研究課題/領域番号 |
22K03600
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
東山 幸司 千葉工業大学, 創造工学部, 教授 (60433679)
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研究分担者 |
吉永 尚孝 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (00192427)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 原子核構造 / 二重ベータ崩壊 / 殼模型 / 生成座標法 / シッフモーメント / 電気双極子モーメント / 八重極振動模型 / 理論核物理 / 原子核殻模型 |
研究開始時の研究の概要 |
素粒子物理学で数多くの実験データを説明してきた標準模型において、ニュートリノは質量が0の粒子として扱われるが、ニュートリノ振動の観測により小さいながら有限の質量を有することが明らかになっている。しかしながら、ニュートリノは観測にかかりにくいことから、質量を測定するには至っていない。これを知る方法として期待されているのが、ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の半減期の測定である。この半減期からニュートリノの質量を求めるには、原子核の核行列要素を計算する必要がある。本研究では、二重ベータ崩壊の半減期を与える核行列要素の精密計算を行い、どの原子核で半減期が大きくなるか推測する。
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研究実績の概要 |
ニュートリノを放出しない原子核の二重ベータ崩壊は,崩壊が起こり半減期を得られると,ニュートリノの基本的性質が明らかになると同時に,素粒子の標準模型を超えた新しい物理への道を開くものとして期待されている。近年,二重ベータ崩壊の半減期の探索実験が盛んに行われているが,幾つかの核種に対して上限値が得られているに過ぎない。また理論においては,原子核殻模型,乱雑位相近似,相互作用するボソン模型等により核行列要素の計算が行われてきたが,模型の違いにより互いの結果が一致していない。このため,平均場を超えた理論により原子核構造の精密計算を行い,得られた波動関数を用いて核行列要素を計算することが必要不可欠である。 本研究の成果は,質量数140領域のキセノン,セシウム,バリウム原子核に対して殻模型計算を行い,原子核の励起メカニズムを明らかにしたことにある。この領域の核子間に働く相互作用の研究は現在まで行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用いて数値解析を実行し,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。 さらに本研究では,原子核の八重極振動の効果を取り入れた八重極振動模型により数値解析を行い,コア励起に起因する八重極励起の影響が低エネルギー状態に現れることを明らかにした。 その他の成果として,質量数130領域,および質量数200領域の原子核について,核子固有の電気双極子モーメントにより生じるシッフモーメントを計算し,中性原子の電気双極子モーメントの評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では令和5年度において,質量数150領域の原子核構造の数値解析,およびニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊の核行列要素の計算を行う計画であった。現段階では,これまで計算してなかったキセノン,セシウム,バリウム原子核に対して,殻模型計算の数値解析を実行し,原子核の励起メカニズムを明らかにした。更に,八重極振動の効果を取り入れた八重極振動模型による数値解析も行っている。ただ,二重ベータ崩壊の計算は行っておらず,予定よりも遅れている。一方で,生成座標法による原子核構造の数値解析は進んでおり,研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では令和6年度において,質量数100領域および質量数150領域の二重ベータ崩壊の数値解析を目指す。質量数100領域のジルコニウム,ルテニウム原子核に対しては既に殻模型計算を行い,原子核の励起メカニズムを明らかにしている。この計算で得られた精密な波動関数を用いて,モリブデン100原子核の二重ベータ崩壊の核行列要素を評価する。さらに本研究では,生成座標法による質量数100領域の原子核構造の数値解析を計画している。この領域の原子核を計算するための計算環境は整っているため,殻模型計算で用いた有効相互作用を用いて数値解析を実行し,エネルギー準位・電磁遷移の実験値が再現できるかを確認する。実験値を再現していない場合には相互作用に修正を加えるが,この修正はそれほど時間がかからないと予想される。生成座標法の波動関数を詳細に解析することで原子核構造を明らかにすると共に,時間があれば生成座標法による二重ベータ崩壊の枠組みを完成させ,数値解析を実行する。
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