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位相幾何学的解析による火山性微動・長周期地震のメカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K03774
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分17040:固体地球科学関連
研究機関東京大学

研究代表者

武尾 実  東京大学, 地震研究所, 名誉教授 (00197279)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード火山性微動 / 長周期地震 / 相図解析 / 位相幾何学的解析
研究開始時の研究の概要

マグマ湧出期やマグマ噴火の時期に発生する火山性微動,長周期地震は,マグマ噴火の発生機構を解明するための重要な情報を提供する.本研究では,複数の火山でこの時期に観測された火口近傍での多様な振動特性を示すデータに基づき,マグマ噴火の多様な発生機構に迫る.本研究の学術的独創性は,相図解析法という位相幾何学的な解析を用いて,データの振幅スペクトルだけでなく,位相的な特徴も含めた特性を解析することで,観測により整合する数理モデルを構築する点にある.さらに,推定された数理モデルから弾性は励起乗り気系を導き出して地震波を計算し,観測データの定量的評価を行って,マグマ噴火の発生機構解明を目指す.

研究実績の概要

マグマ噴火に先行するマグマ湧出期やマグマ噴火の時期に発生する火山性微動や長周期地震は,マグマ噴火の発生機構を解明するための重要な情報を提供する.本研究では,複数の火山でこの時期に観測された火口近傍での多様な振動特性を示すデータに基づき,マグマ噴火の多様な発生機構に迫ることを目指す.2011年新燃岳の噴火活動の中で火口内にマグマが湧出する時期に発生した調和型微動について,Takeo (2021)で構築した粘性流体の流動に起因する数理モデルに基づき,相図解析という位相幾何学的なアプローチによって発生機構のダイナミクスに考察を行った.すでに,Takeo (2021)はこの活動期間中に最大の振幅を持つ調和型微動について流体流動の数理モデルにより,観測データの振幅/位相構造の特徴を再現できることを示している.2023年度は,この活動期間で最も長い継続時間を持つ微動を含む約40分にわたって断続的に発生した活動に注目して,その発生機構の検討を行った.その結果,調和型微動の中でも比較的振幅の変化が小さく安定した位相特性を示す振動は,一定の流路パラメータのもとで供給源の圧力を変化させるだけで観測データの振幅/位相構造の特徴を再現できることが確認された.一方,振幅変化の大きい領域でも,特徴的な相図を示す部分が何ヶ所か見られるが,その振動特性を単一の経路パラメータのもとでは再現することは出来なかった.このことは,継続時間の長い振幅変化の大きな微動の場合,特に振幅変動の大きな部分では複数の流路での流体移動が複雑に絡み合っている可能性を示唆している.この成果については,2023年秋の日本火山学会秋季大会で報告した.さらに,今年度は,マグマ湧出機に発生した長周期地震について,2011年新燃岳噴火,2017年西之島噴火の観測データについての解析を開始し,相似な地震群の抽出を進めつつある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では,新燃岳の調和型微動・長周期地震および浅間山の長周期微動・長周期地震の観測データを再現する数理モデルの解明を目指して,まず,新燃岳の調和型微動を再現した粘性流体の流動に起因する数理モデルの挙動の整理を進めてきた.その成果に基づき,2023年度は,2011年新燃岳噴火のマグマ湧出期に発生した調和型微動のうち,これまで解析されていない最も長い継続時間を持つ微動を含む一連の長時間の調和型微動について,その発生機構の検討を進めた.その結果,調和型微動の振幅変化が大きな時期には,複数の流路が関連した流体移動が複雑に絡み合っていることを明らかにした.また,この調和型微動の発生と並行して,相似な波形を示す長周期地震の活動も確認されている.これらの同時期に発生する2種類の現象の関連性を明らかにすることは,マグマ湧出期における火道内部のプロセスを解明する上で重要である.一方,2017年西之島噴火ではマグマ湧出期に調和型微動の発生は見られないが,相似な長周期地震群の発生は確認されている.また,2004年浅間山噴火では,マグマ湧出期に活発な地震活動が発生しており,モニター記録上では調和型微動や長周期地震を明瞭に確認することは出来ないが,予備的な解析の結果,長周期成分を含むシグナルが含まれている可能性があると見られる.そこで,調和型微動のさらなる解析作業と並行して,2011年新燃岳噴火での長周期地震群の同定と活動推移の把握,2004年浅間山噴火での長周期地震群と微動の同定とその活動推移を把握するための解析作業を進めつつある.

今後の研究の推進方策

2024年度は,先ず,2011年新燃岳噴火のマグマ湧出期に発生した長周期地震群の抽出を行い,特徴的な長周期地震のテンプレートを作成,マグマ湧出期からブルカノ式噴火期初期に亘る長期間の長周期地震群の活動履歴を明らかにする.また,特徴的な長周期地震の振幅/位相構造についても,相図解析という位相幾何学的なアプローチによって,Takeo (2021)で提唱した粘性流体の流動数理モデルによって再現可能であるかどうかを明らかにする.この2つの解析を進めることで,マグマ湧出期の調和型微動と長周期地震群の関係を解明することを目指す.2017年西之島噴火のマグマ湧出期における長周期地震群の活動は,これまで比較的大きな振幅を持つ地震群に限られていたので,この活動についても,長周期地震のテンプレートを作成して,活動開始から噴火に至る全期間での長周期地震群の活動履歴を明らかにする.2004年浅間山噴火のマグマ湧出期については,この時期に発生した振動データの長周期成分についての解析を進めることで,長周期地震群や微動活動の抽出をすすめ,2011年新燃岳噴火や2017年西之島噴火とのマグマ湧出期の活動との比較・検討を進める.さらに,Takeo et al. (2022)にまとめた浅間山の長周期微動・地震を再現するコントロール・バルブモデルと流体流動に起因する数理モデルとの比較・検証を進め,浅間山の長周期微動・地震の解明を行う.これら火口近傍での高品質の観測データが得られている3つの噴火活動におけるマグマ湧出期の微動・長周期地震活動の発生メカニズムを比較・検討することで,マグマ噴火に先行するマグマ湧出期の火道内部で発生している現象の解明に取り組む.

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Recent volcanic activity at the Asama volcano and long-period seismic signals2022

    • 著者名/発表者名
      Takeo, M., Aoki, Y., and Koyama, T.
    • 雑誌名

      Proceedings of the Japan Academy. Ser. B: Physical and Biological Sciences

      巻: 98 号: 8 ページ: 416-438

    • DOI

      10.2183/pjab.98.022

    • ISSN
      0386-2208, 1349-2896
    • 年月日
      2022-10-11
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 2011年新燃岳噴火時の調和型微動(2)2023

    • 著者名/発表者名
      武尾 実
    • 学会等名
      日本火山学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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