研究課題/領域番号 |
22K03602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
清 裕一郎 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (60571338)
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研究分担者 |
上坂 優一 九州産業大学, 理工学部, 特任講師 (60826618)
山中 真人 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 非常勤教員 (70585992)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | Lepton Flavor Violation / レプトン・フレーバーの破れ / CLFV DIS / レプトン・核子散乱実験 / ヘビー・クォーク |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの低エネルギー実験は、荷電レプトンのCLFV 稀崩壊に対して厳しい制限を得ることに成功してきた。一方、このような稀崩壊の探索では、親粒子よりも大きな質量の粒子への遷移は、エネルギー的に禁止されているので、 重いクォークと結合する CLFV 媒介粒子に対しては感度が悪い。そこで、本研究課題では、低エネルギーのファクトリー型実験と相補的な加速器実 験について研究することとし、終状態に重いクォークを含むレプトン・核子散乱における CLFV 探索・検証の理論的 手法の確立と、CLFV 相互作用の詳細を解き明かすためのオブザーバブルの構築とその 高精度計算を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目標は、荷電レプトンのフレーバーを破る相互作用(Charged Lepton Flavor Violation)の入った素粒子模型における電子・核子散乱実験における微分断面積を計算することであった。また得られた結果についてシミレーション・スターディーを実施し、CLFV相互作用の検証に有益なオブザーバブルを構築すること、その結果が将来のコライダー実験に与えるインパクトを評価することであった。
目標達成のために(A)CLFVの起源としてスカラー粒子やその他の相互作用を持つ粒子が入った模型でも断面積を計算し、模型のパラメーターに高い観測量を見出す;(B)CLFVのある電子・核子散乱の終状態に現れるτ粒子の運動量分布を精密に計算する;(C)得られた断面積の理論計算をより実験のセットアップに近い形でシミュレーション・スタディーを実施する、という三つのサブプロジェクトとして研究を推進する予定であった。これらのサブプロジェクトの進行は略当初の予定通りに進んでおり、現時点で目標の5割程度の計算を終えている。現在はここまでに得られた知見を論文としてまとめているところである。具体的な成果としては、(1) CLFVなスカラー粒子が存在する素粒子模型で生じる相互作用オペレーターをクラスごとに整理し、それぞれのオペレーターに対するレプトン・核子散乱の微分断面積を計算した; (2) 終状態τレプトンの運動量分布をCLFVオペレーター毎に解析して、CLFVオペレーターのタイプに応じてτレプトンの運動量分布に関する特徴量が構築できることを示した。予定されていた研究計画のうち、スカラー粒子以外の相互作用についての計算とQCD補正や実験的なバックグラウンドを入れたより現実的なシミュレーションスタディーは次年度以降の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レプトン・フレーバーを破るスカラー粒子が入った素粒子模型で生じる有効相互作用については、レプトン・核子散乱に寄与するオペレーターを同定し、具体的なオペレーター基底やウィルソン係数の計算を完了した。また、得れた有効オペレーターを用いたレプトン・核子散乱の微分断面積の理論計算を終えており、コンピューターを用いた微分断面積の数値計算とシミュレーション・スタディーも完了した。本研究で基本となるスカラー粒子が入ったCLFV模型を用いた計算は完了しているため、今後はその他相互作用が入った模型での断面積の計算や、QCD補正やバックグラウンドを入れた、より実験に近いシミュレーションスタディーを実施する予定である。3年間の研究課題であるが、本研究の申請書を作成する段階で行なっていた準備的な研究が役に立っており、研究目標の5割程度は1年目に達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた理論計算の結果を元に、より実験的な状況に即したシミュレーション・スタディーを行う: a) 終状態τレプトンの運動量分布に関しては、大きなQCD補正が生じるようなフェイズ・スペースに対してはカット入れた解析を実施; b) μ粒子やτ粒子の稀崩壊実験から知られている制限やLHC実験のデーターからの制限を考慮して有効オペレーターのウィルソン係数の大きさついての知見を整理する; c)グルオン・グルオン・スカラーの3点有効相互作用はレプトン・核子散乱の断面積が大きいので、この演算子に対してはQCD補正がどの程度寄与するのか理論計算を実施する。
以上の結果を総合して、レプトン・核子散乱でレプトン・フレーバーを破る相互作用模型に対してどの程度まで制限がつけられるのか考察し論文としてまとめる。
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