研究課題/領域番号 |
22K03612
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 勝一 東北大学, 理学研究科, 准教授 (60332590)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ハドロン / 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / 核子構造 |
研究開始時の研究の概要 |
ハドロンの内部構造の解明に向けた取り組みとして、クォークとグルーオンの力学である量子色力学(QCD)に基づく第一原理計算である、格子QCD計算によりハドロンの形状因子の精密計算を行う。ハドロンの形状因子とは、ハドロン内のクォークやグルーオンの空間的な分布の情報を有するものであり、その精密な理論評価は、ハドロンの内部構造の総合理解の入り口である。最終目標としてはQCDに基づく理論計算という、実験とは異なる手法によって、「グルーオンの核子スピンへの寄与」のように、未だ理解されていないハドロン内でのグルーオンの役割についての全容解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、核子の構造を特徴づける物理量に対する理論計算を、縮退した軽いアップ・ダウンクォークと、それらよりも重いストレンジクォークの真空偏極を取り入れた、2+1フレーバー格子QCD計算により行なっている。その研究遂行のために格子QCDグループPACSにより生成された「PACS10」と呼ばれるQCDゲージ配位を用いる。PACS10配位は、π中間子が実験値135MeVに相当するクォーク質量(物理点での評価)で 1辺が10 fmを超える物理体積(有限体積の除去)で生成され たQCDゲージ配位で、核子構造の理解のための精密第一原理計算に適している。PACS10配位は、格子間隔が3種類あり、核子構造に対しては、そのうち2つの粗い格子間隔(0.08 fm、0.06 fm)での格子QCD計算については、核子構造に関係する基本的な 5 つの物理量(電荷半径、磁気モーメント、磁気半径、軸性電荷、軸性半径) に対して評価が完了している。当該年度より、スパコン富岳を用いて、3つ目の格子間隔(0.04 fm)での格子QCD計算を開始した。核子行列要素の情報を得るには、ソースとシンクに核子演算子を置き、ソース・シンク間に、クォーク双線形なカレント演算子を挟むことで計算される核子三点関数の計算が必要となる。ただし、ソース・シンク間距離が短い場合、核子三点関数から核子行列要素の情報を引き出す際に、核子の基底状態による行列要素の寄与だけでなく、核子の励起状態や、核子-π中間子の二粒子連続状態などの寄与が無視できなくなるため、ソース・シンク間距離の依存性を調べる必要がある。当該年度は、5つの物理量の中で、ソース・シンク間距離の依存性が最も小さい物理量である核子軸性電荷に対して予備的な計算を行い、3つ目の格子間隔(0.04 fm)においても実験値を統計誤差1-2%の範囲で再現できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、格子QCDグループPACSにより生成された「PACS10」と呼ばれるQCDゲージ配位を用いることで、π中間子が実験値135MeVに相当するクォーク質量(物理点での評価)で 1辺が10fmを超える物理体積(有限体積の除去)により、核子構造を特徴づける物理量に対して格子QCD計算を行なっている。当該年度はHPCIの富岳利用研究課題のA期が採択され、スパコン富岳の利用による格子QCD計算が実施可能となり、格子間隔(0.04 fm)の計算に着手できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度もすでに通年でスパコン富岳利用申請が採択されている。そのため、R06年度も3つ目の格子間隔(0.04 fm)上で核子構造に関する格子QCD計算が実施可能な状況となっている。すでに核子軸性電荷に対して予備的な計算を行い、有限格子間隔に伴う系統誤差が無視できるほど小さいことが確定した。次年度は、3つ目の格子間隔(0.04 fm)においても、ソース・シンク間距離の依存性の系統誤差を評価して、最終的に有限格子間隔に伴う格子離散化誤差を除去(連続極限)の完遂を目指す。
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