研究課題/領域番号 |
22K03581
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
宇佐見 俊介 核融合科学研究所, 研究部, 准教授 (80413996)
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研究分担者 |
堀内 利得 核融合科学研究所, その他部局等, 名誉教授 (00229220)
森高 外征雄 核融合科学研究所, 研究部, 助教 (20554372)
小野 靖 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30214191)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | イオン加熱 / リング速度分布 / 球状トカマク / 粒子シミュレーション / 磁気リコネクション / 加熱 |
研究開始時の研究の概要 |
球状トカマクにおけるプラズマ合体を模擬した粒子シミュレーションを実施し、主に速度分布関数を解析することで、プラズマ加熱の根本機構を明らかにする。その上で、高温プラズマを作り出す効率のよい加熱条件を同定する。一方、用いる粒子コードの並列化・高速化や、可視化手法の開発も行う。また、東京大学の球状トカマク実験グループと、見出した加熱機構の検証、提案した条件での実験実施などの連携をする。
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研究実績の概要 |
球状トカマクにおけるプラズマ合体は、磁気リコネクションにより、将来の核融合炉で必要とされる温度にまでプラズマを加熱する初期加熱手法として注目を集めているが、その具体的な加熱機構は未解明となっている。本研究では、粒子速度分布の面から運動論的な加熱機構を解明することをめざして、粒子シミュレーション、理論、さらに実験面とも連携して研究を進めている。昨年度にリング、部分リング型のイオン速度分布を見出し、イオンは実効的な加熱機構を受けていることを示したが、2023年度は、合体中と合体後におけるその違いを明確にした。合体中は、速度の大きなイオンが短時間、間欠的に供給されるため半径の大きな部分リング型が作られる一方、合体後は、速度の小さなイオンが長時間、継続的に供給されるため半径の小さな完全リング型が作られることを解明した。 また、リング型速度分布の研究から派生した「三日月型速度分布」に関するテーマに取り組んだ。2次元理論では既存の理論モデルを発展させ、ガイド磁場に相当する一様な磁場だけが存在し、リコネクション磁場に相当する反転磁場が存在しなくても、三日月型速度分布が形成されることを示した。3次元理論では、カノニカル運動量保存、エネルギー保存、磁気モーメント保存などに基づいて、三日月型速度分布の3次元構造を導出することに成功した。以上の理論を粒子シミュレーション結果と比較し、よい一致を見た。 粒子シミュレーションモデルの発展面としては、これまでは「球状トカマク配位」のみを扱ってきたが、実験面からの要請もあり、「スフェロマック配位」も扱えるようにコードを拡張し、そのシミュレーションを実施するところまで進めることができた。実験面では測定装置の改良を継続し、シミュレーションデータとの比較を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
球状トカマク合体の粒子シミュレーション研究面では、イオン加熱機構の探求を進め、マクロな視点では圧縮加熱を運動論的な視点で解明し、リング型速度分布の詳細な形成メカニズムを示すことができた。その反面、マクロな視点における粘性加熱を運動論的な視点から完全に解明するまでには至らず、当初計画よりも遅れていると言える。 その一方、シミュレーションコードの改良面では大きな進捗が見られた。これまで採用してきた球状トカマク配位だけでなく、スフェロマック配位でのプラズマ合体も扱えるようにコードを改良したこと、さらに実際にそのような粒子シミュレーションを実施して、イオン加熱に関して実験面との最初の比較をするところまで進めたことは予想以上の進捗であった。 また、上述したリング型速度分布から派生した研究テーマである、三日月型粒子速度分布に関しては大きな成果を得ることができた。特に、分野間横断研究テーマとなったことは当初計画以上の進捗である。中でも、既存の理論や人工衛星での観測によって導かれていた「三日月型速度分布の形成には、磁場反転などの磁場の空間的な変化が必要である」という定説を覆したことは、非常に大きな波及効果を持つ重要な成果である。この三日月型速度分布は、リング速度分布と同時に存在することが多いことから、球状トカマク合体においても三日月型粒子速度分布が形成されうることを示す成果にもなった。 以上から総合すると、全体としては本研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、球状トカマク装置内部において、磁気リコネクションによってプラズマが合体する実験を模擬した粒子モデルの改良を行いながら、そのモデルを用いた粒子シミュレーションを行い、シミュレーション・理論・実験との連携を深めてプラズマ合体における加熱過程の解明を進めて、効率のよい、あるいはより高温に達する加熱条件を探求する。特に、球状トカマク配位だけではなく、スフェロマック配位におけるプラズマ合体について、様々なパラメータ下で多数の粒子シミュレーションランを行い、加熱の密度、磁場強度などのパラメータ依存性を探求する予定である。その際には、速度分布関数解析に加えて、粒子個々の起動・運動を追跡する手法や、実験面から提案された新しい物理指標を用いることで、機構解明にアプローチすることも計画している。さらに、スフェロマック配位の場合には、2つのプラズマにおけるトロイダル磁場が同じ方向の「同極性合体」と反対方向の「異極性合体」があり、異極性合体のプラズマ合体実験では、解放される磁場エネルギーが大きいことから、強い加熱が起こる場合があるとの報告がある。このことから、異極性合体における加熱機構を重点的に粒子シミュレーションで調べる計画である。他にも、粒子シミュレーションにてプラズマが合体する速度を人為的にコントロールする手法などの開発を進め、東京大学の球状トーラス装置TS-6などで実施されている実際の実験により近い状況を模擬できるようにしていく予定である。 また、用いているシミュレーションコードの高速化・並列化をさらに推し進めつつ、ベクトルマシンである核融合科学研究所のスーパーコンピュータとは別種類の大型計算機でも、効率よく粒子シミュレーションが行えるように、コード移植、汎用化にも取り組む。
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