研究課題/領域番号 |
22K03626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 第一工科大学 |
研究代表者 |
木村 匡志 第一工科大学, 工学部, 講師 (00844763)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ブラックホール / 準固有振動 / Love数 / 昇降演算子 / 重力波 / 一般相対性理論を超える重力理論 / 修正重力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究において明らかにしたい内容は次の3点である. ・理論的に可能な重力理論を構成 ・ブラックホール時空の構成 ・ブラックホール時空周りの物理現象を予言および検証 特に本研究では,有効場理論的アプローチを用いて議論を行うことで,従来型の議論よりも質的に広い範囲の重力理論を調べることが可能となる.そのような重力理論におけるブラックホールを議論することで,一般相対性理論では起こり得ない現象を見出し,何を観測すれば一般相対性理論が破れていたと言えるのか,の予言と検証を目指す.
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研究実績の概要 |
2022年度の研究成果は次の通りである。・ブラックホールの準固有振動は、重力波を通じての重力理論の検証に重要であるが、その数理的な理解を深めるためにBanados-Teitelboim-Zanelli(BTZ)ブラックホールの準固有振動について昇降演算子を用いた解析を行った。BTZブラックホールは時空の対称性が高く、波動方程式の解に昇降演算子を作用させることで、波動方程式のパラメータが異なる解を生成することができる。本研究では、ディリクレ境界条件、ノイマン境界条件の両方において準固有振動のすべての倍音モードが昇降演算子で生成可能であることを示した。量子力学では調和振動子のすべての励起状態を昇降演算子を作用し生成できることが知られているが、本研究の結果はこれに良く似ており、準固有振動の解析と量子力学の問題に新たなアナロジーがあるを示唆している。[Phys.Rev.D.106.044052,2022] ・星やブラックホールに対して外部重力が作用したときにその応答を特徴づける量としてLove数が知られている。一般相対性理論ではブラックホールのLove数はゼロであるが一般相対性理論以外の理論では必ずしもゼロとは限らない。Love数は連星ブラックホールの合体前の重力波波形に影響を与えるため、重力波を用いた重力理論の検証で重要となる。本研究ではそもそも一般相対性理論ではなぜLove数がゼロなのか、について理解を深めるために時空の対称性の観点から解析を行った。ブラックホール地平面の近くでは時間依存性が小さい場合に波動方程式はほぼ2次元反de Sitter時空(AdS2時空)と同様の対称性を持つ。本研究ではこれに着目しAdS2時空由来の昇降演算子を用いることで、一般相対性理論においてはブラックホールのLove数がゼロであることを導出できることを示した。[arXiv:2209.10469]
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子力学では調和振動子のすべての励起状態を昇降演算子を基底状態に作用し生成できることが知られているが、研究[Phys.Rev.D.106.044052,2022]では準固有振動においても昇降演算子を作用することですべての倍音モードを生成しており、量子力学の場合と良く似た状況となっている。ブラックホールの準固有振動の解析においては量子力学における束縛状態と対応しているという関係が既に知られていたが、この結果は準固有振動の解析と量子力学の問題に新たなアナロジーがあることを示唆しており重要である。研究[arXiv:2209.10469]においては、一般相対性理論の場合に、時空の対称性に着目することでブラックホールのLove数がゼロであることの理解を深めている。今後、この解析を拡張することで、一般相対性理論を超える理論を考える際に、一般相対性理論以外でもLove数がゼロになることはあるのか、ゼロにならないときはどういうケースなのか、を解明することに繋がるため、そこへ向けての第一歩としての重要な結果である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に明らかにしたいことは次の点である。 ・スカラー場を含むケースにおける有効場理論に基づく重力理論の構成 ・ブラックホール時空の構成、およびその周りにおける物理現象の予言 ・一般相対性理論を超える理論におけるブラックホールの準固有振動の解析 1点目に関しては、本研究の特徴である低エネルギー有効場理論の方法を用いて、従来型よりも広い範囲の理論を調べられると期待される。2点目に関しては、一般相対性理論からのズレの効果と観測量の関係を明らかにし、理論の検証へと繋げたい。3点目については、やや技術的ではあるが、一般相対性理論からのズレがブラックホールの準固有振動に与える影響を、効率的に、より精度良く、求める方法について調べたい。
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