研究課題/領域番号 |
22K03592
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14030:プラズマ応用科学関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設) |
研究代表者 |
定塚 勝樹 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), アストロバイオロジーセンター, 助教 (40291893)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ストレス応答 / 細胞周期 / 大気圧低温プラズマ / 酸化ストレス / 酵母 / 細胞分裂 / 分子生物学 / 遺伝学 / プラズマ / 細胞応答 / ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
大気圧でプラズマを発生させることが可能となり、その応用が農業、生命科学に拡がる一方で、生体や細胞に与える影響の基礎的理解が進んでいない。その一因はプラズマ発生に伴う70度C程にもなる発熱にある。これは多くの細胞にとって致死的な高温ストレスになる。細胞へのプラズマ直接暴露時に、厳密な温度制御可能な装置を開発した。本研究では、熱ショックを与えることなく酵母細胞にプラズマ直接暴露を行い、純粋にプラズマ刺激が誘導する細胞応答を遺伝子レベルで解明する。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、酵母をモデルに大気圧低温プラズマジェット照射装置を利用して、細胞に熱ショックを与えることなくプラズマ刺激を加えた時に生じる細胞応答の理解と、そこに働く遺伝子の探索を目的とした。 本年度の成果として、①昨年度までに同定したプラズマ照射に対して耐性能の原因となるprm1変異をコードする遺伝子と関連があると推測されるPRM2遺伝子の欠損が原因でプラズマ耐性になることを新しく見出した。興味深いことにprm1変異と同様に、prm2欠損株では、プラズマ耐性能だけではなく、細胞塊が形成される性質も共通して観られることがわかった。 ②プラズマ照射後に誘導される細胞応答をRNA-seq法による遺伝子発現変動解析によって調べた。その結果、細胞をプラズマ処理すると、先ず一過的にsnRNAの発現変動が生じ、続いて過酸化水素水で処理した場合と共通した酸化ストレスに対する応答に関係した遺伝子群の発現上昇が観られた。その後、酸化ストレス応答関連の遺伝子群の発現が低下すると同時に、プラズマ処理に特異的な遺伝子群の発現変動が観られることがわかった。また、③プラズマ処理に耐性能を示すprm2欠損株でもプラズマ照射前後での遺伝子発現変動解析を行った。その結果、プラズマ処理後の野生株で、酸化ストレス応答の後に観られた、プラズマ刺激特異的に発現が変動する遺伝子群の85%の遺伝子が、prm2欠損株ではプラズマ未処理の段階で既に野生型にプラズマ処理した場合と同様な発現様式の変化が生じていることが判明した。すなわちprm2欠損株では、野生型をプラズマ処理した後に類似した状態で生育している様子が見えてきた。 ④prm2欠損株では、窒素飢餓培地での生存率の低下が4週間後でも殆ど観られず、野生型と比較しても著しい耐性能を示す結果が観られた。プラズマ耐性能と飢餓耐性能の新しい関係性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
出芽酵母をモデルに、プラズマ刺激に対して強い耐性能を示す2つの遺伝子を特定することができ、細胞分裂の制御とプラズマ耐性能が密接に関係する可能性が見えてきた。さらにプラズマ処理前後での遺伝子発現変動解析から、プラズマ刺激を加えた後にリボソーム等を含むsnRNAの一過的発現上昇、酸化ストレス応答、そしてプラズマ特異的な応答が時間経過と共に観られることが新しくわかってきた。同時に進めていた分裂酵母をモデルにした解析結果を論文発表した。現在、出芽酵母でのこれまでの解析結果をまとめて論文作成している。当初の計画では、プラズマ耐性の原因遺伝子prm1を特定した後、新規変異株の大規模スクリーニングを開始する予定にしていたが、prm1と関係したprm2の発見とその解析に時間を要したため、大規模スクリーニングの開始に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析から、野生型で観られたプラズマ刺激に対する遺伝子発現変動様式が、プラズマ刺激に耐性能を示すprm2欠損株ではプラズマ未照射の段階から既に観られることがわかった。さらにprm2欠損株では飢餓状態でも生存率の低下が殆ど観られず、経時寿命が著しく長い可能性が見えてきた。このprm2の制御にも関与するprm1のプラズマ耐性能の原因となる点変異の解析から、多くの研究室で利用され、ゲノム解読にも利用されている標準株では、プラズマ耐性の原因となる機能が元々失われている可能性が示唆された。今後、野原から採取した複数の天然株を利用して、プラズマ耐性能の原因となる点変異の多型について調べる。さらに、多くの研究室で利用される標準株で喪失していると考えられるプラズマ耐性と飢餓耐性能の関係についても解析を進めることで、これまで見過ごされてきたストレス応答機能とその生物学的意義の理解を目指す。また当初の計画通り、プラズマ耐性変異株の大規模スクリーニングも進める。
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