研究課題/領域番号 |
22K03729
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
和川 拓 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主任研究員 (10601916)
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研究分担者 |
川口 悠介 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (00554114)
乙坂 重嘉 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (40370374)
井桁 庸介 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 主幹研究員 (50444138)
坂本 圭 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (60589860)
広瀬 成章 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 研究官 (20748074)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 沿岸-沖合相互作用 / 低塩水 / 高気圧性渦 / 基礎生産 / 数値モデル実験 / セジメントトラップ・乱流系観測 / 日本海 / 対馬暖流 / 現場観測 / 渦 / 2km格子数値モデル / ADCP・セジメントトラップ係留系 / 水中グライダー |
研究開始時の研究の概要 |
海への河川水流出は、塩分や栄養塩の輸送におけるインパクトが大きく、水塊分布や物質循環の変動要因となっている。申請者は最近、春先の基礎生産力では親潮域にも匹敵する佐渡島沖合域において、河川水が由来と考えられる分厚い低塩水を初めて観測した。本研究は、この河川水の沿岸域から沖合域への流出過程を新たに探求する。まず、粒子追跡実験により、河川水の供給源域・流出時期・量を特定する。次に、数値実験より、沖合流出の物理機構を明らかにする。さらに、係留系観測を実施して、河川水の生物生産への影響を定量的に評価する。そして、低塩水の流出経路を数値モデルで予測し、そこに機動的にグライダーを向かわせて実証観測も行う。
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研究実績の概要 |
低塩水による生物生産・物質循環への影響を定量的に評価するため、表層から沈降移動する物質フラックスや、捕集される粒子の質の時間変化の情報を取得することを目的に、2022年6月に佐渡島沖合域に設置したセジメントトラップ搭載の係留系を、2023年6月に回収することに成功した。 水深908mのセジメントトラップで計測された全粒子束は冬季と春季の2度の極大を示した。冬季の沈降粒子の約6割は陸起源ケイ酸塩で構成されており、12月頃より顕著な増加がみられる陸起源ケイ酸塩の鉛直輸送が、冬季の高い全粒子束の要因であった。一方、春季には生物起源ケイ酸塩と有機物粒子が支配的で、この時期の珪藻類の活発な生産によるとみられる高いオパール粒子束と、それに伴う有機物粒子束の増加が春季の全粒子束の増加要因といえる。 本観測で得られた粒子中のLa/Yb比は、大和海盆の西部及び北部で得られた粒子に比べて有意に低く、日本海盆東部の値と同等の値を示した。沈降粒子に見られる陸起源ケイ酸塩の特徴は、海盆スケールで決定されるものではなく、概ね数100 kmの範囲内での陸棚域の特徴を反映させることがわかった。 従来は観測により把握することが難しかった、台風の影響下での内部波の挙動については、佐渡沖の係留点で得られた流速計のデータを解析し、台風が日本海を通過する際に励起する海面近くの内部波が、中規模渦や波の分散特性に従いながら様々な速度で中・深層の領域まで到達する様子が示された(Kawaguchi et al., 2023)。特筆すべきは、台風の通過後に1週間以上経った後で最大のピークが観測された点である。この現象は、台風に起因する内部波が台風通過後もしばらくの間一定程度の影響力を持ち続け、栄養塩や酸素の鉛直輸送を通して海洋生態系への影響にタイムラグを生み出す可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数値モデル実験結果の解析は順調に進められている。沿岸水の沖合輸送と高気圧性渦の関係、基礎生産へのインパクトなどを示した研究成果をまとめた学術論文を投稿し、現在リバイス中である。 セジメントトラップを搭載した係留系は2023年度に無事に回収し、成功に終わった。 コロナ禍とロシア情勢悪化による人員不足・物資不足・物流停滞の影響を受け、2022年度は米国におけるグライダーの整備業務が完全にストップしてしまう事態に陥り、2023年春季のグライダー観測は実施できなかった。2023年度にメーカとの度重なる相談・調整を繰り返した結果、グライダー観測を実現できる見込みが立った。2024年4月にグライダーを投入し、現在観測中である。
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今後の研究の推進方策 |
係留系に搭載してあったADCPの後方散乱データより、サブメソ-メソスケール現象の変動に伴う動物プランクトンの日周鉛直運動や現存量の変動を解析する。 2024年の低塩水の流出経路を数値実験で予測し、その現場へグライダーを機動的に向かわせて水温・塩分・溶存酸素・クロロフィルa・光量の観測を実施し、係留系データとも合わせて相補的に解析し、移流拡散過程・量の実証を行う。 数値モデルによる粒子追跡実験を行い、低塩水の供給源域と沖合流出時期を特定し、中部・東部日本海における沿岸-沖合間の低塩水供給システムを明らかにする。
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