研究課題/領域番号 |
22K03665
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
松原 綱之 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30724992)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 検出器開発 / プラスチックシンチレータ / ニュートリノ振動 / ニュートリノ反応 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの加速器ニュートリノ振動実験T2Kの成果から、ニュートリノのCP対称性が大きく破れていることが示唆されている。今後CP位相の精密測定化を進めることで、宇宙から反物質が消えた謎に迫ると期待される。このCP位相の測定をより一層と精密化するためには、ニュートリノ-原子核反応モデルの系統誤差をこれまで以上に削減することが必須である。本研究は、この系統誤差削減のために、高解像度かつ大型化可能な、プラスチックシンチレータベースの超高精細飛跡検出器の開発を行う。
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研究実績の概要 |
初年度に試作した機械加工による六角形のプラスチックシンチレータプレートを追加で3枚製作して、プレート両側を白色ポリスチレンで挟んだ4層構造の試作検出器を作成した。それらに平面3方向から60本の光ファイバーを配置して、光検出器MPPCと光学接続した。また、全体を暗箱で囲って遮光し、MPPC用の電源印加と読み出しを行うEASIROCモジュールを用いて60チャンネルの読み出しからなるデータ収集システムを構築した。
この4層構造の小型試作機とデータ収集システムを用いて宇宙線の測定を行い、宇宙線ミューオンと思われる事象の飛跡データを得ることに成功した。また、このデータを用いて光量評価を行い、1層 (15チャンネルの和) では50 p.e.程度の光量ピークを、また3つの読み出し方向ごと (5チャンネルの和) でも20 p.e.程度の光量ピークを観測した。層内の隣り合うファイバーへの光の伝搬も抑制できており、観測光量としては充分であることを確認した。この試作機を用いた宇宙線による性能評価より、本検出器構造は期待通りの性能を持つことが示された。一方で、構造に由来すると思われる観測光量の不均一性も確認されたため、その理解が今後の課題となる。これらの成果をシンチレータ高度化検討会や日本物理学会 第78回年次大会で報告した。
上記試験に加えて、射出成形による量産設計を進めた。プレート構造にパズルマットのようなジョイント構造を設けることで、精度よく整列させる構造を考案した。金型製作の見積もりを進めたが、物価高や当初より複雑な構造としたことによって価格が上昇して納期も長くなった。そのため、当初計画より小さいサイズにするといった構造の再検討や、安価に金型製作を請け負ってもらえる業者の再選定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試作機による性能評価は順調に進んだが、射出成形で量産するための金型製作にやや遅れが生じている。物価高、構造の複雑化によるコスト増、予算配分額の充足率の低下といった要因により、予算を超えたためである。解決の目処が立ちつつあるが、当初計画を縮小した検出器の再設計、代替機器の利用した予算の削減、金型製作を安価に請け負ってもらえる業者の選定などに多くの時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
射出成形用の金型の製作を行い、プラスチックシンチレータペレットを用いてシンチレータプレートの量産を行う。量産方法を確立するとともに、量産したプレートを組み上げて大型化可能な試作機を製作する。高精細な飛跡検出が可能であることを試験によって確認し、将来のニュートリノ-原子核反応モデルの精密検証に向けて応用可能であることを示して開発を完了する。
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