研究課題/領域番号 |
22K03615
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊部 昌宏 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (50599008)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
|
キーワード | 位相欠陥 / 重力波 / 宇宙ひも / 素粒子標準模型を超える物理 / 初期宇宙論 / 暗黒物質 / ソリトン / 素粒子論 / 宇宙論 |
研究開始時の研究の概要 |
様々な新物理模型模型の多くには新たな対称性とその対称性の自発的破れが期待伴うことが期待されている。そのような対称性の自発的破れが初期宇宙に生じた場合様々な位相欠陥(対称性の破れた相と破れていない相が共存した状態)が形成されることが期待される。本研究ではそのような位相欠陥を新物理模型のより有効なプローブにしていくことを目的としている。特にこれまで見落とされてきた位相欠陥の有限サイズ効果や形状の変形効果が与える生成などを精査し、位相欠陥の現象論的特性を明らかにし、新物理探索に繋げていく。
|
研究実績の概要 |
本研究は「ソリトン配位をプローブとした初期宇宙論および素粒子物理の新展開」に焦点を当てている。その一つに初期宇宙におけるU(1)対称性の自発的破れに伴う位相欠陥である宇宙ひもが挙げられる。宇宙ひもは、真空とは異なる位相(トポロジー)を持つため、無限に長いものは安定となる。一方で宇宙ひものループや、宇宙ひもの小さな揺らぎは重力波として放出される。そのため統計的な重力波の観測は宇宙ひもの存在を検証する重要なチャンネルとなると期待されてきた。最近複数のパルサー・タイミング・アレイ(PTA)により、nHz周波数の統計的重力波の検出の可能性が報告されている。この検出された信号は、ヘリングス・ダウンズ角度相関を示しており、統計的重力波の検出を強く示唆するものである。興味深いことに観測されたスペクトルは、完全に安定な宇宙ひもからなるループ状のものではなく、準安定な宇宙ひもを示唆している。 準安定な宇宙ひもは、U(1)対称性がより大きな非可換対称性に埋め込まれている模型の位相欠陥として実現される。そのため PTA による統計的重力波の検出は初期宇宙の新たな非可換対称性の存在を示している可能性があり注目されている。 一方でこれまでの理論研究では、準安定な宇宙ひもの崩壊率の計算は宇宙ひもの太さや、宇宙ひもの断裂に伴う磁気モノポール、反磁気モノポールのサイズを無視した非常に大まかな見積もりであった。本研究では、宇宙ひもの崩壊率を精密化するために、宇宙ひもの太さや磁気モノポール、反磁気モノポールの有限の大きさを考慮した解析を行った。その結果、PTA実験の結果とこれまでの崩壊率計算に基づくモデルのパラメータ領域との間に乖離が見られることが明らかになった。本研究の結果は統計的重力波のスペクトルとその背後の理論模型をつなぐ上で重要なインプットを与えるものとなる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
最近の複数のパルサー・タイミング・アレイ(PTA)により、nHz周波数の統計的重力波の検出の報告は本研究計画である「ソリトン配位をプローブとした初期宇宙論および素粒子物理の新展開」に非常に大きなインパクトを持っている。この発見は新たな非可換対称性の破れを伴う相転移の発見につながる非常にエキサイティングなものである。 今年度の研究ではその信号を説明しうる非可換対称性の破れに伴う準安定な宇宙ひもの崩壊率の計算の精密化を行った。先行研究で得られていたPTA実験の結果とモデルのパラメータ領域との対応関係に乖離があることを指摘できたことは PTA シグナルの背後の物理模型の探究に対して重要なインプットとなると期待している。
|
今後の研究の推進方策 |
上述のようにパルサー・タイミング・アレイ(PTA)実験による統計的重力波信号検出の報告は本研究課題である「ソリトン配位をプローブとした初期宇宙論および素粒子物理の新展開」の研究に大きなインパクトを与えている。特に準安定な宇宙ひもの崩壊率の研究には未整備な課題が多く残されている。そこで準安定宇宙ひもの崩壊率の研究に重点を置きつつ「ソリトン配位をプローブとした初期宇宙論および素粒子物理の新展開」の研究を推進していく計画である。
|