研究課題/領域番号 |
22K03690
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 昭宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (50647659)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ガンマ線バースト / 超新星爆発 / 宇宙ジェット / 相対論的流体力学 / 放射輸送 / 相対論 / 流体力学 / 輻射流体力学 / 流体シミュレーション / 高エネルギー天体 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙最大の爆発天体現象であるガンマ線バーストの発生機構は未だ謎に包まれたままである。ガンマ線バーストは光速の99.99%を超える速度で運動するジェットが大質量星を貫くことで発生すると考えられ、様々な波長の電磁波を放射することで知られている。 本研究では特殊相対論的流体力学シミュレーションによって大質量星の中でのジェットの伝搬を計算し、その結果に基づいた放射輸送計算を駆使して、ジェットの発生機構やジェット注入領域で起こる元素合成、さらに発生後に残されるコンパクト天体(中性子星やブラックホール)に制限を与えることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は、ガンマ線バースト(GRB)ジェットと星周物質の衝突過程についての研究を昨年度に引き続いて推進した。継続時間の長いGRBは重力崩壊する大質量星の鉄コアにおいて超相対論的ジェットが形成され、星を貫いた後にその力学的ネルギーを衝撃波などの過程で散逸させることでガンマ線から電波まで様々な電磁波帯で明るく輝く。即時放射のガンマ線光度が通常のGRBよりも4-5桁低い天体は低光度GRBと呼ばれ、その一部は相対論的ジェットが厚い星周物質に阻まれることで減速し、ガンマ線で暗くなると考えられている。 本研究課題では、このGRBジェットと星周物質との衝突過程の3次元特殊相対論的流体シミュレーションを初年度から行なっており、本年度までで異なる外縁半径や質量の星周物質を過程した全10モデルの計算および解析を終えた。その結果、GRBジェットの力学的エネルギーの散逸によって、星周物質の一部が準相対論的な速度にまで加速され、より球対称に近く相対論的速度で膨張する噴出物(相対論的エジェクタ)を形成することが分かった。複数のシミュレーション結果の解析により、相対論的エジェクタの密度構造は星周物質の外縁半径や質量にはあまり依らないことが分かった。これは厚い星周物質にGRBジェットが堰き止められた場合には、同じような構造のエジェクタが形成され、似た特徴を持つ電磁波放射が広い立体角に放射されることを示唆する。本年度はこの3次元流体シミュレーションの結果を解析するとともに、共同研究者との議論を経て結果を投稿論文にまとめる作業を行なった。現在論文は査読論文誌に投稿中である。 また、ジェットの力学的エネルギー散逸に伴う熱放射のシミュレーションを開始し、相対論的エジェクタを球対称で近似した1次元シミュレーションを実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガンマ線バーストジェットと星周物質との衝突シミュレーションは全10モデルの計算と計算実施後の解析等を終え、投稿論文にまとめられた。研究成果をまとめる過程において共同研究者と密に議論を行い、納得のいく内容となった。論文は査読論文誌に投稿済みである。 また、これに先立ち共同研究者である京都大学宇宙物理学教室の前田啓一教授の主著で、相対論的エジェクタを伴う超新星の光学スペクトル進化に関する研究が査読論文として出版済みである。 昨今の為替レートの状況やオープンアクセス化に伴う出版費用の高騰により、論文の投稿先について検討する時間を要するなどの問題もあった。 しかしながら、以上の状況から本研究課題が概ね順調に実施できているものと結論づけた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに実施した流体シミュレーションの結果に基づいた電磁波放射予測を行う。「研究実績の概要」で述べたように、GRBジェットが星周物質によって堰き止められたとき、散逸する力学エネルギーを駆動源とした相対論的エジェクタの形成が起こる。この相対論的エジェクタの密度や内部エネルギーの動径分布を球対称の下でモデル化し、1次元輻射流体シミュレーションを行うことで、この相対論的エジェクタからの熱的放射の予想を行う。この熱的放射は、ジェットの活動性がある超新星を光学観測から同定する際に重要となる。また、多くの低光度GRBでは、このような早期熱的放射が観測されており、複数のパラメータでの1次元放射モデルを実施しておくことで、発見された低光度GRBの観測的特徴から散逸したジェットのエネルギー等のパラメータを推測する上で役に立つはずである。 本年度末には中国が主導する軟X線サーベイミッションであるEinstein probeが打ち上がり、コミッショニング段階でありながらも突発天体アラートを提供し始めた。低光度GRBのようなX線突発天体の検出頻度や位置決定はこれにより大幅に改善されることが期待され、サンプル数の増加に追いつくべく理論モデル計算を推進する。
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