研究課題/領域番号 |
22K03613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
百武 慶文 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (70432466)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 双対性 / 超弦理論 / 超重力理論 / 量子重力理論 / M理論 / 量子重力 / ブラックホール |
研究開始時の研究の概要 |
ブラックホールの量子論的性質の解明は、21世紀に残された理論物理学の大きな課題の一つである。本研究では、ブラックホールの量子状態を解析するために、超弦理論の量子効果を取り入れた有効作用を構築する。超弦理論の強結合領域はM理論と呼ばれる11次元の理論で記述されるが、本研究ではM理論に現れる量子補正項を、代数プログラムを用いて分類し、超対称性を課すことで一意的に決定する。この有効作用を用いることで、質量と電荷が等しくない一般のブラックホールの熱力学的性質を、重力の量子補正を取り入れて考察することが可能となる。
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研究実績の概要 |
超弦理論の双対性に関する研究を行い、論文発表や学会発表を行った。超弦理論は重力の量子論として研究されており、10次元時空において5つの摂動的に異なる真空が存在する。これらの真空は一件全く異なる性質の物質(素粒子)で記述されているように見えるが、実は質量状態には1対1の関係が成り立つ場合がある。それらの関係は総称して双対性と呼ばれるが、なかでもIIA型超弦理論とIIB型超弦理論を関連付けるT双対性は1980年代後半から超弦理論の中心的研究対象であった。 T双対性は弦が伝搬する内部空間をトーラスでコンパクト化した際に現れる。弦はトーラスでコンパクト化された空間に巻き付いたり運動量をもって伝搬したりすることができ、それらは量子化された巻き付き数や量子化された運動量を内部自由度としてもつ。T双対性は巻き付いた弦と運動量をもつ弦を入れ替える操作であり、この操作によってIIA型超弦理論とIIB型超弦理論の真空は入れ替わる。近年ではT双対性を明白に実現するために、コンパクト化した空間と運動量の空間を対等に扱い理論を定式化するdouble field theoryが積極的に研究されている。しかしながら、double field theoryを超弦理論に落とし込む際には自由度を半分にするプロジェクションが必要であり、超弦理論よりも広い理論空間を扱っていることになる。 今回の研究はコンパクト化された空間のみを扱う従来の超重力理論の有効理論を、T双対性を明白にした形で再定式化した研究内容である。T双対性は一般的にはコンパクト化された内部空間の対称性を尊重する形で定式化されているが、それを10次元時空の対称性と整合性のある場を定義することで再構築することに成功した。この定式化はHassanによる超対称変換を考慮したものになっており、時空の超対称性を含む定式化になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主目的は超弦理論の量子効果による高次微分補正項の導出であるが、この項のうちtree levelの項は超弦理論の双対性からも制限される。このような項を制限するにあたっては10次元時空の対称性や超対称性が明白な形で行われる必要があるが、今回の研究では超弦理論の低エネルギー有効理論である超重力理論において、そのような形式が実際に実行できることを示した。今後はそれを高次微分項へ応用できるかが課題となる。また、一方で超対称性に基づく高次微分項の制限を行う研究も完成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は超対称性による高階微分項の制限を実施する。これを実行するには複雑なコードを組む必要があるが、メインとなる部分はほぼ完成している。比較対象となる研究はほとんどないのでプログラムのバグをとりつつ、手計算との比較を愚直に実行する必要があるが、独力で計算を実施する予定である。なお、研究の一部成果については国際研究会で報告を行った。
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