研究課題/領域番号 |
22K03765
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
川田 佳史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(海底資源センター), 臨時研究補助員 (50402558)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 海底熱水循環 / 太平洋プレート / 地殻熱流量 / 数値計算法 / 有限要素法 / 有限差分法 / 陽解法 / プチスポット / 熱水変質作用 / 地震発生帯 / 沈み込み帯 / 数値シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
沈み込み帯の地震発生帯の振る舞いは断層の摩擦特性に影響される。摩擦特性を変える要素のひとつに地殻内の水がある。水は流れることが重要である。というのも、水循環は海底地殻を変質させるからである。日本海溝のような古い海底地殻では、降り積もった堆積物のために地殻内部と海とのつながりは絶たれるため、水循環は活発ではないとされてきた。しかし、最近見つかったプチスポットと呼ばれる新しい火山群の存在は、水循環を復活させるという意味でこの描像を一変させた。本研究では、プチスポット火山群を流れる水循環および水循環が引き起こす変質作用の数値モデリングを行い、沈み込み帯の近傍の水循環の全体像を掴むことを目標とする。
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研究実績の概要 |
太平洋プレートのような古いプレートが沈み込む直前には、プチスポットと呼ばれる海底火山が新たに顔を出すことがある。太平洋プレート上のプチスポット近傍では高い地殻熱流量が観測されており、海底を通した水循環が起こってると考えられている。本研究課題は、このプチスポット海底火山の中を流れる熱水循環が、海底地殻をどのように改変するかを調べる研究である。本研究により、例えば沈み込むプレートの温度構造がどのように変わるかを議論することができ、その結果として、沈み込み帯の巨大地震に温度構造が与える影響を見積もることができるようになる。 プチスポットの中を流れる熱水循環を計算するための数値計算法についての検討を行った。本研究では実装が簡単な加速化陽解法を適用することを計画している。陽解法で重要な点は、許される時間ステップを知ることである。そこで、まず通常の流体についての加速化陽解法について、時間ステップが決まる仕組みを明らかにした。本研究では山体の変形に関連する要素である。 次に、浸透流の熱対流計算を陽解法を用いて解くための手法を開発した。本研究が扱うのは山体の中の水循環であるから、計算メッシュは不規則にならざるを得ない。そこで、有限要素法を用いることが必須である。そこで加速化された陽解法の有限要素法への実装を行った。しかし陽解法を不規則メッシュの系にそのまま適用すると実は効率が悪いことがわかっている。一方このような系を差分化された式(計算機が扱う形式)のレベルで見ると、計算メッシュが均一で浸透率が不規則な場合に似ている。そこで、浸透率が不規則な場合の計算法を計算メッシュが不規則な場合に適用した。その結果、この方法が不規則メッシュの系を効率よく計算できることを確かめることができた。以上より、本研究課題が扱う予定の数値計算方法を実装することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ここまで行ってきた数値計算法の検討により、今後の数値計算を効率よく行うためのいくつかの方法を見い出すことが出来た。具体的には、加速化陽解法の時間ステップが決まるメカニズムを明らかにすること、有限要素法に加速化陽解法を組み込むこと、不規則メッシュ系について陽解法を効率的に適用すること、等が実現できた。以上により、本研究課題の遂行に必須である、プチスポットのような複雑な形状をもつ山体を流れる熱水循環の計算を効率的に行える方法論が完成した。同様に、山体の変形についての計算についても効率よい計算が行うことができる。他方、当初計画していた、山体の大きさなどをパラメータをとした組織的な計算はまだ完全には行えていない状況である。以上から、研究はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、プチスポットの中を流れる熱水循環について、山体の大きさや透水性、複数の山体を考慮する場合は密集度をパラメータとして、組織的な数値計算を行うことを計画している。計算機環境の構築は済んでいるため、計算の実行は十分可能であると考えている。ここまでの計算ができれば、研究開始2年度としてはほぼ当初の計画通りということになる。 また、熱水変質により空隙が詰まる過程に対する数値計算を開始したい。ただし、具体的な反応を組み込む前に、研究代表者が過去の研究において行ったように、概念的な反応を用いることで空隙が詰まる過程を表現することを検討している。熱水変質の詳細(反応速度などのパ熱力学的パラメータ)については今後文献調査を行う予定であり、これを用いた計算を行うのは、最終年度になると考えている。
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