研究課題/領域番号 |
22K03583
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
向井 清史 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (90632266)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 画像計測 / 特徴抽出 / 主成分分析 / 非接触ダイバータ / 放射崩壊 |
研究開始時の研究の概要 |
磁場閉じ込め核融合プラズマでの輻射は、軸対称性が仮定できない最外殻磁気面の外側で主に生じるため、本質的に3次元構造を持つ。したがって、非接触ダイバータ等の輻射に関する物理機構の解明にはイメージング(多次元)計測が有効である。しかしながら、3次元CTの適用は計測ポート数の制約による悪条件から困難であることが多い。 本研究では、イメージング計測の2次元輻射画像から統計的手法で特徴的な輻射構造を抽出する。輻射は閉じ込め磁場の磁力線に沿った構造を持つため、磁力線構造を考慮して奥行き方向の情報を補完し、輻射の3次元構造を明らかにする。特に非接触ダイバータや放射崩壊について輻射の3次元構造を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、輻射画像の特徴抽出を用いる点を特色とし、核融合プラズマ輻射の3次元構造に関する物理機構、特に①非接触ダイバータにおける熱負荷軽減のトロイダル異方性に対する輻射構造の影響及び②放射崩壊における輻射構造の磁場配位依存性を明らかにすることである。令和4年度の研究実績の概要は以下の通りである。 ①について、大型ヘリカル装置(LHD)に非接触ダイバータ形成のため窒素を入射したプラズマにおいて、ダイバータ熱負荷の減少にトロイダル異方性がみられた場合に生じる、3次元的に局在化した輻射構造の抽出に成功した。輻射の2次元計測として、トロイダル方向26 ch、小半径方向20 ch、計520 chのイメージングボロメータ(IRVB)を用いた。窒素入射時の輻射画像に加え、熱負荷軽減のトロイダル異方性が弱いネオン入射時の輻射画像を入力データとし、主成分分析によって特徴を抽出することで、窒素入射時に特有の局在化した構造を抽出できた。ここで、2次元画像で不足する奥行き方向の情報は、磁力線構造との比較により補った。従来の研究では、トロイダル方向に離散的な計測から、熱負荷軽減のトロイダル異方性が生じた際の輻射構造の3次元局在化が推測されていたが、今回イメージング計測と主成分分析を用いることで、3次元構造を捉えることに成功した。 ②について、京都大学のヘリオトロンJ装置にIRVBの設置を進めた。IRVB用赤外線カメラとして、FLIR社製A655scを導入することで、従来の撮像速度の4倍の200 Hzでの計測が可能になった。また、赤外線カメラをコイル磁場から保護するとともに、ヘリオトロンJプラズマへの不整磁場の影響を抑えた磁気シールドの設計・製作を行った。さらに、薄膜検出器の大きさを従来の2.4倍の60 mm × 50 mmに大型化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LHDにおける非接触ダイバータ実験での輻射分布計測及び、ヘリオトロンJでのIRVB改良が概ね完了したため。 非接触ダイバータについて、電力価格高騰に伴うLHD実験時間の短縮により、当初予定していたアルゴン入射での実験を行うことができなかったものの、フィードバック制御を用いたネオンの複数回入射実験を行うことで、限られた時間の中で有効に輻射分布のデータを得ることができた。 放射崩壊について、同様にLHD実験時間が短縮されたものの、必要最低限の磁気軸3.9 mの磁場配位における放射崩壊時の輻射分布を取得することができた。さらに、輻射信号の増大をイベントトリガとして用いることで、高速トムソン散乱計測により、放射崩壊時の電子密度・温度分布の高時間分解能での計測にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、当初の計画通り、令和4年度までに得られたLHDでの輻射分布画像の解析を進めるとともに、ヘリオトロンJ放射崩壊実験時における輻射分布計測を行う。 非接触ダイバータについて、LHDでの窒素及びネオン入射時の輻射画像から、主成分分析で特徴的な構造を抽出し、得られた輻射構造と磁力線構造やトロイダル異方性との関係性を明らかにする。2次元画像では奥行き方向の情報が不足するが、プラズマの手前側と奥側とでは磁力線の傾きが異なる。輻射は磁力線に沿った構造を持つため、抽出された特徴的な輻射構造に磁力線構造を合わせて考慮することで、輻射の3次元構造の理解を進める。 放射崩壊について、非接触ダイバータと同様、LHD実験データの主成分分析を用いた特徴抽出により、輻射構造の変化とその磁場配位依存性を明らかにする。また、ヘリオトロンJ放射崩壊実験を行い、輻射分布の磁場配位依存性のデータを取得する。先行研究では、電子密度の増加割合や周辺電子温度の放射崩壊との関係が指摘されており、さらに本研究課題で輻射構造を加えた議論をすることで、放射崩壊の物理研究が進展すると期待できる。 研究発表に手法については、既に採択されているThe 7th Asia-Pacific Conference on Plasma Physics (AAPPS-DPP2023)における招待講演のほか、プラズマ・核融合学会年会での発表、Review of Scientific Instruments誌などへの投稿を中心に進める計画である。
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