研究課題/領域番号 |
22K03776
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
生田 領野 静岡大学, 理学部, 准教授 (60377984)
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研究分担者 |
渡辺 俊樹 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50210935)
山岡 耕春 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183118)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ACROSS / 地震波速度 / 地下水 / 降雨 / 地下水位 / 人工震源装置 / モニタリング |
研究開始時の研究の概要 |
人工震源装置と地震計アレイを用いて地殻表層部(地盤)の地震波の伝播特性の時間変化を調べ、降雨や地下水位の変化が地震波に与える影響を明らかにする。震動方向を制御できる人工震源を波源として用いることにより、自然の環境震動によっては実現できない震動モードごと、深さごとの応答を導き、地下水位の増減にともない地下の「どの深さで何が」起きるのかを解明する。これまで理論や実験室スケールにとどまっていた亀裂と地震波速度の関係を、自然界のスケールに拡張して理解することが可能となる。本研究を遂行することにより、地下水と地盤の相互作用の理解を深め、地盤の保全や地下水位のモニタリング手法の開発にも寄与する。
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研究実績の概要 |
精密に制御された人工震源装置と地震計アレイを用いて、降雨に伴う地震波走時の時間変化を観測した。降雨に伴う走時変化が特に顕著な後続波について、パーティクルモーションと群速度解析により、到達している波の種類を特定し、2.8秒付近に到達し(速度に直すと1.1 km/s)水平成分が卓越する波をラブ波、3.8秒付近に到達し(0.79 km/s)鉛直面内でレトログレードを示す波をレイリー波と特定できた。これらの地震波の走時変化は、降雨量に対して指数関数で減衰する応答を見せた。この際、2つの波群ではその応答感度と減衰の時定数が顕著に異なり、ラブ波はレイリー波の約1.5倍の感度を持ち、時定数はラブ波では20日、レイリー波では10日が卓越していることがわかった。 これらをアレイ直下での地下水位、近傍河川の水位の降雨に対する応答と合わせて解釈した。河川水位の応答には地震波の応答よりずっと速い数日とラブ波の変化相当の20日程度の成分が混在する一方で、地下水位は4m程度の深さで、これらに比べてきわめてゆっくりと変化していることが分かった。河川水位の二つの成分は典型的な地表流出成分と地下水流出成分であり、ラブ波が地下水流出成分をよく反映している一方で、レイリー波は地表流出成分の影響を受けていることを示唆している。地下水の地震波速度変化への影響について、複数の弾性定数が別々の応答をしている様子が捉えられているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
降雨、地下水位データの蓄積により、降雨に対する応答の詳細な検討ができた。またアレイ解析により後続波を同定できたことで、異なる波群の応答の違いから、地下水および地表水がどのように地震波速度の変化に寄与するのか、一定の理解に達する結果が得られた。 他方で表面波の分散曲線から弾性定数の深さ分布を推定できることを期待したが、検討の結果、地下構造の推定の不確定性が大きく一意な解を得るのが難しいことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、降雨に対する地震波速度の応答の検出とそのメカニズムの追求を行う。ここまで異なる波群間での応答の違いが明らかになったので、更に以下の3点を中心としたアプローチを進める。すなわち、1.異なる条件での観測。2.応答の非線形性への着目とタンクモデル。3.地盤の強度変化の検出である。 1.これまでのサイトは震源-観測点間に沖積層で埋められた谷地形を含み、主に沖積層表層を流れる地表水と地下水の応答が見られたものと考えられる。今後は間に沖積層を含まない緩斜面に地震計を設置し、斜面での地表流出成分と斜面への浸透、地下水流出の影響が地震波速度の変化にどのように表れるのか比較検討を行う。 2.また特に地震波の応答には線形な応答成分と、雨期とそれ以外で異なる非線形な応答成分が含まれていることが分かった。タンクモデルによる流出量計算を行い水文学的な解釈を付与できるはずである。 3.2種類の地震波速度に現れる密度と弾性定数の変化を、地下水による空隙の充填と空隙率の増大でモデル化できそうなことが分かった。地盤の強度を変化させると考えられる、空隙率の増大を伴う地下水変化を抽出する。
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