研究課題/領域番号 |
22K03648
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新井田 貴文 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00861808)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 偏極 / 渦 / 高エネルギー原子核衝突 / 同重体 / 強磁場 / ハイペロン / STAR実験 / 重イオン衝突 |
研究開始時の研究の概要 |
相対論的原子核衝突実験においてグローバル偏極が観測され、観測史上最速の渦が形成されていることが判明した。しかしながら、現在の理論モデルでは実験データを十分理解しているとは言えないのが現状である。本研究では、幅広い衝突エネルギーのデータを解析し、また異なる粒子に着目するすることで、渦およびスピン偏極のメカニズムを解明するとともに宇宙最高強度の磁場の検出に挑む。また、衝突ダイナミクスを理解する上で鍵となる局所渦の探索を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究は、相対論的原子核衝突において観測された偏極および渦現象のメカニズム解明を目的としている。STAR実験で取得された同重体衝突データの解析から、楕円膨張フローおよび三角膨張フロー起源による偏極を初めて観測し、局所渦の生成を明らかにした。この結果はスピンパズル解明に有用な実験データであり、Physical Review Lettersに出版された。一方、グローバル偏極に関しては、初期強磁場から期待される粒子、反粒子間の違いは、200 GeV同重体衝突データおよび19.6 GeVと27GeVの低エネルギー金原子核衝突において観測されなかったが、局所熱平衡の仮定のもとでフリーズアウト時の磁場強度に制限をかけることができた。また、同重体と金原子核衝突の比較より、理論モデルで予測されている衝突系システムサイズの依存性は見られず、初期角運動量だけでなく、系の寿命や粒子放出のタイミングなどによって観測される偏極が変化し得ることを示唆する結果となった。このグローバル偏極測定結果については、STAR実験内で論文提案を行い、承認されたところであり、現在投稿論文の準備をしている。 これらの結果については、第25回スピン物理国際シンポジウム(SPIN2023)での招待講演を含む3つの国際会議と国内での招待講演セミナーにて発表を行なった。また、これまでの成果が評価され、2件のレビュー論文に共同著者として招待され、1件は執筆を終えて提出を完了し、もう1件は現在執筆中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同重体衝突での三角フロー起源の局所偏極の初観測に成功し、Physical Review Lettersへ出版した(Phys. Rev. Lett. 131, 202301 (2023))。また同データを使ったグローバル偏極についてもSTAR実験グループ内で論文提案をしており、期待通りの成果を出していると考える。一方で、RHIC加速器の問題により、2023年の物理ランが途中で終了してしまい、出張計画に変更が生じるとともに、2023年ランでは当初予定の6割程度のデータ取得に留まった。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、同重体衝突でのグローバル偏極に関する論文を出版するために、引き続き論文執筆作業を進め、内部レビューを経て、年度内の論文提出および出版を目指す。2024年4月中旬よりSTAR実験の物理ランが始まるため、リモートでのオンラインデータQAへの貢献、および現地へ赴いて実験に参加し、高品質データの取得を行う予定である。また、2023年に取った金原子核衝突データの校正が終わり次第、オフラインデータのQAおよび偏極の粒子種依存性の解析を始める。検出器アップグレード後の最初の200 GeV高統計データなので、機械学習を活用し、粒子識別、特にマルチストレンジネスの識別能力向上を図る。
|