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確率的震源モデルによって解き明かされる, 地震の成長と停止

研究課題

研究課題/領域番号 22K03782
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分17040:固体地球科学関連
研究機関立命館大学

研究代表者

平野 史朗  立命館大学, 理工学部, 助教 (60726199)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
キーワード数理地震学 / 断層 / 震源時間関数 / 確率微分方程式 / 強震動予測 / 断層運動 / 震源過程 / 地震 / 震源物理学 / 破壊力学
研究開始時の研究の概要

地震時には, 地下の断層と呼ばれる破壊面に沿って岩石が高速で滑ることが知られている. この破壊と滑りは殆ど毎時刻, 地球の何処かで生じ, 殆どはごく小さいまま終わってしまうが, ごく稀に何らかの理由で大きく成長する. つまり断層滑りが始まってから終わるまでにどのような過程を辿るのかが, 地震発生物理学にとっての関心事である.
本研究では, この断層滑りの成長と停止を, 確率的に捉えようとするものである. 過年度の成果にて, 地震時に断層で解放される力が成長する確率を評価する数理モデルを提唱済みであり, これを拡張して, より複雑な地震や一連の地震活動の時系列をも理論的に理解することを目指す.

研究実績の概要

これまで進めてきた、確率モデルによる断層滑り時刻歴(確率的震源時間関数)の簡便な生成法を提案した上で、同モデルが持つ統計的性質や、これを強震動予測に適用する場合に再現される特徴を吟味した。
前プロジェクトにて提案した確率的震源時間関数では、地震の継続時間も確率変数となっており、大部分の地震が極めて短い時間内で終わってしまうという特徴を持つ。これにより地震の規模についての経験則を旨く再現できているが、一方で強震動予測のように、特定の継続時間を持つ地震についての震源時間関数を生成したい場合には扱いが困難となる。そこでこれまで利用していた Bessel 過程という確率過程を支配する確率微分方程式を用いるのではなく、 Bessel 橋という確率変数を生成するアルゴリズムを用いて、任意の継続時間を持つ震源時間関数を生成した上で、それが(先述の、規模についてのものを除く)複数の地震学的経験則を満たすことを確認した。
こうして生成された確率的震源時間関数の応用として、これを強震動予測への入力とした場合の統計的性質を調べた。まず、新しいアルゴリズムでは地震動の高周波成分の強さをコントロールできることを示し、その程度によって予測される強震動の強さがどの程度の幅を持つかをシミュレートした。特に2重コーナー周波数モデルと呼ばれる震源モデルにまつわる一連の研究と比較した結果、観測された強震動の統計的性質を説明するために妥当なパラメタの範囲が明らかとなった。
将来発生しうる地震の細部は事前に予測し得ないため、強震動予測などは確率的に行なわれるべきである。本年度の成果は、そうした確率的予測への入力として確率的震源時間関数モデルが有効であることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題に掲げた目標には、震源過程の時空間的な広がりを確率的に表現すると共に、そのモデルの応用可能性を検討することが含まれる。ここまでの成果では、先に単純な(空間的広がりを無視した場合についての)モデルの応用可能性を検証し、強震動予測における性能評価が可能になりつつある。また、不均質な地殻構造を仮定した上で地震波形を計算するための地震波動場シミュレータの利用準備も整い、デモンストレーション程度には地震波形を計算できるようになった。パラメタを変更しつつ同様の計算を多数実施することで、強震動予測の幅を定量化可能な見込みである。
また、空間的な広がりを考慮した確率モデルについては、数値シミュレーションによって確率波動方程式と地震破壊の類似性を複数発見し、2024年度上旬には学会発表を予定している。この研究を発展させることで、時空間的な震源過程逆解析の結果を説明しうる確率モデルを提唱することが期待できる。

今後の研究の推進方策

前項記載の通り、確率波動方程式と震源過程との類似性を足がかりに、確率的な震源過程のモデル化を目指す。現時点では空間1次元のモデルを扱っており、実際の断層破壊が空間について(少なくとも)2次元的であることを考えると、不足と見なされる可能性が高い。しかし長大な断層では1次元モデルに近い振る舞いが期待されるなど、歴史的には1次元モデルからでも断層挙動についての理解が多数得られており、当面は1次元モデルに注力する。その範囲内で克服すべき課題は、解の挙動を表わす確率密度関数が不明であるために、個別の数値シミュレーションを実施せざるを得ないことである。確率モデルでは多数回のシミュレーション結果における統計的性質が重要であり、かつ決定論的モデルと同じ数値手法では計算精度が低下することから、高精度かつ多数回のシミュレーションを実施するためのコストが大きくなり、まずはこれを克服する。
同じ理由で、自由度の大きな空間2次元モデルの計算には更なる困難が予想される。そこでGPUを用いた並列計算による高速化の可能性を模索する。確率微分方程式の解はマルチスケールであり、細かい離散化が要求される。しかし既に市販のグラフィックボードにおいてもメモリが20GBを超えるものが入手可能となっており、2次元確率波動場のシミュレーションも期待できるレベルである。既存の確率偏微分方程式ソルバが本モデルに適用可能かを吟味し、不足があればコードを開発して、シミュレーション結果を得る。そして、その解の統計情報が震源過程逆解析における経験則をどのように満たすかを検証する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 確率的震源時間関数を用いた地震動シミュレーション2023

    • 著者名/発表者名
      平野史朗
    • 学会等名
      日本地震学会2023年秋季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Modeling earthquake process and ground motion based on a stochastic differential equation2023

    • 著者名/発表者名
      Shiro Hirano
    • 学会等名
      10th International Congress on Industrial and Applied Mathematics
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 震源時間関数形状のパラメタ化2023

    • 著者名/発表者名
      平野史朗
    • 学会等名
      SOURCE INVERSION WORKSHOP
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Quantifying complexity of observed and synthetic moment rate functions2023

    • 著者名/発表者名
      平野史朗
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2023年大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 地震動シミュレーションに入力するためのランダムな震源過程2023

    • 著者名/発表者名
      平野史朗
    • 学会等名
      日本応用数理学会2023年研究部会連合発表会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 地震学における弾性波動論と確率過程の親和性2022

    • 著者名/発表者名
      平野史朗
    • 学会等名
      日本応用数理学会2022年度年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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