研究課題/領域番号 |
22K03675
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大塚 雅昭 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (70399286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 惑星状星雲 / ダスト減光 / 元素組成 / 三次元面分光 / 多波長分光 / 質量放出 / 中小質量星 / 恒星進化 / 星間物質 |
研究開始時の研究の概要 |
銀河の化学的進化は恒星進化末期の大規模な恒星風質量放出と星間物質(ISM)間の物質循環の結果である。老齢な銀河では、恒星風質量放出とISMに含まれるガス・ダスト質量は同程度と考えられていたが、最新の観測研究によると、全恒星ガス・ダスト質量は全ISMのそれの1割以下、9割以上はミッシングマスである。ミッシングマス問題が未解決なのは、中小質量星の恒星風質量放出の定量的理解が進んでいないためである。本研究は、惑星状星雲の多波長三次元分光データと独自開発した高空間分解画像構築法を駆使し、中心星付近からISMにまで広がる星周殻内のガス・ダストの完全な三次元物理量分布を調査する。
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研究実績の概要 |
本研究は惑星状星雲の紫外-遠赤外線三次元分光データを使い、中心星付近から星間物質にまで広がる星周殻内の原子/分子ガス・ダストの完全な三次元物理量分布調査から中小質量星における恒星風質量放出の定量的解明を目指すものである。2023年度の研究ハイライトは以下のとおり。
惑星状星雲H4-1の研究:H4-1は銀河ハローに位置し、炭素が豊富で銀河系内で最も金属量が少ない惑星状星雲である。H4-1は銀河系の進化初期段階で形成されたとされているが、その起源と進化は解明されていなかった。H4-1の起源と進化を明らかにするために、三次元面分光データを用いた包括的調査を実施した。PSFを除去したデータキューブから取得した輝線画像では大質量星から進化した双極型惑星状星雲に見られる赤道ディスクを検出した。新たに開発した完全データ駆動型解析法により、元素組成比、ガスとダストの質量を導出した。観測量すべてを光イオン化モデルと連星核合成モデルの両方で再現、検証することにより、H4-1は現在白色矮星の冷却段階にあり、進化途中で合体を経験したと結論付けられた。研究成果は、低質量星の進化を理解する上で重要であるだけでなく、銀河ハローに多数存在する炭素過剰の低金属星の起源とこの先の進化についての洞察を提供している。研究成果は2023年12月にPASJ誌にて出版した。
計算コードの新規開発:高空間分解能及び高S/N比の三次元スペクトル画像を短時間に構築するための計算コードを新規開発した。このコードは、以前から問題視されていたデータシグナル間の微小な差異が引き起こすスペクトル画像上の段差を完全に解消するためにデータステッチングの概念を取り入れている。この改善により、S/N比が大幅に向上した三次元スペクトル画像の構築に成功した。また、計算時間が従来の6分の1にまで短縮、研究の効率性も大いに向上することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属先の人員が一時的減少により共同利用運用業務が増加したため、本プロジェクトに当てることができた時間は2022年度に比べると減少した。しかし、上記のとおり、研究プロジェクトの効率向上のための計算コードの開発に成功し、プロジェクトに関する査読論文も出版できている。よって、進捗状況を「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は上記で述べた計算コードの洗練、観測データの測定量のみで、如何なる仮定も導入せずとも選択減光量、減光量、電子温度及び密度のすべてを一度に求めることができる計算コードの完成、そして、複数の惑星状星雲における物理量空間分布に関する査読論文の出版を目標とする。
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