研究課題/領域番号 |
22K03723
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
神 慶孝 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主任研究員 (30749718)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | エアロゾル / 雲 / ライダー / 混合相雲 / 氷晶核 / ライダ |
研究開始時の研究の概要 |
大気エアロゾルの気候影響は最新のIPCC報告書においても不確定性が大きく、その主な要因はエアロゾル-雲相互作用の理解不足にある。とりわけエアロゾルの混合相雲への影響については現行の気候モデルで取り扱われておらず、エアロゾル-混合相雲の物理過程の解明は最重要タスクの一つとなっている。しかし、測定方法の制約により現状では観測研究が圧倒的に不足している。一方で、申請者が開発を進めてきたアクティブセンサ(ライダ)により、エアロゾル・雲鉛直分布の定量的な観測が可能となった。そこで本研究では、エアロゾルと混合相雲のアクティブセンシングを通じて、日本上空の混合相雲内における氷晶形成メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、エアロゾル・雲のアクティブセンシング(ライダー観測)を通じて、混合相内における氷晶形成メカニズムを明らかにすることを目指している。令和4年度では、エアロゾル・雲・気象要素の鉛直分布を同時に測定するライダーシステムの開発を進めた。エアロゾル・雲の消散係数や有効半径を計測する高スペクトル分解ライダー技術と、気温・鉛直流を計測する直接検波方式のドップラーライダー技術を組み合わせた新しいライダーシステムを考案し、設計と誤差シミュレーションを行った。新システムによって、エアロゾル・雲が存在する高度でも気温や鉛直流を十分な精度で測定可能であることがわかった。また、これまで国立環境研究所で開発されてきた高スペクトル分解ライダーを用いて雲・エアロゾルの鉛直プロファイルの連続観測を実施し、データ解析を進めた。ライダー観測信号から雲とエアロゾルの消散係数・ライダー比(消散係数/後方散乱係数比)・偏光解消度などの光学特性を抽出し、1年間データセットを構築した。ライダー比と偏光解消度の2次元ダイアグラムの分布を非球形散乱理論による計算結果と比較することによって、氷粒子の形状が推定できることが示唆された。また、エアロゾルについては消散係数を大気中の主要なエアロゾル種(鉱物ダスト、ブラックカーボン、海塩粒子、大気汚染粒子(硫酸塩など))に分離し、各エアロゾル種の重量濃度の推定を行った。種類別エアロゾル濃度の鉛直プロファイルの観測により、氷雲が存在する高度(対流圏中層・上層)におけるエアロゾルの多くは鉱物ダストであることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、エアロゾル・雲の光学・微物理特性と気象パラメータの鉛直分布を測定するライダーシステムの開発が重要となる。令和4年度では、これまで国立環境研究所で開発してきた高スペクトル分解ライダーを用いて雲・エアロゾルの消散係数や後方散乱係数、偏光解消度などの光学特性の連続観測を行った。エアロゾルについては多波長データと偏光解消度を組み合わせて鉱物ダスト、ブラックカーボン、海塩粒子、大気汚染粒子に分離し、各エアロゾル種の重量濃度の抽出に成功した。さらに、エアロゾル・雲が存在する高度において気象パラメータを測定するための新しいライダー手法を考案した。従来の高スペクトル分解ライダーで測定する大気分子からのレイリー・ブリルアン散乱をイメージング干渉計を使って分光することにより、ドップラー拡がり幅から気温を、ドップラーシフト量から鉛直流を測定する。従来手法ではエアロゾルや雲からのミー散乱によるコンタミネーションがあり気温・鉛直流を同時に計測することは困難であったが、本手法で十分な精度で測定可能であることがわかった。また、現在設計に基づいて気象パラメータを測定するライダーシステムを構築中であり、令和5年度には混合相雲シーンの計測と測定データを用いた解析が可能になると思われる。以上の理由から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度で設計を進めたライダーシステムを構築し、雲・エアロゾルの光学特性・微物理特性に加えて気象パラメータ(相対湿度・鉛直流)のライダー観測を行う。また、雲の有効半径を測定するため、雲の多重散乱を捉えるための広視野ライダーによる観測を行う。これらのライダー観測データを解析して、雲・エアロゾルおよび気象パラメータの鉛直プロファイルのデータセットを構築する。その後、データセットを用いて以下の解析を進める。 1)上空の気温が0度以下の時に過冷却雲と氷雲がどの割合で存在しているかを調べるため、気温毎の過冷却雲・氷雲の存在比を計算する。エアロゾルの種類に応じた氷雲存在比の違いや季節毎の特徴を明らかにする。 2)エアロゾルが氷雲の微物理特性に与える影響を明らかにするため、エアロゾルの濃度や有効半径と氷雲の消散係数や有効半径について相関関係を調べる。 3)気象パラメータが氷雲形成にどのような影響しているのかを明らかにするため、相対湿度と鉛直流によって氷雲形成の条件がどのように変わるのかを調べる。 さらに、ライダー観測で得られた氷雲/水雲存在比や氷晶核として機能する鉱物ダスト濃度などを全球エアロゾル気候モデルでシミュレーションと比較し、気候モデルにおける氷晶形成プロセスを評価することを検討している。
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