研究課題/領域番号 |
22K03596
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
横山 修一 立命館大学, 理工学部, 助教 (50773389)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 一般相対性理論 / 天体物理学 / 場の理論 / ゲージ重力双対性 / AdS/CFT対応 / 場の量子論 / ゲージ重力対応 / 量子重力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ゲージ理論をフロー方程式によって粗視化することでゲージ・重力双対性を実現するフレームワークを構築し量子重力理論の解明につなげ、重力、特にブラックホールにまつわる未解決問題を解く足がかりを作る。 これまでの研究により、静力学と真空状態が期待される重力理論を再現できることを明らかにした。本研究課題では、フロー方程式によるフレームワークを発展させ、重力理論の動力学、すなわち重力理論における励起状態やブラックホール時空が場の量子論によってどのように実現されるのかを明らかにする。 また、近年提唱した一般の曲がった時空における物理量の正確な定義に関して、その妥当性や応用に関する研究を行う。
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研究実績の概要 |
当該年度は、近年新しく発見した保存量とその物理的解釈が系のエントロピーになるという提唱について、想定以上に研究を大きく発展させることに成功した。まず年度初月に前年度までに蓄積した研究成果を論文にまとめpreprintとして発表した。本論文において、天体の模型として古くから研究が行われている球対称な静水圧平衡系に対して提唱した新しい保存量の計算を行い、その保存量をエントロピー密度と解釈することで局所オイラー関係式と熱力学第一法則が同時に満たされることを初めて示した。特に、これらの局所熱力学関係式において一意的に決定された局所温度が1930年の論文でTolmanによって導出された固有温度に完全に一致した。この局所温度自体は一般相対性理論の標準的教科書でもいくつか異なる方法で導出されているが、本論文で発表された局所熱力学関係式の記述は見つからず、また既存のエントロピーの定義は本論文における新しい保存量とは異なるため、本論文で初めて発見されたものである。さらに、本結果を簡単な縮退星の模型に対して適用し、そのエントロピー密度や内部の温度の解析的な表示を与えることに成功した。以上の成果を得るために、新しい保存量を構成するための具体的手続きとして、保存量を構成するベクトル場の方向として系を構成する流体の速度ベクトルに方向に取るという処方箋を与えた。
上記の結果を受け、より一般の球対称な天体の物理量を決定するための基礎方程式系としての相対論的静水圧構造方程式を提唱した。この静水圧構造方程式のは良く知られた星の構造方程式を目新しい形で再現することを示し、またコロナのような高温の場所では相対論的効果が無視できないことを指摘した。そして多層構造をもつ恒星の模型を構築し、その内部の物理量がべき乗則で変化することを予言した。特に太陽内部の温度や密度がべき乗則に従うことを予言した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の当初の計画では、放射があるような場合の重力崩壊を起こす重力解を構成し放射される重力エネルギーを調べる予定であったが、以前に発表した放射のない場合の重力解の論文を学術雑誌に投稿し査読者とやり取りしている中で、上記した研究業績の中の論文の方法を改善し新しい保存量を構成する具体的手続きを閃いた。これが突破口となって、天体の重要な模型である球対称な静水圧平衡系における新しい保存量の計算が可能になり、それが局所オイラー関係式と熱力学第一法則という基本的な局所熱力学関係式を満たすことが判明し、新しい保存量がエントロピー密度であるという極めて強い証拠が得られた。この結果は一世紀近く研究の歴史がある天体の研究分野において知られていなかったエントロピー密度や局所熱力学関係式といった基本的物理量や関係式を明らかにしたという歴史的快挙である。
そしてこの球対称な静水圧平衡系の一般論における進展から一歩進んで、主系列星などの天体を調べる際に昔から用いられてきた構造方程式に対して相対論的な拡張に成功したことは、実際に現実に観測されるデータと比較する際に影響を与えるという点において、当初の計画以上の進展であった。特に、高密度天体以外の星はニュートン力学による近似でその性質が従来調べられてきたが、ニュートン力学とその摂動計算をやっているだけでは到達することができないような物理的性質を明らかにすることができたことは私自身も全く予想していなかった発展である。現存する天体の内部の温度や質量の変化を精密に観測する手法が確立すれば、本論文で得られた結果と従来の結果のどちらが正しいか判定することが可能となる。私は、相対論的効果を全て含んだ結果の方が正しいはずで、本論文で得た結果が実際に観測されると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の計画であった重力崩壊の研究から重力エネルギーを調べる方向性ではなく、新たに発展させることができた星の局所熱力学や相対論的静水圧構造方程式を新しい天体に応用していく。
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