研究課題/領域番号 |
22K03642
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
辻川 信二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30318802)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 一般相対論 / スカラーテンソル理論 / ブラックホール / 中性子星 / ダークエネルギー / 重力波 / 暗黒エネルギー / 暗黒物質 |
研究開始時の研究の概要 |
物理学の大きな謎であるダークエネルギー問題に対して,理論的に整合的な模型を構築し,上で述べた重力波の最新の観測データを用いて有効な模型に肉薄していく. 特に,スカラー場とベクトル場を含む極めて一般的な拡張重力理論において,重力波・スカラー摂 動・ベクトル摂動の進化を理論的に定式化し,それらをモンテカルロコードに組み込み,様々な模 型の選別を効率的に行えるようにする.もう一つの研究の柱として,宇宙の強重力局所領域に同様な理論を適用し,新たな ブラックホールと中性子星の解を構築し,重力波の観測からスカラー場やベクトル場の兆候 を探る.
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研究実績の概要 |
本年度は主に,スカラー場と重力が結合している理論であるホルンデスキ理論において安定に存在し得るブラックホールと中性子星の解について明らかにした.ブラックホールについては,事象の地平線でスカラー場の動径方向の微分が発散する場合の解は不安定であることを一般的に証明した.その成果を発展させ,スカラー毛を持つ安定な静的・球対称ブラックホール解が,スカラー場が動径のみの関数であるときに,スカラー場とガウス・ボンネ項が結合している理論以外は一般的に存在しないことを示した.また,スカラー場とガウス・ボンネ項が結合した理論で,中性子星の内部でラプラス不安定性が生じないという条件から,結合定数に対して理論的な上限を与えた.これは,重力波のデータから得られている強重力場中での観測的な制限のどれよりも強いものである.さらに,ブラックホールや中性子星がスカラー毛を持つ際に,それらの連星系から放出される重力波の波形を導出し,将来のブラックホール・中性子星連星の観測から,スカラー荷の値に制限をつけることが可能であることを示した. また,宇宙初期のインフレーションという加速膨張を引き起こすスカラー場とガウス・ボンネ項が結合している場合に,原始ブラックホールの種が生成され得ることを明らかにした.これは,ヒッグス場がガウス・ボンネ項だけでなく重力とも結合しているシナリオであり,暗黒物質の候補となる原始ブラックホールの種が十分に生成されるだけでなく,宇宙背景輻射の温度揺らぎの観測データとも整合的であり得ることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度の研究計画の柱として,ホルンデスキ理論において存在し得るブラックホールと中性子星の解を精査することがあったが,実際にスカラー毛が存在する安定なブラックホール解の絞り込みに成功した.中性子星についても,スカラー場とスカラー曲率が非最小結合している理論と,スカラー場とガウス・ボンネ項が結合している理論において,スカラー毛を持つ安定な解が存在することを明らかにした.このような結果を踏まえて,予定よりも早く,連星系から放出される重力波の波形の研究に着手し始めた.特に,ホルンデスキ理論のサブクラスで重力波の速度が光速度に等しい理論で,重力波の波形を一般的に導出し,その成果はすでにPhysical Review D誌に出版されている.その理論的な成果を用いて,ブラックホール・中性子星連星系の実際の観測データから,中性子星が持ち得るスカラー荷の値に制限をつける研究も開始しており,研究は当初の予定以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,一般的なホルンデスキ理論において,連星系合体前に放出される重力波の定式化を行う.その際に,高次のポストニュートン項を考慮した理論波形を導出し,将来の観測データから模型に制限を与える際の指針を与える.さらに同理論において,中性子星連星系合体の際の潮汐変形の計算と,連星系合体後の準固有振動の計算を推進させる.さらに,ベクトル・テンソル理論においても同様な理論研究を行い,今後の重力波観測から一般相対論からのずれを検証するための準備を行なっていく.
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