研究課題/領域番号 |
22K03740
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 公益財団法人深田地質研究所 |
研究代表者 |
千木良 雅弘 公益財団法人深田地質研究所, その他部局等, 主席研究員 (00293960)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 花こう岩 / 冷却節理 / 岩塔 / 岩海 / 球状風化 |
研究開始時の研究の概要 |
花崗岩は,岩塔や岩海などの特徴的な地形を作ることが古くから知られているが,その成因の詳細は明らかになっていない.本研究では,花崗岩に柱状の節理が一般的に形成されること,そして,その形成が岩塔や岩海の素因になっていることを明らかにする.つまり,岩塔と岩海には,柱状節理に起因するものが一般的にあることを示す.そのために,岩塔や岩海の分布域と周辺において,これらの地形と節理,岩石の風化状況を3次元的に調査研究する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,花崗岩の冷却に伴って柱状の節理が一般的に形成されること,そして,その形成が岩塔や岩海の素因になっていることを明らかにすることである.さらに,1つの花崗岩体の冷却に伴って,どこにどのような節理が形成されるのか明らかにすることである。そのために,ドローンを使って節理の3次元的研究を行ってきた。2023年度終了時までの研究によって,花崗岩の冷却節理として柱状節理が一般的であることを示すことができた。また,それは花崗岩体の上部,つまりバソリスのルーフ直下に発達するらしいこと,その下には節理の少ない塊状部分があると見込まれることを明らかにした.具体的には次の通りの成果を得た。 ・一つの花崗岩体で,ルーフを有している岩体は少なく,宮崎県の中新世花崗岩体の大崩山はその一つである.この岩体の節理構造を明らかにした.つまり,岩体中心部には柱状節理はなく,塊状あるいは間隔の粗い平行節理が発達し,ルーフ直下とウォール近傍には,それぞれ高角と低角の軸を持つ柱状節理があることがわかった.このことは,花崗岩体の節理構造として初めて報告されたものであり,また,一般的であると推定される.結果はIsland Arcに掲載された. ・オーストラリア北東部には,高さ300mにもおよぶ花崗岩塊の山があり,この岩塊の鉱山を調査し,その特異な形態が花崗岩の柱状節理にあると推定した. ・鹿児島県の中新世屋久島花崗岩体および高知県の中新世沖ノ島花崗岩,愛媛県の中新世宇和島花崗岩の節理構造の調査を行った。その結果,花崗岩体とルーフおよび柱状節理の形成場との関係について,大崩山の場合と整合的な見通しが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は,花崗岩に柱状の節理が一般的に形成されること,そして,その形成が岩塔や岩海の素因になっていることを明らかにすることである.つまり,岩塔と岩海には,柱状節理に起因するものが一般的にあることを示すことである.そのために,岩塔や岩海の分布域と周辺において,これらの地形と節理,岩石の風化状況を3次元的に調査研究している。本補助金研究開始前には,甲府花崗岩体の瑞牆山で岩塔が花崗岩の柱状節理に起因していることを明らかにしており,さらに,2022年度には,甲府花崗岩体の地蔵が岳オベリスクも柱状節理に起因していることを明らかにした。また,広島県呉市の天狗岩では,高標高部に高角の共役節理に囲まれた岩塔群があるが,その下位の低標高部は,これらの節理は連続せず,塊状であることが明らかになった。つまり,これらの共役節理は花崗岩の冷却時にルーフ近くに形成されたものであることがわかった。2023年度には,ルーフを有する大崩山花崗岩岩体の節理を調査し,ルーフとウォール近傍には柱状節理が発達するのに対して,中心部では塊状あるいは間隔の粗い平行節理を持つ花崗岩が分布することが明らかになり,この結果は雑誌Island Arcに掲載された.さらに,オーストラリアのブラックマウンテンでは,花崗岩の岩塊からなる高さ300mにも及ぶ山があり,この山の形態を調査し,成因を検討した.このように,本研究は,初期の目的に向かって順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
屋久島の花崗岩体で岩体の相対的な位置による節理構造の違いを明らかにする.予察的調査によれば,屋久島の花崗岩体ウォール近傍では,一旦形成された石柱が後のマグマの侵入に伴って回転しているらしい明らかになっている.これと同様の現象は,アフリカのナミビアのスピッツコッペにもある可能性が衛星画像解析からわかっており,この花崗岩体を調査する.さらに,花崗岩の岩塔が林立する金峰山の近くに広がる岩海の形態調査を行う.これらの研究を総合することによって,花崗岩体の冷却,節理の形成,岩塔や岩海の形成が一連の現象として理解できることが期待される。
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