研究課題/領域番号 |
22K03645
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
山田 憲和 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (50399432)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ゲージ理論 / トポロジー / 数値計算 / 有限温度 / 相転移 / QCD / 素粒子 / θ真空 / 非摂動力学 / 格子シミュレーション / CP対称性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年新たに開発したsub-volume法を複素ラグランジアンを持つ系に適用し、これまで符号問題のため定量的な研究がされていないθ項を持つゲージ理論や有限密度QCDのダイナミクスを調べる。まずは、4次元SU(3)やSU(2)Yang-Mills理論のθ-T相図の完成を目指す。その後、有限密度QCDの研究に移行する予定である。
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研究実績の概要 |
4次元SU(2)ヤン=ミルズ理論におけるθ-T相図の探索を行った。臨界温度近傍(0.7 Tc ≦ T ≦ 1.3 Tc)の複数の温度で3つの格子体積でゲージ配位を生成し、我々が開発した「sub-volume法」を用いて自由エネルギーのθ依存性を計算した。これは、以前行った真空エネルギーのθ依存性の計算と相補的であり、θ-T相図を探る直接的な研究である。高温では、θがO(1)まで有意な計算することができ、その関数系はインスタントン描像から予測される 1-cos(θ)に比例することが分かった。一方、低温ではθ~πに到達する前に統計誤差が増大するがθ<π/2の領域では有意な結果を得ることができた。その関数系は、1-cos(θ)よりも1-cos(θ/2)に比例することを示唆していた。現在、結果をまとめて論文を執筆中である。 他にも、自由エネルギーをθ=0の周りで展開した係数を2次まで計算した。これらは、Q(位相荷)分布の2次と4次のキュムラントに対応しており、それぞれ位相感受率、b2と呼ばれている。これを標準的な手法であるfull-volume法と我々が開発したsub-volume法で計算した。位相感受率については、2つの方法から無矛盾な結果が得られ、これまでにない精度で位相感受率の温度依存性を明らかにすることができた。一方、b2に関してはfull-volume法だと統計誤差に埋もれて有意な結果は得られなかったが、sub-volume法では誤差は劇的に改善されることが分かった。これによりb2の温度依存性が明らかになり、低温相と高温相ではそれぞれ約-1/48と約-1/12のほぼ定数となり、Tc付近でその間の遷移が起こることを見出した。また、この低温時の定数-1/48は、自由エネルギーが1-cos(θ/2)に比例する場合の値である。この仕事は、現在JHEP誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算資源も概ね期待通りの分量を確保できており、解析コードの開発も順調である。計算が順調に進んでいるため、計算手法の性質上もう一つファイルサーバーを購入する必要が出てくる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きθ-T相図の探索を行う。特に、Tcのθ依存性を解明したい。SU(3)の場合と違い、SU(2)では相転移が2次であり、相転移温度の決定にはより高統計の計算が必要になることが予想される。よって、相転移点を見つける新たな手法の開発も並行して行うことが望ましい。 また、クォークを取り込んだ系の計算にも展開したい。ディラック演算子の固有値を用いた閉じ込めとカイラル対称性の敗れの間の関係の有無の研究も行う。前例の無い研究であるため、多少の試行錯誤が必要となるが、試験的な解析で有望な結果が得られているため、少なくとも何らかの新しい知見は得られると予測している。
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