研究課題/領域番号 |
22K03730
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 努 東北大学, 理学研究科, 助教 (50321972)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 石筍考古学 / 古代人 / 洞窟利用 / 鍾乳石 / 洞窟堆積物 |
研究開始時の研究の概要 |
人類は古代から住居や祭祀の場として洞窟を利用しており,その痕跡は洞窟内の堆積物中に残されていることも多い.洞窟が鍾乳洞の場合には,砂礫などの堆積物のみならず,鍾乳石中に痕跡が残されていることが期待される.本研究では,岩手県および宮城県の鍾乳洞内の堆積物(特に鍾乳石)中に残された煤などの古代人による洞窟利用の痕跡の年代を明らかにし,また鍾乳石から周辺環境についての情報を抽出して,これらを合わせることで,縄文・弥生人などの古代人が洞窟をどのような時期にどのように利用していたのかを明らかとし,古代日本人の生活様式の一端を紐解く.
|
研究実績の概要 |
2023年度は,岩手県紫波郡紫波町の船久保洞窟および下閉伊郡岩泉町の喜惣治穴を調査・研究対象とした.船久保洞穴ではすでに黒色の薄層(主に煤起源)を含む鍾乳石を採取してあり,これらの分析を進めた.喜惣治穴にも黒色層を含む鍾乳石が存在する可能性があるので秋に調査を試みたが,冬眠準備中の複数の熊が出入りしていることがわかり,洞内奥部の調査を中止した. 船久保洞窟では古代人の生活の一端を解き明かすため,洞内の3D計測を行った.また,一部洞外の3D計測も行った.これら3D計測データは現在解析中である.また,船久保洞窟で採取した多数の黒色薄層を含む石筍について,これら薄層の肉眼・顕微鏡観察を行った.成長中心付近における薄層は,100から200 マイクロメートル程度の厚さのものが多いが,より薄い層や厚い層も認められた.さらに石筍を構成する方解石結晶の累積構造が変化することに着目して,その時系列変化と形成環境の変化との関係を解き明かすために,観察を行っている.U/Th年代測定を行う予定であったが,昨年度以降も円安が進行して測定費用が大幅に上昇して年代測定部位および数の再検討を余儀なくされこと,上記の結晶累積構造の観察を行った後に年代測定用試料を分取する必要が生じたことなどから,U/Th年代測定は2024年度に行うこととした. 煤などによる黒色層を含む鍾乳石の研究は主に東欧で行われていたが,近年はフランスなどでも多くの研究が行われるようになってきた.それら最新の研究成果についての紹介と本研究の概要をまとめて,考古学ジャーナル誌に寄稿した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度には鍾乳石・黒色薄層の年代測定を行う予定であったが,以下の主に2つの理由によって当初の計画を変更した.円安が著しく進行して海外発注する予定のU/Th年代測定の価格が大幅に上昇し,当初予定していた年代測定の部位および数量の見直しが必要となったこと.鍾乳石の結晶累積構造と形成環境との関係に着目した観察・分析を行うことにしたために,年代測定用試料の分取を後回しにしたこと.
|
今後の研究の推進方策 |
船久保洞窟の石筍については,黒色薄層および結晶累積構造の観察・分析を速やかに完了し,その後形成年代の測定用試料分取と測定の発注を速やかに進める.また,舟久保洞窟洞外の3D計測を完了するとともに,洞内・洞外の#D計測データを統合・解析を行う.さらに,喜惣治穴をはじめとする他の洞穴における鍾乳石・洞窟堆積物の調査も適宜進めて,計画の遅れを少しでも取り戻したい.
|