研究課題/領域番号 |
22K03712
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
八久保 晶弘 北見工業大学, 工学部, 教授 (50312450)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ガスハイドレート / メタンハイドレート / アイソトポログ / 安定同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
ガスハイドレートは地球上だけでなく、地球外の惑星・衛星等の天体表層にも存在しうる普遍的な物質である。本研究では、ガスハイドレート生成時に起こるゲストガス安定同位体分別に注目する。メタン等を包接するガスハイドレート結晶を人工的に生成し、質量分析装置を用いて各種ゲストガスの安定同位体分別を測定し、その温度・圧力依存性や不純物の影響等を定量的に明らかにする。また、異なる同位体分子種間のガスハイドレート平衡圧の差を精密測定により検出し、ゲストガス安定同位体分別との対応についても検証する。これらの情報は、天然ガスハイドレートの生成・維持・分解過程を理解するための基礎データとなる。
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研究実績の概要 |
ガスハイドレートは地球上だけでなく、地球外の惑星・衛星等の天体表層にも存在しうる普遍的な物質である。水分子で構成されるカゴ状結晶(ホスト)に包接されるガス分子(ゲスト)は、1分子ずつカゴに閉じ込められた気体分子のイメージがあるが、ゲスト・ホスト間の相互作用により、結晶生成時にホストだけでなくゲストにも安定同位体分別が起こることが知られている。このことを利用した、ハイドレート結晶生成時の環境復元や年代決定等のツールとなる可能性が模索されている。本研究では、ガスハイドレート生成時に起こるゲストガス安定同位体分別に関する実験を行った。 初年度は、メタン、窒素および空気(窒素+酸素+アルゴン)の3種類のガスを包接するガスハイドレート結晶を人工的に生成し、安定同位体質量分析装置を用いて各種ゲストガスに関する安定同位体比を測定した。メタンに関しては、その温度・圧力依存性が定量的に求められ、結晶生成時の圧力が安定同位体分別に影響することを初めて示すことができた。また、窒素に関しては、軽い分子を包接しやすいメタンとは逆に、重い窒素分子を包接しやすい傾向が明らかとなった。酸素やアルゴンを含む空気の場合、この窒素同位体分別の程度はやや低下し、分別しにくくなることも判明した。ほか、研究室で過去に採取された天然ガスハイドレートの包接ガスに関する分析等も実施し、天然環境下における安定同位体分別の検出が試みられた。これらの成果については雪氷研究大会2022・札幌にて学会発表を行い、また一部については査読付き論文として公表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の進捗状況としては、想定以上に進んでいる。メタンハイドレートのゲスト水素安定同位体分別については、先行研究で得られていた温度範囲をさらに拡張し、223.3-268.2 Kの範囲で実験を行った。同じ生成圧力下では、温度が低いほど、わずかながら水素安定同位体分別が大きくなる結果を得た。また、1.7-19.5 Paの広い圧力範囲でメタンハイドレートを生成し、同じ生成温度では生成圧力が増加するほど水素安定同位体分別は小さくなる、との結果を得た。このことは、結晶生成時の成長速度の違いに起因するものではないことも確認された。 一方では、窒素および空気(窒素+酸素+アルゴン)中の窒素に注目した安定同位体分別実験も実施されている。メタンとは異なり、重い窒素(14N15N)が選択的にハイドレート相に包接されやすい傾向が定量的に明らかにされた。また、空気の場合はその安定同位体分別が純粋な窒素よりもやや小さくなることも確認され、主として酸素が存在することによるものと考えられる。 ゲスト安定同位体分別についてこれまでに得られた成果は、既に2報の査読付論文に掲載されている。また、本研究によって整備されたガスハイドレート生成システムおよびガス分析測定ラインを利用して、関連するガスハイドレート分析が実施されており、他の2報の査読付論文で研究成果が公表されている。本研究に関連する内容については、第31回日本エネルギー学会大会および雪氷研究大会(2022・札幌)にて、計10件の学会発表がなされている。
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今後の研究の推進方策 |
メタンハイドレート生成時のゲストガス安定同位体分別について、温度・圧力依存性が明らかにされたことを受けて、他のゲストガスでも同様の傾向があると予想されるため、他の炭化水素やCO2等についても生成圧力を変化させた実験を実施する。また、ガスハイドレート結晶構造は大ケージと小ケージの組み合わせからなり、それぞれのケージがゲスト安定同位体分別に及ぼす影響は異なると予想される。そこで、大ケージのみに優先的に包接されるゲスト(THF、THP、シクロペンタン等)との混合系でガスハイドレートを生成し、ケージサイズごとの安定同位体分別を実験的に求め、ケージサイズが分別に及ぼす影響を評価する。空気ハイドレートについては、窒素・酸素組成を変化させて結晶を生成し、窒素安定同位体分別のガス組成依存性を明らかにする。 また、N2O(亜酸化窒素)ハイドレートの生成に近年取り組んでいる。N2Oの窒素同位体比を測定するためのメソッドについて技術的な検討を重ねており、N2Oハイドレート生成時のゲスト窒素同位体分別に関する予備実験は既におおむね成功している。N2O分子は生成圧力によって水和数が大きく変わる特性を有するため、あらゆる温度・圧力環境下で結晶を生成し、ゲスト窒素同位体分別の圧力依存性について定量的に求める実験を実施予定である。 その他、ガスハイドレート平衡圧測定についても合わせて実施し、アイソトポログ間のガスハイドレート平衡圧の違いに関する定量的データを得る。また、これらの結晶特性についても、ラマン分光分析等の結晶解析により明らかにする。
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