研究実績の概要 |
本計画の目的は、未だ発見されていない素粒子であるアクシオンの研究を通して、宇宙の様々な現象や宇宙進化を統一的に理解する事である。そのためにはミクロのスケールを記述する素粒子物理学と、マクロのスケールにおける天文・宇宙物理学を組み合わせる多角的な手法を用いる事が重要である。本年度は、具体的には以下のような研究を行い、結果を論文として発表した。 (1)アクシオンを位相方向として持つ複素スカラー場である Peccei-Quinn 場によって、宇宙のインフレーションの起源・暗黒物質の正体・Strong CP 問題をまとめて解決する可能性の調査("Ultraviolet sensitivity of Peccei-Quinn inflation," Davide Dal Cin and Takeshi Kobayashi, Physical Review D 108, 063530)。 (2)アクシオン場の量子揺らぎの、インフレーション中に位相空間の特定方向において抑圧される(いわゆるスクイーズド状態になる)現象の解析("Anharmonic Effects on the Squeezing of Axion Perturbations," Valentina Danieli, Takeshi Kobayashi, Nicola Bartolo, Sabino Matarrese, and Matteo Viel, Journal of Cosmology and Astroparticle Physics に受理済み)。
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