研究課題/領域番号 |
22K03777
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
風間 卓仁 京都大学, 理学研究科, 助教 (20700363)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 活動的火山 / 重力観測 / マグマ質量 / 火道内マグマ対流 / トンガ火山噴火 / スケールファクター |
研究開始時の研究の概要 |
火山内部における質量変動現象(例えばマグマの移動や密度変化など)を把握することは、火山活動を監視し予測するという意味において防災・減災の観点上非常に重要であり、火山噴火のダイナミクスを理解するという観点において基礎科学的にも興味深い研究テーマである。そこで本研究は、日本国内の活火山周辺で重力加速度の観測を実施し、得られたデータを詳細に解析することで、火山内部のマグマ質量の分布やその時間変化を把握し、質量変動の観点から火山活動を詳細に理解する。
|
研究実績の概要 |
本研究は活動的火山において広帯域の重力観測を実施し、火山内部のマグマ質量移動プロセスを解明することを最終目標としている。本研究の初年度にあたる2022年度は、以下の3つの研究を実施した。 (1) キャンペーン重力測定: 本研究は、火山地域における質量時空間変動を把握するため、富士山・箱根・阿蘇・桜島の各火山でキャンペーン相対重力測定を実施した。特に、桜島火山では2022年10月と2023年3月に相対重力測定を実施し、そのデータを1998年以降の重力データと統合することで、1998年以降の重力時間変化を推定した。その結果、桜島火山の中央部では最大+4.1 microGal/yrの重力増加が継続しており、この重力増加は桜島中央部直下の海抜下3.5 kmにおける+8 * 10^9 kg/yrの質量増加で説明可能であることが分かった。この質量増加は、火道内マグマ対流に伴う脱ガスマグマの密度増加を反映しているものと考えられる。 (2) 重力連続観測: 本研究は、火山地域における短い時間スケールの重力変化を捉えるため、阿蘇・桜島の各火山で相対重力の連続観測を実施した。また、各火山における新たな連続観測点の増設を念頭に、京都大学で相対重力連続観測を試験的に実施した。その結果、2022年1月15日トンガ火山噴火の気圧変動に伴って、京都大学で約1 microGalの重力変化を検出することに成功した。 (3) 重力計の検定観測: 本研究は、相対重力計で得られる重力値の系統誤差や器差を低減するため、北海道から沖縄に至る長距離測線で相対重力計の検定観測を実施した。その結果、複数の相対重力計のスケールファクターを高精度に決定したほか、相対重力計のスケールファクターが読取値に対して線形的に変化していることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の申請書においては、以下のような方策によって研究を進めることを計画していた。[1] 火山周辺の多点における繰り返し重力観測、[2] 火山近傍における重力連続観測、[3] 重力計検定および重力データ補正、[4] 質量時空間分布のインバージョン解析、[5] マグマ質量供給プロセスのモデル化。上記【研究実績の概要】の項目で示した通り、[1], [2], [3]については研究第1年度目の2022年度で既に取り掛かっており、既に重力データの蓄積や重力計の検定が予定通りに進展している。また、[4], [5]については初期的な結果を既に報告済みであり、研究協力者とともにより詳細な解析や論文出版のための準備を進めている。このように、当初申請書に記載していた内容については、おおむね順調に進展していると言える。 さらに、本研究は京都大学で相対重力の連続観測を試験的に実施していたところ、2022年1月15日トンガ火山噴火の気圧変動に伴う1 microGalの微小な重力変化を検出することに成功した。一般的には相対重力計の観測精度は10 microGal程度と言われているものの、今回は重力値を連続的に観測することで10 microGalよりも小さなシグナルを検出することができた。また、本研究の重力計検定観測によって、複数の重力計においてスケールファクターが読取値に対して線形的に変化することが分かった。スケールファクターの読取値依存性はこれまで特定の重力計でのみ確認されていたが、本研究によってスケールファクターの読取値依存性を多くの重力計で確認することができた。これらの研究成果は本研究の計画時には想定していなかったものであり、この意味において本研究は申請書執筆時の計画よりも大いに進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の2年度目(2023年度)以降においては、まず各火山におけるキャンペーン重力観測や重力連続観測を継続する。対象火山は初年度(2022年度)と同様、富士山・箱根・阿蘇・桜島の各火山を予定している。これに関連して、2023年度には本研究の資金を活用して重力計の修理を依頼する予定である。というのも、桜島火山で古くから重力測定を実施していたラコスト型相対重力計G892が、2018年10月以降測定不能状態に陥っている。この重力計を修理し、2023年度に新たな重力測定をすることができれば、過去のデータと比較することで桜島火山の重力変化をより正確に定量化できると期待されるのである。 また、本研究は初年度(2022年度)に実施した相対重力計の検定観測について、2023年度以降も補充的な検定観測を実施する。本研究ではこれまで6台の相対重力計に対して検定観測を実施してきたが、一部の重力計については観測精度が不十分であったり、読取値レンジが不足していたりするなどの問題があった。そこで、2023年度はこのような問題を抱えている重力計に対して検定観測を再度実施し、スケールファクターをより正確に決定することを目指す。 さらに本研究は、これまで火山地域で得られてきた相対重力データを整理し、重力時空間変動やマグマ質量変動の解析を進める。桜島火山については既に初期的な解析結果を報告済みであるが、2023年度以降は研究協力者とともに国際学会や国際学術誌で発表できるよう解析や準備を進めていく。また、この他の各火山についても同様の解析を実施し、火山内部の質量時空間変動を把握する。特に、阿蘇火山では近年火山活動の活発度が短い期間で上昇・下降を繰り返しているため、阿蘇火山で取得されてきた重力データを用いることで火山内部の熱水やマグマの変動プロセスを理解できると期待される。
|