研究課題/領域番号 |
22K03720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川野 哲也 九州大学, 理学研究院, 助教 (30291511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 線状降水帯 / バック・ビルディング / メソ対流系 / 豪雨 / 多重バック・ビルディング |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,極めて湿潤な環境である日本の梅雨期に広範囲の豪雨をもたらす多重バック・ビルディング型(バック・ビルディング型とは,新しい積乱雲が風上側で次々に発生し,発達しながら風下に流されて列状に組織化する構造を持つもの)の線状降水帯の構造および発生・発達過程を明らかにし,その普遍的モデルの構築を目指すものである。線状降水帯の多様性を認識し,多重バック・ビルディング型の線状降水帯を単一バック・ビルディング型の線状降水帯とは違う構造を持つものとして,その構造および発生・発達過程を明らかにするという点は新しい視点であり,線状降水帯に関する新たな知見が得られることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,水平解像度1km以下の超高解像度数値シミュレーションを実施し,豪雨をもたらす線状降水帯,その中でも特に「多重バック・ビルディング 型」の線状降水帯の構造および発生・発達過程を解明することである。2年目にあたる令和5年度は主に以下の3つのアプローチで研究を行った。 1) 初年度から継続で,過去16年間の気象庁解析雨量をもとに,大雨をもたらすメソ対流系を客観的に抽出し,気象庁レーダーからそれらメソ対流系の形態分類を行った。今年度はメソ対流系の重心位置,長軸長,短軸長,移動方向および移動方向に対して長軸がなす角などのメソ対流系の特徴を抽出できるフリーソフトウェアPyFLEXTRKRを用いて客観的分類を行った。初年度に行った主観的な手法による分類をおおよそ支持する結果を得た。 2) 梅雨期に大雨をもたらす降水システムの雲微物理直接観測と数値シミュレーションの両面から,線状降水帯のような局所的に強い降水をもたらす雲内には,雹もしくはそれに相当するような密度の大きな霰が存在していることが示唆された。 3) 2023年6月2日に梅雨前線と台風2号に関連して発生・発達した複数の線状降水帯の数値シミュレーションを実施した。気象庁レーダー観測によれば,四国地方と東海地方に発生した線状降水帯は異なる特徴を持っていた。四国地方の線状降水帯は,多重バック・ビルディング型のような特徴を示し,東海地方の線状降水帯は東西方向に伸びる単一の強い対流域を持っていた。数値シミュレーションの結果から,これらの違いは主に風場の違いを反映していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体としては順調に進んでいる。 2023年6月2日に梅雨前線と台風2号に関連して発生・発達した複数の線状降水帯の数値シミュレーションを実施し,再現性の高い結果を得た。同じような環境条件で発生した線状降水帯も関わらず,多重バック・ビルディング型のような形態を示す場合と,そうでない場合とがあることが示された。これらの環境場の違いを詳細に調査することによって,多重バック・ビルディング型が発生しやすい環境条件を特定できることが期待される。 しかしながら若干の遅れもある。当初予定していた水平解像度1km以下での数値シミュレーションでは,再現性の低い結果しか得られておらず,この解像度では多重バック・ビルディング型線状降水帯のより詳細な内部構造を理解することが困難である。さらに高解像度で再現性の高い数値シミュレーション結果を得ることが望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年6月2日に梅雨前線と台風2号に関連して発生・発達した複数の線状降水帯の数値シミュレーション結果の詳細な解析を進め,多重バック・ビルディング型線状降水帯の発生環境場を特定する。 その結果の普遍性を確認するため,他事例についての解析も並行して行う。
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