研究課題/領域番号 |
22K03608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 群馬工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 徹 群馬工業高等専門学校, 一般教科(自然), 教授 (70467405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ハドロン構造 / 格子QCD / 内部カラー構造 / エンタングルメントエントロピー / カラー相関 / カラー構造 |
研究開始時の研究の概要 |
複雑なクォーク・グルーオン多体系である原子核・ハドロンの系は、クォーク・グルーオンのダイナミクスを記述する理論、量子色力学(QCD)によって支配される。本研究では、第一原理計算である格子QCD計算を用いて、クォーク多体系の内部構造をエンタングルメントエントロピー(EE)に基づいて明らかにする。特に、ハドロン内部におけるクォークのカラー構造、及びそれらカラー構造のクォーク配位依存性に着目し、エンタングルメントエントロピーに基づく内部構造の同定法を発展させ、ハドロン内部構造を第一原理より決定する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、さまざまなクォーク多体系における内部カラー構造を決定して、その知見を実際のハドロンの解析に応用することである。このようにハドロン内部構造をカラー構造の観点から同定するための基礎研究として、令和5年度には、∑g, ∑g’, Πu, Πu’, Δg, Δg’ の計6状態について、クォーク・反クォーク(QQbar)系におけるポテンシャルとそのカラー構造について研究した。その結果、∑g状態以外の(グルーオン的励起状態と考えられる)5状態においては、QQbar間の距離Rが小さい場合はカラー8重項を形成し、Rが大きくなるにつれランダムなカラー配位が混合するという描像でカラー内部構造を説明できることを突き止めた。これは、グルーオン的励起状態をクォーク・反クォーク系に構成子的グルーオンが結合した状態とみなす描像をサポートする結果である。また、ランダムなカラー配位が混合(QQbar間のカラー相関の遮蔽に対応)する度合いは、量子数(状態)ごとに異なり、その遮蔽度合いを遮蔽質量として定量化した。さらに、∑g’状態においては、Rが大きな領域でもわずかにカラー1重項成分が残り続けることも突き止めた。∑g状態と∑g’状態は同じ量子数を持つ基底状態と励起状態に対応するため、カラー1重項が主要な成分となる∑g状態と直交する波動関数を持つ∑g’状態では、カラー1重項成分が残り続けると考えられる。また、虚時間方向のメッシュ間隔が小さい非等方格子でも計算を行い、結果の格子間隔依存性が小さいことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、さまざまなクォーク多体系における内部カラー構造を決定することであり、より具体的には、クォーク・反クォーク系、グルーオン的励起状態を伴う系、クォーク3体系の内部カラー構造を同定し、それらの結果と照合することにより実際のハドロンの内部構造決定を行うことである。現在の所、クォーク・反クォーク(QQbar)系の内部カラー構造の同定はほぼ完了したと考えられる。当初の研究予定であれば、令和5年度中にはクォーク3体系についても解析が終わっている予定であったが、やや遅れが生じている。この遅れの理由としては、QQbar系において解析する状態を増やす必要に迫られたことが挙げられる。本来は、∑g, ∑g’, Πu, Δgの計4状態の解析で終了する予定であったが、Πu’, Δg’ 状態の解析を追加で行ったことが原因である。研究実績概要で述べたとおり、∑g’状態においては、Rが大きな領域でもわずかにカラー1重項成分が残り続けた。これは予想外の挙動であり新たに得られた知見であるが、計算における有限体積効果や格子間隔依存性による計算アーティファクトである可能性が排除できず、研究結果に計算アーティファクトが含まれていないことを確認するために、Πu’, Δg’ 状態の解析を追加した。これらの状態はエネルギーの高い高励起状態であり、計算コストが大きいため、研究の遅れにつながった。しかしながら、予想外の新たな知見が得られた事実や、解析する状態が増えたことにより、より精密な内部構造の研究が進んだことは、ポジティブな結果と捉えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究結果を論文としてまとめ、当初の予定通り、クォーク3体(QQQ)系の内部カラー構造の研究を開始する。QQQ系の計算に必要な定式化は終了しており、実際の数値計算を開始する。計算するクォークの配位数に依存するが、着目するのは基底状態のみに限定することもあり、今後数ヶ月で一通りの計算が終了する見込みである。その時点で、クォーク・反クォーク系の基底状態・グルーオン的励起状態、並びに、クォーク3体系の内部カラー構造に関する基本的知見が揃う。その後、それらの結果を元にした実際のハドロンの内部構造解析を試みる。
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