研究課題/領域番号 |
22K03628
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
菅原 祐二 立命館大学, 理工学部, 教授 (70291333)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 超弦理論 / 共形場理論 / 宇宙定数問題 / 素粒子論 / 宇宙論 |
研究開始時の研究の概要 |
共形場理論の手法を駆使し、「非幾何学的時空」を記述する新しいタイプのモジュラー不変性の系統的な研究を通して、超弦理論や関連する理論において「宇宙定数問題」に対する新しいアプローチの手法を確立する。すなわち、宇宙定数問題を解決する基本的なメカニズムを明らかにするため、各質量レベルではボソンとフェルミオンの自由度がバランスしていないにも関わらず、摂動的には宇宙定数がゼロとなっている真空の構成を目指す。更に、構成した具体的な模型の物理的性質を明らかにし、素粒子物理や宇宙論への応用を模索する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、宇宙定数問題に関して佐藤勇二氏(福井大学)と共同で進めている1-loopの宇宙定数が消えている模型の研究について、査読誌(Progress of Theoretical and Experimental Physics)にて論文発表を行った。この模型は、ストリング理論に基づいて系統的に構成することができるが、厳密に言えば標準的なストリング理論そのものではなく、無限個の質量スペクトルを含む点粒子の理論として定義されている。少なくとも相互作用を考慮していないレベルでは無矛盾な理論となっており、各質量レベルにおいて、ボソンとフェルミオンの自由度はバランスしていない。それゆえ超対称性が破れていない理論に典型的に見られる「ボース・フェルミ相殺」の機構が働かない。それにも関わらず、それぞれの自由度の零点エネルギーの総和として1-loopの宇宙定数を評価すると厳密にゼロになっているという、非常に興味深い物理的性質を示す。 また、こうした模型の系統的な構成として、リー代数格子に基づく高次元トーラスの、一般に非幾何学的なオービフォルド化に基づく方法を考案した。さらに、素朴なレベルながら、higher loopの摂動的な宇宙定数への寄与が消えているという考察も行ったが、この点は更なる詳細な解析が必要となるであろう。この方向性の研究は、当該研究課題におけるメイン・プロジェクトとして今後も引き続き推し進める予定である。 関連する研究として、佐藤氏とともにリー代数格子にassociateしたT-fold上の超弦理論において、twisted sectorの頂点演算子を含む散乱振幅の詳細な解析を行い、やはり査読誌(Journal of High Energy Physics)への論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、当該研究計画の遂行において大きな進展はなかったものの、今後成果を上げていくための準備段階にあり、おおむね研究計画は予定通り遂行できていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き宇宙定数問題への新しいアプローチとして、非幾何学的背景上の超弦理論や関連するモデルを中心的なテーマとして研究を行う。特に、ボース・フェルミ相殺の機構が働かないにも関わらす宇宙定数がゼロとなっている模型の普遍的な性質を明らかにすることを目指し、2022年度までの研究を発展させたい。具体的な課題は以下の通りである: (1) 構成した模型において、宇宙定数へのhigher loopの補正項を精密に調べる。 (2)宇宙定数のみならず、複数の頂点作用素が挿入された散乱振幅の詳細な解析等も通じて、標準的なストリング理論で期待されている紫外有限性がこれらの模型でも実現しているかどうかについて調べる。 (3)現状では、共形場理論の立場から系統的に模型が構成できるが、現象論的な見地からより現実的な模型の構築を目指す。 また、これまではコロナ禍にあったため、共同研究者との研究打ち合わせや情報収集、成果発表のための学会参加などは、もっぱらZoom等のオンラインによって行い、当課題研究を進めて来た。今後は、新型コロナの「第5類」移行を受け、研究費を有効に活用し、出張等も積極的に行いながら研究の推進を行いたいと考えている。
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