研究課題/領域番号 |
22K03593
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金谷 和至 筑波大学, 数理物質系(特命教授), 特命教授 (80214443)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 素粒子論 / 量子色力学 / クォーク・グルオン・プラズマ / 格子場の理論 / 計算物理学 / グラジエントフロー |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では、クォーク質量を現実の値に調整した物理点2+1フレーバーQCDで、有限温度QCD相転移を研究する。 Wilson型格子クォークは、連続極限の正しさが保証されているが、カイラル対称性の破れにより計算コストが大きいという困難があった。グラジエントフローに基づいて開発されたSFtX法により、これまで格子正則化による対称性の破れのために複雑な処理が要求されていた物理量でも、そうした処理なしに直接評価することが可能になった。本研究では、SFtX法により、改良Wilsonクォークを採用した物理点2+1フレーバーQCDで、相転移温度やカイラル感受率などの熱力学量の温度依存性を計測する。
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研究実績の概要 |
QCD有限温度相転移を、連続極限が保証されているWilson型クォークで、格子シミュレーションにより研究した。グラジエントフローに基づくSFtX法を採用してWilson型クォークによるカイラル対称性の破れの困難を回避し、相転移温度や、カイラル感受率などの熱力学量を計算した。クォーク質量を現実の値に調整した物理点2+1フレーバーQCDの有限温度配位生成を、PACS-CS Collaborationが公開しているゼロ温度物理点配位(格子間隔0.09fm)に基づく固定格子間隔法で、122-544MeV の温度範囲で行い、有限温度配位についてはある程度統計が達成されたが、その解析の結果、熱力学量のくりこみで必要なゼロ温度配位の統計が不十分である可能性が示唆された。そこで、ゼロ温度配位生成を開始した。 物理点QCDの相転移はクロスオーバーで、近傍の臨界点のスケーリングの影響を受けている可能性がある。そこで、物理点の研究と並行して、クォークが重い領域のQCD臨界点を研究した。先行研究ではアスペクト比 LT=Ns/Nt(温度Tがほぼ一定のとき空間サイズLに比例)で4-7が研究されたが、空間サイズ依存性が大きいことがわかっている。そこで、大きな空間サイズでの研究を進めた。大格子で高統計を実現するために、重いクォークの効果をホッピングパラメータ展開(HPE)で取り入れる方法を採用し、まずNt=4格子でアスペクト比12までの臨界スケーリングを研究した。その結果、空間サイズ依存性を取り除くためにはアスペクト比9以上が要求されることがわかった。並行して、HPEの信頼性を研究し、Nt=4の臨界点近傍までなら上記研究で採用した低次のHPEで十分だが、連続極限に向けてNtが大きくなるとより高次まで取り入れる必要があることを示し、同時に、計算時間をほとんど増やすことなく高次効果を取り入れる手法も開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
物理点QCDの有限温度物理量の研究では、研究実績の概要で述べたように、熱力学量の高精度なくりこみのために、ゼロ温度配位生成を新たに開始する必要が発生した。現在そのシミュレーションを進めているが、ゼロ温度シミュレーションには大きな計算資源と計算時間が要求されるため、初年度に予定していた最終的解析に着手できなかった。 他方、クォークが重い領域におけるQCD相転移の研究は順調に進行しており、その成果を発表した論文も既に複数本出した。
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今後の研究の推進方策 |
物理点QCDのゼロ温度配位生成を継続しつつ、クォークが重い領域におけるQCD相転移の研究を推進する。前者については、大型計算資源の公募に応募して、不足している統計の確保を目指す。後者については、現在、我々で開発した手法を応用してNt=6とNt=8でのシミュレーションを実行しており、Nt=6についてはシミュレーションがこれまでにほぼ完成して、論文作成を目指した解析を進めている。また、我々の手法は容易に有限密度の場合に拡張できるので、その方向にも研究を展開する予定である。
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