研究課題/領域番号 |
22K03756
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
増田 俊明 静岡大学, 防災総合センター, 客員教授 (30126164)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 面構造 / 板状鉱物 / 長柱状鉱物 / マイクロブーディン構造 / マーチモデル / ジェフェリーモデル / フォンミーゼス分布 / 非共軸度 / 3次元応力 / 岩石の塑性流動 / 応力場での核形成 / 結晶軸の選択配向 |
研究開始時の研究の概要 |
岩石の塑性変形解析を高度化するためには3次元応力の定量化が必要不可欠である。3方向の主応力は差応力、圧力、応力比から算出でき、圧力は変成岩岩石学的方法で求まるので、本研究では差応力と応力比の定量化を通じて3次元応力解析を目指す。 本研究では差応力と応力比を推定できる既知の2つの方法(マイクロブーディン法、応力場での結晶核形成方位解析法)を駆使して3次元応力情報を積み上げる。結晶核形成方位解析法は顕著な変形を受けた岩石には適用できない、という弱点がある。本研究ではこの弱点を克服するためにマーチモデルとジェフェリーモデルを利用して3次元歪による鉱物の選択配向パターンの発展法則の構築にも挑む。
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研究実績の概要 |
本研究では歪速度を記述する連立微分方程式を直接解く方法を採用して解析を進めた。その第一歩として本年度は2次元の歪解析が可能な平面歪について検討した。非共軸度パラメターを含む連立微分方程式は直接解くことが可能で、歪楕円の形態(縦横比、長軸の方向)を非共軸度パラメターの関数として表すことが出来た。その式を利用して、板状鉱物の選択配向として現れる変形変成岩の面構造の発達過程と歪楕円及び非共軸度との関係についてマーチモデルを用いてシミュレーションを行った。選択配向の強度はフォンミーゼス分布の集中度係数で定量化し、歪楕円の形態は縦横比と長軸の方位で定量化した。その際、ランダムな配列に関しても多数の乱数を発生させて、そもそもランダムとはどんな分布なのかに関しても検討した。本来完全に均質に分布している粒子は集中度係数がゼロになるが、ランダムな配列をした粒子群の集中度係数はゼロにはならない。このことは従来十分に配慮されていない事項であり、選択配向データの統計的検討が欠落している事を示している。 シミュレーションとは別に、実際の変形変成岩を用いて面構造の定量化の仕方を模索し、三河高原の領家変成岩、甲府花崗岩周辺の接触変成岩、丹沢山地の接触変成岩と結晶片岩について、現地を訪れ特に泥質変成岩を中心にサンプリングを行った。得られたサンプルを利用し、白雲母の結晶方位を(1)エックス線を利用して大量の粒子に対して行い選択配向パターンを把握する方法と、(2)SEM=EBSDを利用して個別の粒子の方位をそれぞれ計測し、それを多数の粒子に対して行い最後にすべてのデータをまとめて選択配向パターンを求める方法の2通りを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の沈静化に伴い、これまで控えていた野外調査に着手できる様になり、甲府、丹沢、三河高原の変成地帯にサンプリングに出かけ、実際の変形変成岩の面構造を定量化する作業を始める事が出来た。十分信頼できるデータを得るには、試料の研磨を丁寧にする事が必須である事がわかり、それなりの試行錯誤を行いつつある状況である。一方、変形シミュレーションはマーチモデルに関しては順調に進展し、年度末にはジェフェルーモデルでのシミュレーションも開始する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
選択配向に関するシミュレーションはほぼ順調に進展している。特に、ランダム分布を作るのに乱数を10個から順に増やして、最終的に100万個にまで増やす事が出来た。発生させる乱数の個数を増やせば集中度係数は減少する関係にある事は十分予測していたが、本研究で得られた結果は、両対数グラフで直線上にプロットされていた。又、マーチモデルによる結晶方位の変形による変化については、初期条件としていろいろな集中度係数を与えた場合でも、非共軸度(純粋剪断から一般非共軸変形を経て単純剪断に至るまでの範囲)には影響されない事がわかった。これは、粒子数を100万個まで増やして見出だした。なお、これ以上の数の粒子については、計算時間が膨大になるために断念した。 実際に調べた接触変成岩は領家変成帯三河地域の泥質変成岩と甲府花崗岩体の周辺の泥質変成岩、丹沢山地の結晶片岩とホルンフェルスである。選択配向パターンを計測する作業は、X線ゴニオメーターを使って白雲母について調べたが、思うようなパターンが得られなかった。白雲母についてはEBSDを使っても方位計測を試みたが、これに付いても思うようなデータが得られなかった。EBSD計測では、角閃石類のような比較的硬い鉱物の場合には特に工夫をしていなくても然るべきデータが得られた。雲母類の場合に満足できるデータが得られていない原因は試料の研磨法に問題があると考えている。すなわち、研磨装置を使って研磨する際に、鉱物表面を破壊している可能性がある。ダイヤモンドペーストレベルの細かさでは不十分だったので、その上にさらに2段階の細かいアルミナ懸濁液を利用して研磨を行ったが、行う時間や、試料に加える負荷が適切ではなかったと思われる。これについては試行錯誤を繰り返し、最適な方法(研磨時間・負荷の荷重)を見出だすつもりである。
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