研究課題/領域番号 |
22K03676
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山中 雅之 鹿児島大学, 理工学研究科, 特任助教 (50645512)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 天文学 / 光赤外線天文学 / 中小口径望遠鏡 / かなた望遠鏡 / せいめい望遠鏡 / 光学赤外線天文学 |
研究開始時の研究の概要 |
Ia型超新星の観測により宇宙加速膨張が示唆されるなど重要な発見があった。しかしながら、その爆発前の星(親星)の正体は40年間未解決のままである。チャンドラセカール限界質量付近に到達した白色矮星の熱核暴走反応型爆発と考えられている。一方で、21世紀になりスーパーチャンドラセカール質量超新星(SC超新星)が見つかり、爆発・親星モデルの理論的な枠組みに拡張が求められるなど大きなインパクトが与えられた。本研究課題においては、機動的運用が可能な中小口径望遠鏡による観測でSC超新星を説明するモデルの検証を進める。
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研究実績の概要 |
本研究課題においては、依然正体不明とされているスーパーチャンドラセカール(SC)超新星の正体に制限を与えることを目的として観測的研究を遂行してきた。SC超新星は、Ia型超新星の中でも際立って明るく、非常に緩やかな光度曲線を示す特異なIa型超新星である。その観測的性質は、チャンドラセカール限界質量付近の白色矮星による爆発では説明困難であるとされており、その親星シナリオについては未だ解決していない。星周環境の物理的諸性質に制限を与えることで親星のシステムに迫る。星周物質シナリオでは超新星からの放射による散乱による偏光、星周ダストからの吸収再放射が期待される。我々はこのような星周物質の兆候をとらえるべく、増光段階にあるSC超新星のフォローアップ観測を行ってきた。2022年度は、京都大学口径3.8メートルせいめい望遠鏡、広島大学口径1.5メートルかなた望遠鏡を用いて、可視・近赤外線における測光観測、可視域における分光および偏光観測を実施してきた。SN 2021zny は 2021年に発見されたSC超新星候補天体である。我々はその分光学的性質から、エジェクタ中に非常に豊富な炭素を含むことを示した。また、この超新星は非常に光度曲線が緩やかであり、近赤外線光度曲線において明瞭な第二極大を示さないなどSC超新星に一致する観測的性質を示した。しかしながら、その極大光度については、他のSC超新星に比べても比較的暗く、やや明るいIa型超新星と同程度であることがわかった。従来、炭素を豊富に含むSC超新星はより明るいことが示唆されていたが、我々の観測結果から明るさに依存することなく炭素を多く含む超新星が存在することを明らかにした。このような成果は、日本天文学会や国内研究会にて報告を実施してきた。また、現在これに関する論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はせいめい望遠鏡及びかなた望遠鏡を用いて4つのSC超新星候補天体についてフォローアップ観測を実施した。2022年11月には申請者が京都大学から鹿児島大学に異動した。鹿児島大学では現在、近赤外線3バンド同時撮像観測装置「kSIRIUS」の開発が進行しており、鹿児島大学入来観測所1メートル望遠鏡への搭載が済まされている。さらに、すでに初期のキャリブレーション観測なども進み、同時に超新星や突発現象の候補天体について予備的な観測を開始させている。その結果、京都大学・広島大学で観測してきた1つのSC超新星について、鹿児島大学1メートル望遠鏡でも継続観測を行い、300日を超える長期の近赤外線撮像データを実現することができた。SC超新星の長期近赤外線フォローアップ観測は依然として希少である。この短期間のうちに4天体ものサンプルを追加できたことは非常に重要である。しかしながら、これら4天体のうち1天体については、海外グループから詳細な可視光測光・分光観測に基づく研究論文が公開されており、我々のグループとしても独自の研究成果を論文化させるために急ぐ必要がある。これら4天体について今後は論文執筆を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
得られた近赤外線データからSC超新星周りの星周ダストに制限を与えるべく、検討を行う。まず、過去によく研究出版されているSC超新星のサンプルを系統的に集め、光度曲線・色変化の比較を行う。次に、可視-近赤外線データを用いて総輻射光度曲線及び近赤外線放射を求める。次に、星周ダストによる吸収再放射モデル(Nagao et al. 2017)を使って、星周物質の物理諸量に制限を与える。また、独立にスペクトル放射分布とダストモデルを比較することで、ダスト質量の総和と推定できる。推定されるダスト質量から親星時代の質量損失率を求めることが可能となる。Ia型超新星の単縮退親星モデルにおいては、質量損失率が予言されており、このような値と比較し、親星シナリオを推定することが可能となると期待される。何より、親星に関する間接的な証拠を捉えることができれば、これまで未解明であったSC超新星を含むIa型超新星の理論的枠組みに大きな影響を与えることが可能であると期待される。また、同時並行してSC超新星候補天体が発見されれば、鹿児島大学入来観測所1メートル望遠鏡及びkSIRIUSを用いたフォローアップ観測を実施し、速やかにデータ解析を行う。
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