研究課題/領域番号 |
22K03795
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
椎野 勇太 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60635134)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 古生物 / 形態 / 適応 / 進化 / バイオメカニクス / 機能形態学 / 流体 |
研究開始時の研究の概要 |
約5.4億年間にわたる顕生累代を通して,生命は進化や絶滅を繰り返してきた.その原動力には,生死の明暗を分けるような環境変動だけでなく,生物固有の生態が関係していたと想像される.本研究では,オルドビス紀末の大量絶滅で甚大な被害を受けた腕足動物を題材に,エサや酸素といった資源の活用能力と成長戦略に基づいて,当時の多様性がどのように生み出されていたのかを明らかにする.具体的には,3次元形態解析によってエサの濾過器官の発達具合を評価し,流体解析によって濾過摂食水流の形成能力を明らかにする.これらの結果から,絶滅した腕足動物の進化多様性について理解することを目指す.
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研究実績の概要 |
本研究は,オルドビス紀に繁栄した代表的な腕足動物であるゾワビエラ類とプラチストロフィア類の濾過摂食戦略を明らかにすることを目的としている.今年度は,主にゾワビエラ類の化石を用いて形態解析および流体解析を実施した. 腕足動物の濾過摂食は,二枚の殻の開口部から流入・流出させる流体力学的な効率だけでなく,流入した海水から微小な有機物をエサとして濾過する濾過器官の形態にも強く依存する.そこで,ゾワビエラ類Eoplectodontaの化石標本を用いてマイクロフォーカスX線CT撮像し,濾過摂食空間である殻の内部構造を復元した.連続断層画像を基に3D形態を解析した結果,背殻の内面には濾過器官である触手を配列させるリッジ状の構造が認められた.このリッジは,腹殻の内面へ近接するよう屹立しており,きわめて短い触手しか配列できなかったことを示唆する.また,3Dモデルを用いて流体解析を行った結果,殻の開口部に沿って発生する圧力分布は単調であり,殻内外の水流を受動的に交換するには効率的でない形態を持っていることがわかった. これまでの研究により,プラチストロフィア類の殻形態は,殻の内側で濾過摂食水流を形成する受動的な機能を持ち,特徴的なジグザグ縫合線が殻内側の水流を弱化させる機能を持つことがわかっている.これに対してEoplectodontaは,流体力学的な機能に劣るものの,多数の短い触手を狭い殻内側の空間に備えていたこととなり,比較的能動性を期待したような濾過摂食戦略であったと考えられる.両グループに認められる形態学的な差異は,特有の濾過摂食戦略を反映した結果であったかもしれない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体の計画のうち,ゾワビエラ類の流体解析を実施することが本年度の目的であり,予定通り実施した.また,プラチストロフィア類の形態解析については,すでに初年度から進めており,予定通り進んでいるといえる.ゾワビエラ類については,昨年度から延期したX線マイクロCT撮像を通して新たな形態学的知見を得ることができた.このような進捗を鑑みて,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,これまでに得た成果を国際学会で発表すると共に,投稿用の論文作成に取り組む.また,2年目に得た新たな知見を基に研究を進め,研究計画をさらに進めた解析に取り組む予定である.特に,ゾワビエラ類の内部構造解析は,先行研究でも取り組まれた例がなく,ゾワビエラ類を含む高次分類群,ストロフォメナ目の進化多様性とその絶滅について踏み込むテーマともなりうると予想している.同様に,プラチストロフィア類についても形態解析を実施し,ゾワビエラ類と比較可能なデータセットを揃えると共に,両グループの濾過摂食に関わる機能形態学的多様性についても考察を試みる.
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