研究課題/領域番号 |
22K03653
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 足利大学 |
研究代表者 |
木村 彰徳 足利大学, 工学部, 教授 (60373099)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 放射線シミュレーション / 動的構造モデル / ボリュームデータ可視化 / 適応的四面体格子 / ディープラーニング |
研究開始時の研究の概要 |
放射線シミュレーションは物理学のみならず,医療,宇宙科学など様々な分野で,治療精度の向上,装置の開発や最適化,非破壊検査装置の開発などでも利用されている.また,シミュレーションによる計算精度の向上にはより詳細な物体の構造をモデリングする適応的四面体格子が用いられている. 本研究では,AIを利用して各臓器や腫瘍を抽出し,人体の複雑な構造を高速に探索可能な適応的四面体格子モデルを構築をする.このモデルを利用し,人体などの複雑な形状モデルに対する放射線シミュレーションの高速化及び高精度化を目指す.さらに,本研究で開発する応用ソフトウェアを公開する.
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研究実績の概要 |
放射線シミュレーションは物理学のみならず,医療,宇宙科学など様々な分野で,治療精度の向上,装置の開発や最適化,非破壊検査装置の開発などでも利用されている.そして,放射線シミュレーションの計算精度を向上させるために,人体,シリコン素子,測定器等のより詳細な構造をモデリングするために,その構造に対して四面体セルを適応的に変化させた適応的四面体格子が用いられている. 本研究では,AI技術やGPU(Graphics Processing Unit)を利用し,人体の複雑な形状モデルに対する放射線シミュレーションの高速化及び高精度化を目的としている.さらに,本研究で開発する応用ソフトウェアを公開し利用できるようにすることを目的としている. 放射線医療のために利用される治療計画装置では,患者に照射する放射線の分布を事前に計算するためにシミュレーションが利用されている.がんの放射線治療のためのシミュレーションでは,ターゲットとなるがん病巣やその周辺の臓器に対する線量分布の計算のために用いられ,高精度な計算結果が要求されている.そして,高精度なシミュレーションを行うための一つの要素が患者の高精度な3次元形状モデルである.一方で,近年の人工知能の発展により,医用画像からの多臓器やがん病巣を精度良く効率的に抽出できるようになってきている.人工知能を利用することで,放射線治療シミュレーションで線量分布を計算するターゲット(がん病巣)や重要臓器の設定を効率的に行えるようになると考えている.また,抽出する精度の向上や検証のために,医師や医学物理士によって最適化されたRoI(Region of Interest)で追加学習を行うことも考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
CTスキャナで取得した患者データから,AIを利用した各臓器や腫瘍の抽出によって人体の複雑な構造を取得し,必要な微調整をするための編集機能の開発を行った.また,抽出した各臓器や腫瘍の情報から,放射線シミュレーションで用いる高精度な3次元形状モデルを生成するための研究開発を開始した. CTスキャナで取得した患者データから,NVIDIA Clara Holoscan(以下Clara)のAIを利用し,多臓器及びがん病巣を抽出した形状データを取得できるようになった.その臓器やがん病巣の形状を医師や医学物理士が微調整するためのRoI編集機能の開発を行なった.RoI編集機能は,Claraで取得した形状データを初期状態とし,その3次元形状を,2次元平面上のRoIの輪郭曲線をマウスを利用して自由に編集できるようになった.この編集を加えたデータをシミュレーションのための3次元形状モデルの生成に利用する. 高精度な3次元形状モデルを生成するために,適応的四面体格子を用いた3次元形状モデルの構築に関する調査と実装とその高速なセル検索を実現するためのCellTreeアルゴリズムを利用するための実装を開始した.適応的四面体格子の調査の段階で,利用を予定していたアルゴリズムを変更することにした.3次元形状モデルについて当初は時間変化を伴う動的形状モデルを考慮していなかったが,放射線治療シミュレーションなどに用いる人体の形状モデルではその機能が特に重要になる.放射線治療では患部に正確に放射線を照射するために,呼吸同期システムが利用されている.これをシミュレーションで再現するためにも動的形状モデルが重要になっている.この変更のために,CellTreeは次年度に実装することにした.
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今後の研究の推進方策 |
RoIのための形状データの編集機能を、本研究の成果物の一つとなる応用ソフトウェアgRovaiに実装をする.gRovaiはAIサーバーと同じLAN内のPCで実行し,Claraと接続してCTデータから多臓器及びがん病巣の形状情報の取得することができ,入力のCTデータ及びClaraで取得した形状情報の可視化ができるようになっている.RoI編集機能は,2次元平面上で微調整する機能を,自動的に3次元形状に反映するために機能を拡張する.その編集したRoIやがん病巣・臓器などの3次元形状を決定し,放射線シミュレーションのための3次元形状モデルの動的な適応的四面体格子の生成を行えるようにする. 生成した形状モデルには,放射線が通過した四面体セルを高速に検索ができるように,GPUを利用し最適化されたアルゴリズムCellTreeを利用する.最終的に,形状モデルを利用した高速かつ高精度な放射線シミュレーションを実行し,gRovaiでシミュレーション結果の可視化及びDVH(Dose Volume Histogram)の計算及び表示が行えるようにすることを目標としている. この研究で開発した応用ソフトウェアgRovaiを公開するための準備を行う.gRovaiは必要に応じて,AIを利用したRoI編集機能,シミュレーションのための3次元形状モデルの生成,可視化機能などを分離し利用しやすいようにしたいと考えている.
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