研究課題/領域番号 |
22K03713
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
大野 浩 北見工業大学, 工学部, 准教授 (80634625)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | アイスコア / ガス分別 / フィルン / 古環境復元 / 南極 |
研究開始時の研究の概要 |
極地氷床で採取されたアイスコアに含まれる大気成分の酸素と窒素の濃度比(O2/N2)は,雪が堆積していた当時の日射量の指標として古気候研究に利用されているが,O2/N2シグナルの形成メカニズムの詳細は明らかになっていない. 本研究は,申請者らが開発した手法(回転ラマン分光法を応用したアイスコア中空気含有物の高感度測定法)を用いて南極浅層コアに含まれる気泡のO2/N2を分析するとともに,コアのX線CT画像から気泡の分布を求め,それらの深さ(時間)変化を調べることで,氷床表層部における気泡-空隙間のガス分別現象がO2/N2シグナルの成因とする仮説を検証する.
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研究実績の概要 |
当初は回転ラマン分光法を応用して南極氷床フィルン中の独立気泡のガス分析を行う予定であったが,その後雰囲気ガスをラマン不活性のアルゴンに置換してバックグラウンドノイズを抑えることで,通常の振動モードでも十分精度の高い測定が可能であることが明らかになったので,作業効率に優れる振動モードを用いて研究を進めた. 南極内陸部で掘削されたDFS10浅層コアの氷化深度付近に含まれる気泡1つ1つの窒素酸素比(N2/O2)を顕微ラマン分光法で分析するとともに,マイクロフォーカスX線CTを用いて当該深度における気泡の空間分布を調べた.その結果,理論的研究で予測されていたような極端にガス分別が進行した微小気泡(マイクロバブル)が存在することを確認した. マイクロバブルのラマン散乱強度はマイクロバブルの内圧が比較的高いこと示唆しており,マイクロバブルはノーマルバブルよりも早い段階で氷床に取り込まれた(より浅部で形成された)と考えられる. また本研究で得られたマイクロバブルのガス組成やマイクロバブルの体積密度の値を用いて,マイクロバブルの存在がガス組成に全体に与える影響を定量的に評価したところ,δO2/N2が-13.7~-24.9‰変化すると見積もられた.この変化量は氷床深部で認められる酸素窒素比シグナル(アイスコアの年代軸調整に用いられる)の変動幅と同程度であることから,マイクロバブルによるガス分別効果は無視できないレベルにあることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顕微ラマン分光法によるフィルン中独立気泡のN2/O2分析を予定通り実施できており,マイクロバブルのガス分別現象の実験的検証や,マイクロバブルの存在がガス組成全体(気候シグナル)に与える影響の定量的な評価に至っている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究により,極端にガス分別が進行したマイクロバブルの存在が氷化深度付近で見いだされ,マイクロバブルにおけるガス分別現象はトータルのガス組成(気候シグナル)に有意な影響を与えていると考えられる. マイクロバブルは表面積雪の段階ですでに含まれる微小な気泡とされているが,その形成メカニズムや分布状態はほとんど分かっていない.そこで先ずは南極ドームふじ基地周辺で採集した表面積雪中にマイクロバブルがどの程度またどのように含有されているのか,X線マイクロCTを用いて調べる予定である.続いて,マクロバブルのガス組成や分布が氷床表面から深さ(時間)とともに変化する過程を,光学顕微鏡観察や顕微ラマン分光分析で明らかにしたい.
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