研究課題
基盤研究(C)
釧路市春採湖の湖底堆積物には,年縞堆積物と津波堆積物が共存する上に,広域テフラも数多く挟在することから,地震津波の発生年代を年縞ラミナを用いて高精度に決定できる可能性を秘めている.特に17世紀,12-13世紀,8-10世紀に発生したと推定されている地震津波は地殻変動を伴うことから千島海溝で発生した超巨大地震(17世紀型)(Mw8.8~)が起源と推定されており,その正確な発生年代や再来周期の確定は急務である.
春採湖は,北海道釧路市の太平洋岸に位置する海跡湖であり,満潮時には春採川を通じて海水が入りこむ汽水湖でもある.縄文海進時にはエスチュアリーから内湾環境であったが,その後湾口の千代の浦に砂州ができて,現在のような湖になったことが知られている.さらにその湖底には,22層におよぶ津波堆積物が存在することが,我々が過去に行った氷上ボーリング調査によって明らかにされている.この科研費研究では,近現代に発生した大津波によって海跡湖周辺の環境がどのような地形変化を受け,どのような環境変遷をたどったのかを年縞ラミナを用いて検討を行っている.当初の予定通り,2022年8月1日から14日に,春採湖において採泥調査を行った.まず最初に塩分濃度や湖底地形の測定を行った.その後,太平洋に近い春採湖西部の3地点においてマッケラスピストンコアラーを用いて柱状堆積物試料を採取した.春採湖の湖底堆積物の多くは縞状または塊状の泥層を主体とし,前者は年縞ラミナであることが既に判明している.今回採取した3本の堆積物コアでは,3層の海成砂層と道南の北海道駒ヶ岳火山起源(Ko-c1, Ko-c2)や樽前火山起源(Ta-a, Ta-b)の複数のテフラが挟在されることが確認された.これらのうち厚い海成砂層は12/13世紀と17世紀に発生した巨大地震による津波堆積物(GTS1およびGTS2)に対比されると考えている.最上部の砂層は1843年天保地震津波の痕跡と予想している.これらの柱状堆積物試料に対し,25 cm長のスラブ堆積物毎に軟X線写真を撮影し,津波堆積物およびその間の堆積物の堆積構造を精査した.また,スラブ採取後の堆積物試料を1 cm間隔で分取し,珪藻分析を行った.現在のところ,津波堆積物の直後では淡汽水生のCyclotella属が多く見られたが,その後減少したことが判明している.
3: やや遅れている
2022年8月上旬に春採湖において,マッケラスピストンコアラーを用いた柱状採泥を実施した.採取した3本の湖底コアは,釧路市立博物館において1次処理を行い,現在ふじのくに地球環境史ミュージアムに保管されている.現在,AMS14C年代測定,珪藻分析,花粉分析を平行して実施しており,2023年5月に開催されるJpGUにおいては,これに関する4件の成果発表を行う手筈となっている.一方,当初計画では,採取したコアは高知大学海洋コア国際研究所において非破壊分析を実施する予定であったが,ITRAXが故障したため,分析作業を1年間遅らせることになった.また,今回我々のコアリングの前に予察で行った湖底地形調査の結果,大規模な浚渫工事が実施されたことが明らかになった.この工事の子細については釧路市は事前に把握していなかった旨を回答してきている.その為,予定していた箇所でのコアリングは実施でき無かった.
今回採取した3本の堆積物コアでは,津波堆積物と推定される3層の海成砂層と道南の北海道駒ヶ岳火山起源(Ko-c1, Ko-c2)や樽前火山起源(Ta-a, Ta-b)の複数のテフラが挟在されることが確認された.これらの海成砂層は,下位から12/13世紀に発生した巨大地震による津波堆積物(GTS2),17世紀に発生した巨大地震による津波堆積物(GTS1),1843年天保地震津波堆積物に対比されると考えている.これらの柱状堆積物試料に対し,25 cm長のスラブ堆積物毎に軟X線写真を撮影し,津波堆積物およびその間の堆積物の堆積構造を精査した.現在,AMS14C年代測定,珪藻分析,花粉分析を平行して実施している.次年度は高知大学海洋コア国際研究所において,X線CTやITRAX等の非破壊分析を実施する予定である.その後の予定は,この結果を見て再検討する予定である.
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Nuclear Inst. and Methods in Physics Research, B
巻: 538 ページ: 173-178
10.1016/j.nimb.2023.02.015
GSJ地質ニュース
巻: 12 ページ: 0-0
巻: 11 ページ: 1-1
巻: 11 ページ: 0-0