研究課題/領域番号 |
22K03639
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
本橋 隼人 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (00708563)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 宇宙物理 / ブラックホール / 重力波 / 準固有振動 / 非エルミート系 / 電磁波 / 散乱 / 特殊関数 / 超幾何関数 / ホイン関数 / 相対論 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ブラックホール観測技術は目覚ましい発展を遂げており、重力波の直接検出、ブラックホールの影の撮像、近傍の星の運動など、様々な発見が相次いでいる。今後数年でより多くのブラックホールがより精密に観測されることは確実であり、複数の観測手段によりブラックホールの正体に迫ることが可能となる。本研究ではブラックホールの多様な精密観測を見据えた理論的研究を行う。ブラックホールにおける波の減衰振動を司る準固有振動を中心として、重力波や電磁波などの伝搬の特徴を明らかにし、強重力・動的系における重力理論検証を開拓する。
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研究実績の概要 |
世界各地の電波望遠鏡や重力波干渉計の共同観測は、ブラックホールの性質を様々な角度から解き明かすものであり、これに伴って理論面での理解が喫緊の課題となっている。一般相対論におけるアインシュタイン方程式の解として、回転していないブラックホールを表すシュバルツシルト時空、回転ブラックホールを表すカー時空が知られている。本研究ではこれらのブラックホール時空における重力波や電磁波の伝搬を研究対象とした理論的研究を行う。 連星ブラックホールの合体直後に生じる重力波はリングダウン重力波と呼ばれ、一般相対論の線形摂動論において、特徴的な減衰振動の線形結合で記述される。この減衰振動は準固有振動と呼ばれ、減衰振動のタイムスケールは準固有振動数と呼ばれる複素振動数で決まる。一方で線形結合の係数は励起係数と呼ばれ、初期条件に依存する積分と、主要な寄与を与える励起因子の積で与えられる。準固有振動数と励起因子はブラックホールの質量とスピンのみに依存する。そのため、観測されたリングダウン重力波を理論予測と比較することで、動的・強重力系の基本法則の検証が可能となる。 本年度は、リングダウン重力波からデータ解析により準固有振動を抽出する新たな手法を提案した。従来の解析では、減衰振動の線型結合を用いた重力波波形のフィッティングにより複数の準固有振動を一度に取り出す方法が用いられてきた。これに対して我々は、同定が容易な長寿命モードから順番に抽出する方法を考案した。この手法によりフィッティングの安定性が改善し、より高次の倍音まで安定抽出が可能であることを示した。また、非エルミート系の知見を利用して準固有振動の間に起こる共鳴に類似した現象の詳細な解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載した研究成果は国内・国際学会で発表済みであり、研究成果をまとめた大学院生との共著論文はプレプリントとして公開し、現在査読の段階である。準固有振動と非エルミート系の関係に注目した研究については、当初の計画より詳細な研究成果が得られ、その確認に時間を要したため、予定よりやや遅れている。前年度までの解析で複数の準固有振動の間に生じる共鳴に類似した現象を発見した。共鳴は例外点近傍での擬交差に伴って起きるものであり、非エルミート物理の知見を応用することでその性質を調べることができる。当初はこの手法により共鳴の性質の定性的な理解を得ることを目標としていたが、ある程度定量的な議論も可能であることが明らかとなった。そのため追加の解析を行い、共鳴の性質を高精度数値計算で確認するとともに、解析計算により証明することに時間を要した。これらの研究成果は国内・国際学会にて発表済みであり、内容を拡充した論文を執筆中の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更はない。非エルミート系の観点から準固有振動を調べた研究成果をまとめた論文を執筆中であり、次年度には出版できる見込みである。この共鳴現象は通常の共鳴とは異なる性質を持ち準固有振動において普遍的に生じる現象である。ブラックホールおよび近傍の時空構造を知る上で新たな指標として利用できるため、今後応用を探っていきたい。また、ブラックホール時空における電磁波や重力波の伝搬についても、これまでの研究成果を利用しながら引き続き解析を進める。
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