研究課題/領域番号 |
22K03663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
西嶋 恭司 東海大学, 理学部, 客員教授 (40202238)
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研究分担者 |
櫛田 淳子 東海大学, 理学部, 教授 (80366020)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 超高エネルギーガンマ線 / 活動銀河核 / 電波銀河 / 大気チェレンコフ望遠鏡 / 宇宙線 |
研究開始時の研究の概要 |
活動銀河核からの超高エネルギーガンマ線については,その放射領域も放射メカニズムも十分には分かっていない.そこで本研究では,MAGIC望遠鏡とCTA大口径望遠鏡LST1との同時観測により,超高エネルギーガンマ線で,活動銀河核,特に電波銀河を世界最高感度で観測し,詳細な「時間変動」と「エネルギースペクトル」を調べる.さらに,多波長同時観測によるSEDとその時間変動より,活動銀河核における超高エネルギーガンマ線の放射領域の特定と放射メカニズムの解明を目指す.
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研究実績の概要 |
超高エネルギーガンマ線によって多くの活動銀河核(そのほとんどがブレーザー)が検出されているが,その放射領域も放射メカニズムも十分には分かっていない.中でも電波銀河は,ジェットと視線方向が傾いているためドップラーブーストが効かず,超高エネルギーガンマ線の放射を説明するのは難しい.一方でジェットを横から見るため,電波等でその構造を見ることができる.そこで本研究では,MAGIC望遠鏡とCTA大口径望遠鏡LST1との同時観測により世界最高感度で,超高エネルギーガンマ線で電波銀河を観測し,詳細な「時間変動」と「エネルギースペクトル」を調べ,超高エネルギーガンマ線の放射領域の特定と放射メカニズムの解明を目指している.当該年度は,MAGIC望遠鏡により2021年から2024年2月までに観測されたM87の22.8時間分の観測データの解析に注力した.前年度に改良した月光下や低トランスミッションレベルでの観測データの解析方法を適用し,エネルギーフラックスとして,142 GeVで9.74x10^-13 TeV/cm^2/s,542 GeVで5.62x10^-13 TeV/cm^2/s,2040 GeVで2.02x10^-13 TeV/cm^2/s,を得た.残念ながらフラックスが低く,明確な時間変動を見ることはできなかった.一方,2017年に引き続いて行われた2018年のEHTを中心とするM87観測キャンペーンの多波長解析の結果をまとめた.この期間TeVガンマ線によるフレアーが検出された.MAGICではフレアーのピークを観測することができなかったが,H.E.S.S.のデータと合わせ,ライトカーブからTeVガンマ線放射領域のサイズに制限をつけたが,放射領域は未だ不確かである.また,多波長SEDは2017年の結果同様,1ゾーンのレプトニックモデルでは説明できず,第2第3の成分の必要性が再確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,月光下や低トランスミッションレベルでの観測データを生かすための解析手法の改良に時間を費やしたため,MAGIC望遠鏡で2019年から2021年に観測されたM87の既存データの解析のみを行なったが,今年度は,新しく観測したデータも加え,2020年10月から2024年2月までに観測した,M87(45.9時間),NGC1275(4.3時間),TXS0149+710(5.0時間),M82(19.9時間)のデータ解析を行なった.モノ観測のデータであったり,LiDARのトラブルなどがあって,新しいデータに関しては良質のデータが十分得られなかった点がやや残念であった.M87に関しては有意な信号が検出できてSEDが得られているが,フラックスレベルが低く,長期変動を含む時間変動を得るのは難しかった.2018年のEHTとのキャンペーン観測の多波長解析結果を論文にまとめることができた点はよかった.他の天体に関しては,いずれも有意な信号が検出できず,上限値が得られたのみであった.CTA-LST1による新しい観測は順調に進んでいるが,解析は予定より遅れていて,現在BL LacなどのブレーザーとNGC1068の解析が進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
今まではMAGIC望遠鏡による活動銀河核の観測データを中心に解析しきたが,今後は,MAGIC望遠鏡による観測も継続するものの,CTA-LST1による観測と解析を重点的に行う.CTA-LST1のデータ解析手法はほぼマスターできているが,月光下での観測や低トランスミッションでの観測データについてもMAGICデータ解析の経験を生かして解析に取り込める目処は立っている.エネルギー閾値が下がることにより,SEDと時間変動についてこれまでより十分なデータが得られることが期待できる.もしフレアが検出できれば,多波長との連携でフレア時のフラックスの相関やSEDの時間変化から,その放射機構と放射場所の特定に迫る予定である.そのために,agnpyをベースにさまざまな放射モデルを検証する.メインのターゲットはM87であるが,その他の電波銀河やブレーザーも含めて解析する.もしフレアが起きなかったり,新しい観測データが十分に得られない場合は,既に取得済みのデータを含めて長期時間変動の特徴を多波長と比較しながら,静穏期のAGN,特に電波銀河についてその放射メカニズムを検討する.既存の放射モデルでうまく説明できない場合は,理論研究者の協力を得て,新しい放射モデルの構築も検討する.
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