研究課題/領域番号 |
22K03657
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
藤田 陽一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 専門技師 (80391720)
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研究分担者 |
深尾 祥紀 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80443018)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 半導体センサー / 放射線検出器 / ダイヤモンド / SiC / ASIC / COMET実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではシリコンよりバンドギャップの大きいワイドギャップ半導体を軸とする放射線 耐性の高いセンサーおよびエレクトロニクスの開発技術を確立し、ミューオン電子転換過程探索実験 COMET における前方ミューオン計測システムへと応用する。 COMET 実験は大強度陽子ビームから大量のミューオンを生成するため、測定器の上流では電離性放射線量として 10 MGy、非電離性放射線量として 10**14 neutron/cm2 もの放射線耐性が要求される。そこで本研究では、センサー材料としてダイヤモンドとシリコンカーバイドに着目し、その大面積化に向けた開発を行う。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実績として、前方ミューオン検出器のプロトタイプを制作してビームテストを実施するため、ミューオンモニターに実装する全 SiC の良品検査と昨年度より実施しているサンプルの中性子線照射の継続を行った。 1)SiC ダイの良品検査を行った。SiC ダイをウェハーレベルで I-V 特性測定を行い、良品率 95% の歩留まりを得た。2)SiC サンプルの中性子線照射を昨年度に引き続き継続した。1E+12 n/cm^2 オーダーの中性子線照射を複数回にわたり行い、リーク電流に大きな変化の無いことを確認した。 加えて、前方ミューオン検出器の読み出し ASIC の開発を進めた。最初の試作で得られた知見より COMET 実験で要求される仕様を満たすよう改善した ASIC の試作に着手した。 3)センサー読み出し用 ASIC の評価を進めた。テストに用いる FPGA のファームウェアを更新して、内部 ADC による入力信号の再構成、デジタル出力のケーブルドライブ、低温となる実験環境下での3点について動作試験を行い、いずれも大きな問題のないことを確認した。4)新型 ASIC の開発に着手した。COMET 実験で要求されるダイナミックレンジや時間分解能等を得るために、応答速度など改善した新型 ASIC を試作した。応答速度は Charge Sensitive Amplifier (CSA) の TransImpedence Amplifier (TIA) への置き換えにより実現した。本 ASIC の評価を行い、アナログ部の基本動作試験によりパルス幅 100ns 以下を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)SiC ダイの良品検査: セミオートプローバを用いてダイシング前の SiC ウェハーにプローブ針をあて、240 チップについて I-V 特性測定を行った。良品率 95% の歩留まりが得られた。良品検査を終えたウェハーは実装のためダイシングを行った。 2)SiC センサーの中性子線照射: 昨年度に引き続き、京都大複合原子力科学研究所の原子炉(KUR)において二つの SiC サンプルに 1E+12 n/cm^2 オーダーの中性子線照射を複数回にわたり行った。リーク電流は nA オーダーのままで大きな変化が無いことが確認できた。 3)センサー読み出し ASIC の評価続き: 内部 ADC 処理による出力データより入力信号の再構築を行うために FPGA のファームウェアを開発した。これにより、a) 外部入力信号の復元 b) デジタル出力のケーブルドライブ c) COMET 実験環境で予想される低温下における動作 の3点についてチェックを行った。その結果、いずれのテストにおいても期待される動作を確認することができている。前者は外部のパルスジェネレータより任意の信号を ASIC に印加して PC において入力信号の復元を確認した。中者はカテゴリ8の LAN ケーブル 10m 以上において、サイン波の復元に成功した。低温試験では -120 度までの正常動作を確認した。 4)新型 ASIC の開発: COMET 実験で要求されるミューオンモニターの仕様に合わせたダイナミックレンジや 100ns の時間分解能、サンプリングを外部クロックで駆動させる、それに伴うデジタル部の仕様変更など、ゲインや応答速度、デジタル部の仕様を更新した新型 ASIC を試作した。本 ASIC の評価を行い、アナログ部の基本動作確認によりパルス幅 100ns 以下を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
最終の 2024 年度は昨年度中に実施予定だった前方ミューオン検出器のプロトタイプを製作してビームテストを実施、成果発表を行うことが目標である。そのために、 1)前方ミューオン検出器のビームテスト センサー基板に SiC センサーの実装を行い、ASIC 基板との接続によりセンサーの読み出しテストに着手する。前方ミューオン検出器としての動作確認ができた段階でビームテストを実施する。 2)時間分解能を高めた改善版 ASIC の開発 ミューオンモニターの仕様に適合する出力パルス幅が実現できたので、引き続き内部 ADC による入力信号波形の復元作業に着手する。
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