研究課題/領域番号 |
22K03683
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鮫島 寛明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10748875)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 活動銀河核 / 化学進化 / 初期宇宙 / 第一世代星 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は遠方クェーサーの近赤外線スペクトルからマグネシウムと鉄の組成比[Mg/Fe]を推定し、星形成史を仮定した化学進化モデルと比較することで、初期宇宙における星形成史について観測に基づく制限を加えることを目的としている。TAO望遠鏡建設前は既存の共同利用望遠鏡やアーカイブデータを用いることで小サンプルによるパイロット的調査を進める他、予定されているTAO望遠鏡観測に向けた体制を整える。TAO望遠鏡完成後は遠方クェーサーの網羅的な近赤外線分光観測を主導し、統計的に十分なサンプルを収集した上で初期宇宙の星形成史を調査する他、観測データの公開に向けた環境構築にも取り組む。
|
研究実績の概要 |
宇宙の歴史の中で、星や銀河がいつ、どのようにして生まれたのかを明らかにすることは、現代天文学が抱える最重要課題の一つである。本研究は、宇宙で最も明るい天体のクェーサーを観測対象とし、はるか遠方にあるクェーサーから太古の昔に放たれた光を解析することで、星を生む源であるガスの初期宇宙における化学性質を直接調査し、この課題の解決を目指すことを目的としている。 本研究は(1)TAO望遠鏡完成前、(2)TAO望遠鏡完成後の2つのフェイズからなるが、当初予定していた2023年内のフェイズ(2)への移行はTAO望遠鏡建設工事の遅れ等により2025年以降へと変更され、本研究を遂行する上で欠かすことのできないTAO望遠鏡による観測はやむを得ず延期となった。そこで本年度はTAO望遠鏡完成後の効率的な観測の実施を目的として、TAO初期観測装置として予定されている近赤外線分光器NICEの開発グループと協力し、性能評価実験やデータ解析自動化プログラムの作成に取り組んだ。前者について、具体的には取得データの質を高めるためのスリット形状の検討、黒体炉を用いたシステム効率の測定、またそれを元にしたTAO望遠鏡搭載時に必要となる露光時間推定プログラムの制作に着手した。これは今後の遠方クェーサー観測計画を立てるための前段階として、重要な調査となっている。後者は特にNICEのような複雑なデータを出力するエシェル分光器では重要であり、これまでの手作業での解析で特に手がかかる作業であったスペクトル抽出範囲の指定の自動化に成功した。手作業では数日かかるデータ解析を可能な限り自動化することは、今後予定しているTAO望遠鏡での系統的観測を現実的に遂行する上で極めて重要である。このように、将来のTAO望遠鏡による系統的な観測に向けた体制づくりを着実に進めることができている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初TAO望遠鏡での本格的な科学観測開始は2023年を予定していたが、建設工事の遅れ等により2023年度が終了した現時点で2025年以降に延期された。このため、本研究で欠かすことのできないTAO望遠鏡を用いた遠方クェーサーの新たな観測データ取得は約2年の遅延を余儀なくされ、未達成のままである。 このため現在は、TAO望遠鏡完成後の観測計画遂行の効率化を目的とした装置の実験およびデータ解析環境構築に注力している。具体的にはTAO初期装置である近赤外線分光器NICEの開発グループと協力し、室内実験を実施して性能評価を行っている。この結果を元にTAO望遠鏡搭載時の性能の予測を行い、将来の観測計画の立案を進めている。また科学面では、新たな観測データを使わずに進められるシミュレーションを対象として、精度向上に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は(1)TAO望遠鏡完成前、(2)TAO望遠鏡完成後の2つのフェイズからなり、当初は2023年に(2)のフェイズに移ることを想定していたが、建設工事の遅れにより2025年以降へと延期になった。TAO望遠鏡を使ったデータ取得が大幅に遅れるという状況を踏まえて、今後の方策として望遠鏡完成後の観測を効率的に行うための環境構築に引き続き取り組む。観測時間の見積もりに必要な装置の性能評価に関する項目としては、データの質向上を目指した新しいスリットの搭載に伴い、実際に新スリットを設置した上でのシステム全体の効率の測定を行う。また観測開始後に得られる大量のデータの自動解析に関する項目としては、スペクトル抽出範囲の指定と並んで手間がかかる波長校正について、自動化が可能かどうかを調査する。 また科学面での方策として、本研究の土台となる化学組成導出法の洗練化に取り組む予定である。これはシミュレーションであり、観測データがなくても進めることができる活動である。化学組成導出においては公開されている光電離シミュレーションコード Cloudy を利用しているが、このコードは毎年新たに機能拡張されたものが公開されている。特に近年の更新で本研究に関連した鉄の基本的な設定(具体的には準位の数)に変更があったため、これが化学組成導出にどう影響するかの調査を実施する予定である。
|