-Boltzmann近似を施したスキームと異なり、方程式を完全に陰的に離散化しておらず、運動方程式の移流項に上流化手法を採用している。そのため、数値的安定性を保ちながら適用範囲を広げていくことが今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の前半は「現在までの進捗状況」で述べた論文の作成に注力する。特に、本研究で構築した2次元マイクロスケールRFシースモデルを用いて、シース境界条件の改良につながる結果を明示することが重要である。その後、「研究実績の概要」で述べた電子の方程式を導入したスキームの構築を継続する。計算の安定性も重要であるが、Maxwell-Boltzmann近似を施さない場合は、1次元領域であっても多大な計算時間が問題になる。最終的には2次元のモデルを構築する必要があるため、必要に応じてモデルを簡略化することも検討する。
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