研究課題/領域番号 |
22K03682
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
並河 俊弥 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (80708511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / 重力レンズ / 観測的宇宙論 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題は、CMB観測で得られる「Bモード」と呼ばれる渦状の偏光パターンの統計解析手法について研究する。Bモードに着目する理由は以下のとおりである:1)未だ確認されていない原始重力波を検証する上でBモードは最適な観測量である、2)重力レンズ起源Bモードから大規模構造の情報を取り出すことでニュートリノ質量等を明らかにできる、3)今後10年のCMB観測でBモードの観測精度は飛躍的に向上するため、その解析手法の確立は今後10年で取り組まなければいけない。計画では、特にBモードを含む高次相関の解析手法を確立する。本計画の実現によって得られる成果は、本計画終了後に観測が開始する観測に対して有益である。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background、CMB)の観測で得られる、「Bモード」と呼ばれる渦状の偏光パターンを用い、宇宙初期に作られるインフレーション起源の原始重力波検証に向け、その統計解析手法について研究を行っていく。まず、初年度である2022年度から、原始重力波の観測精度を上げるための手法である delensing に関する研究を行ってきた。ここで delensing では、原始重力波以外で生じる重力レンズ由来のBモード偏光を除く解析方法を指す。特に最初は LiteBIRD を想定し、delensing の効率に関して見積もりを行った。LiteBIRD の場合は自前で delensing を行うことが難しく、地上CMB実験である CMB-S4 の高分解能偏光データ、また Euclid や LSST などの銀河測光観測データと組み合わせることで LiteBIRD の delensing 効率を見積もった。この成果は2023年度に論文として Journal of Cosmology and Astroparticle Physics に受理された (Namikawa et al. 2024)。また 2023年度は、銀河の前景放射の影響を回避する方法として、重力レンズにより歪められた原始重力波由来のBモード偏光と大規模構造の観測量との相互相関をとるという新たな手法についても研究を開始した。こちらも、2023年度に得られた研究結果は Physical Review Letters 誌に掲載された (Namikawa & Sherwin 2023)。またこれらの成果にもとづき、国内外の研究会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題では、高度データ解析手法の確立とCMBデータ解析を通して、宇宙論・基礎物理学の基礎理論を検証していく。本課題では特に、CMB観測で得られる「Bモード」と呼ばれる渦状の偏光パターンの統計解析手法に焦点を当て、Bモード偏光を用いた原始重力波検証に向けた解析手法の開発が目的である。初年度である2022年度は、原始重力波の観測精度を上げるための手法であるdelensing に関して研究した。特に LiteBIRD を想定した場合の delensing に関して研究を進め、これらの成果は2023年度中に、雑誌に掲載されることが認められた (Namikawa et al. 2024)。この研究に関しては当初の予定通りである。また、上記のような当初の計画以外にも、新たなアイデアによって研究が広がり、その成果を論文として執筆することができた。その一つとして、重力レンズを受けた原始重力波由来のBモード偏光を使った、新たな原始重力波の検証法に関する研究がある (Namikawa & Sherwin 2023)。この手法を用いると、観測量には銀河の前景放射によるバイアスが含まれないと考えられるため、通常の方法と独立な観測方法として原始重力波の検証に利用可能だと考えている。様々な将来観測を想定した場合の、この新たな手法の原始重力波への感度について結果をまとめ、Physical Review Letters の論文として掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度も、本研究課題の目的である、Bモード偏光を用いた原始重力波検証における統計解析手法の開発に関し、研究していく予定である。最終年度は、より現実的な状況下での delensing に関する研究を引き続き行う。特に地上実験である Simons Observatory (SO) における delensing について研究を行う。Namikawa et al (2022) では、SO を想定したシミュレーションを用い、delensing の効率を見積もったが、前景放射の取り扱いは行わなかった。本年度は、前景放射までを取り入れ、近々解析が始まる SO SAT を想定した delensing に関する研究を行う。また別の研究の方向として、重力レンズを受けた原始重力波由来のBモード偏光を用いた新たな手法について、どのような観測を想定すれば原始重力波に対する感度が向上するかなど調べる。2023年度に発表した Namikawa & Sherwin (2023) では、観測されるBモード偏光の不定性の取り扱いが単純化されていた。最終年度は、より具体的な観測セットアップを想定し、観測されるBモード偏光における不定性の取り扱いを改善し、より現実的な原始重力波への感度を見積もる。
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