研究課題/領域番号 |
22K03771
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
苗村 康輔 岩手大学, 教育学部, 准教授 (50725299)
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研究分担者 |
角野 浩史 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90332593)
吉田 健太 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 副主任研究員 (80759910)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 超高圧変成岩 / ザクロ石かんらん岩 / クロマイト / ザクロ石 / 炭酸塩マグマ / ハロゲン / 希ガス同位体比 / ボヘミア山塊 / リソスフェアーアセノスフェア / 希ガス同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
世界の造山帯に見られるザクロ石かんらん岩にはリソスフェアとアセノスフェア由来のものが存在し、アセノスフェア由来のザクロ石かんらん岩はコーナー対流運動に対応する温度圧力履歴をもつこと、およびメルト包有物の存在から定性的には識別が可能とされてきた。しかし、同一のザクロ石かんらん岩について提案される温度圧力履歴について研究者間に意見の相違が見られること、メルト包有物の希少性から、汎用的な識別法としては不十分だった。本研究ではより客観的な判定基準を得るために、世界中のザクロ石かんらん岩のザクロ石の分析を行い、その希ガス同位体比とハロゲン含有量を用いて識別の指標となるパラメータ抽出を試みる。
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研究実績の概要 |
R4年度は、研究計画の方向性を共同研究者と議論し、世界中のザクロ石かんらん岩のザクロ石を主にターゲットにしたハロゲンおよび同位体組成の化学分析を行うことにした。そして、まず予察的な分析を行うためにザクロ石の鉱物分離を行った。チェコボヘミア山塊からはアセノスフェアタイプの代表であるモヘルノかんらん岩、中国勝利口かんらん岩からもザクロ石を分離した。さらにモンゴルタリアットの新生代火山に見られるパイロープ巨晶も分析に加えた。クロマイトについては、チェコボヘミア山塊のプレショビチェかんらん岩から粗粒なクロマイトを分離した。岩手大学で切断した岩石試料を、京都フィッショントラックに送り、鉱物分離作業を依頼した。2キログラム相当の岩石を処理した結果、約0.1グラムの粗粒クロマイト(0.1mm径以上)を採取することができた。それらの試料は分担者の角野氏によって、原子炉に送られ放射化実験が行われた。さらに超高圧条件で形成されたクロマイトの探索を目的として、モンゴル西部のKhantashirオフィオライトのゾンゴル岩体の野外調査を行い、クロマイト試料を数点採取した。 この研究経費を用いて、ニコンの偏光顕微鏡を岩手大学教育学部に購入した。今後、この装置を駆使して世界中のザクロ石かんらん岩の薄片を見直し、分析試料の選定を行う準備が整ったといえる。 また、一年目は鉱物分離作業を行うために、人力による粉砕と実体顕微鏡下での分離作業により大変な労力をかけてもコンタミの可能性を完全に排除できない可能性が明らかになった。その点について、分担者の吉田氏の手配のもと、海洋研究開発機構のセルフラグ装置を用いて効率的な分離作業が可能かについて今後検討することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鉱物分離作業が予想したよりも大変であること、および原子炉での放射化実験が10月20日までと期日があったが、授業などの業務が忙しい時期と重なり、思うような処理ができなかったことが主な要因である。この点については、本年度は海洋研究開発機構のセルフラグ装置を使用して改善したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は手持ちのザクロ石かんらん岩試料 約20点ほどについてセルフラグによるザクロ石を分離精錬を行う所存である。これらの試料を10月末までに東大角野氏に送り、京都大学の実験施設において放射化実験を開始する予定である。そのために、手持ちのザクロ石かんらん岩の薄片を徹底的に見直し、ザクロ石中に包有物が無数に見られる斑状変晶タイプのザクロ石を含んだかんらん岩を選択して、分析試料を選定を目下遂行中である。また手持ちの含スピネルザクロ石かんらん岩約10点を6月末までに角野氏に送り、スピネルの鉱物分離と放射化実験を同時並行で行っていただく予定である。放射化実験を行ったあと、角野氏の地球化学ラボにおいて、ハロゲン量と希ガス同位対比の分析をR5年度末からR6年度にかけて行う予定である。 今回の研究計画では、ザクロ石かんらん岩のクロマイトやザクロ石のハロゲンや希ガス同位体比分析を目的とした。一方で、クロマイトやザクロ石中には含水鉱物やカーボネートが包有されることが頻繁にあり、分析で得られた結果を検討する上で岩石記載と照らし合わせることが最も重要である。申請代表者は野外調査と岩石記載が担当であり、分担者角野氏の分析技術と組み合わせてこれまで報告例のない超高圧クロマイトのデータを出すことをめざしている。 クロマイトのハロゲン比と希ガス同位体比データについては、これまで未報告データを新たに埋めるという意味で分析技術が重要であるため、角野氏とその雇用されたポスドクによって論文化される予定である。 一方で、ザクロ石のハロゲン比と希ガス同位体比データについては、十分に記載したザクロ石資料を用いて分析データと照らし合わせることが重要なため、申請代表者が主著者として国際雑誌に論文投稿したいと考えている。 いずれにしても、岩石学と最先端の地球化学分析技術を組み合わせることで、新規性のある研究成果を出したい。
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