研究課題/領域番号 |
22K03649
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 智之 東京大学, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (50749629)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | ミューオン異常磁気能率 / 超対称性 / 陽子陽子衝突型加速器 / LHC / 素粒子標準模型 / LHC加速器 |
研究開始時の研究の概要 |
2021年4月にアメリカのフェルミ国立加速器研究所の実験がミューオン異常磁気能率の新しい測定結果を公表し、素粒子標準模型の予言値と優位にずれていることを明らかにした。これは現在の標準模型では説明できない現象であり、新しい理論模型を必要とする明確な兆候といえる。本研究はこのミューオン異常磁気能率のずれを指標にし、電弱エネルギースケールの超対称性粒子の寄与の解明を目的とする。 スイスのCERN研究所の陽子陽子衝突型加速器(LHC)において、このずれに直接寄与しうる超対称性粒子の研究を展開する。課題となる莫大な背景事象を克服するために独自の信号収集方法を開発することで研究を実現する。
|
研究実績の概要 |
ミューオン異常磁気能率の測定結果と素粒子標準模型の予言値との有意なずれは、新しい理論模型を必要とする明確な兆候である。本研究はミューオン異常磁気能率のずれを指標にし、電弱エネルギースケールの超対称性粒子の寄与の解明を目指す。スイスのCERN研究所の陽子陽子衝突型加速器(LHC)において、このずれに直接寄与しうる超対称性粒子を研究対象とする。課題となる莫大な背景事象を独自の手法で解決することで、未探索領域での超対称性粒子の発見に挑戦する。
本年度は、超対称性粒子起源の微弱な信号取得を目指し新しいトリガーシステムをLHC-ATLAS実験システムに導入した。年度始めから試運転を集中的に行い、フロントエンドエレクトロニクスからの疑似信号を駆使したトリガー信号のタイミング調節を行った。トリガー信号の高速転送時のデータ損失をできる限り防ぐために、6.25 nsの精度でのタイミング微調節まで行った。次に宇宙線信号を利用した試運転に取り組みシステムを仕上げた。さらにLHC加速器側の試運転中に行った低エネルギービーム衝突において、正しくトリガー信号を生成できることが最終的に確認できた。7月に開始した陽子ビーム衝突エネルギー13.6 TeVのRun-3本実験開始時から新しいトリガーシステムを用いた信号収集に成功した。この成果を現在論文にまとめている。
また収集したデータの解析時に使用する微弱信号検出アルゴリズムの構築にも取り組んだ。深層学習を駆使し多種類の検出器信号を統合的かつ補完的にに用いることで、従来は検出できなかった信号を莫大な背景事象の中から効率よく見つけ出す手法の開発に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年7月に開始した陽子ビーム衝突エネルギー13.6 TeVのLHC Run-3本実験において開始当初から、新しく導入した先進的なデータ収集システムにより信号収集に成功した。これは年度開始当初からトリガーシステムの試運転を戦略的かつ計画通りに進め、システムを段階的に洗練させていったことによる大きな成果である。
電弱エネルギースケールO(100 GeV)の質量を持つ超対称性粒子からの微弱信号検出のための専用アルゴリズムの開発を進めた。ターゲットとする超対称性粒子の崩壊からの信号の特徴を機械学習を用いて効率的に抽出し、従来は莫大な背景事象で埋もれて検出が困難であった微弱な信号の検出可能性を示すことができた。
以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
背景事象の混入が依然として存在するため、Run-3実験から新しく導入した内層ミューオン検出器の信号を有効的に利用することで、さらなる背景事象の削減に取り組む。新内層検出器をトリガーシステムに組み込むためには、信号処理を1マイクロ秒程度で完了しなければいけない。高速処理を実現するアルゴリズムをハードウェア上に実装し、リアルタイムで背景事象を賢く分離する。背景事象を取り除くことでデータ収集システムの帯域幅をあけて、さらに微弱な信号の探索を実現する。
収集したデータの解析時に使用する機械学習を駆使した微弱信号検出アルゴリズムに関して、衝突データを用いた性能評価と較正を進める。並行して超対称性粒子探索の課題となる背景事象の評価手法の検討を行っていき、最終結果を算出する準備を整える。
|