研究課題/領域番号 |
22K03810
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
濱田 繁 九州大学, 工学研究院, 教授 (90432856)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 疲労き裂伝ぱ / 損傷蓄積 / 疲労き裂発生 / 繰返しせん断負荷 / ひずみの局所化 / 疲労き裂進展 / その場観察 / 転位 / 塑性ひずみ |
研究開始時の研究の概要 |
冷間圧延によって集合組織が形成されたBCCステンレス鋼を例にとって,以下の項目を検討し,損傷蓄積過程のその場観察手法を開発しする. (A)SEM 内純モードII両振り繰返し負荷試験によるき裂伝ぱ挙動観察 (B)DICを用いた繰返し負荷時のin-situひずみ変化挙動観察 (C)EBSD法を用いた結晶方位・塑性ひずみ発達挙動観察(除荷時) (D)上記に対する結晶塑性有限要素法(CP-FEM)を用いた数値解析による検証.
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研究実績の概要 |
本研究では,純モードII繰返し負荷における損傷(転位・空孔・ボイド)蓄積過程のその場観察手法を開発する.近年開発されている高強度材では,従来の炭素鋼とは異なる組織・強化機構が用いられている.そして,経験則を用いて構築された,疲労強度予測式が適用できないケースが見受けられる.申請者は,この原因が,これらの材料の疲労き裂進展モードが,現在一般的に理解されているモードとは異なる,「損傷蓄積モード」の疲労き裂伝ぱである点にあると捉えており,各種材料でその傍証となる結果を示している.このモードのメカニズムは,負荷の繰返しによって,特殊な微視組織を原因として,局所に転位が蓄積し,ボイドの発生・成長・結合によってき裂を形成し,その後既存のき裂と結合することによって生じると考えている.そこで,損傷蓄積モードの存在とその疲労強度に及ぼす影響を明らかにし,挙動の予測ができるようにするための基礎を開発する. 以上の研究目的に対して,冷間圧延によって集合組織が形成されたBCCステンレス鋼を例にとって,以下の項目を検討し,損傷蓄積過程のその場観察手法を開発している.これまで,研究計画の前半部分にあたる以下の項目を実施した.(A)SEM内純モードII両振り繰返し負荷試験によるき裂伝ぱ挙動観察(B)DICを用いた繰返し負荷時のin-situひずみ変化挙動観察.これら項目の実施によって,損傷蓄積による疲労き裂伝ぱが生じていることを,その場観察によって示すことができた.また,ひずみ変化を把握したことによって,ひずみとして現われて負荷回数に応じて発達する損傷の発達状況を把握することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,現状では挙動の予測ができていない損傷蓄積モードの疲労き裂伝ぱを対象として,以下の項目を行なうことによって,損傷蓄積過程のその場観察手法を開発している. (A)SEM 内純モードII両振り繰返し負荷試験によるき裂伝ぱ挙動観察: 申請者の研究室において,これまで開発した独自の実験方法では,デジタル画像相関法Digital Image Correlation(DIC)法によるひずみ測定のためのSEMを用いた撮影の際には,試験機から試験片を取り外す必要があった.そのため,ひずみの測定は除荷時に限られた.疲労き裂進展メカニズムを明らかにするには,負荷時および両振りの測定が必要である.そこで,従来使用している丸棒ねじり負荷治具の代わりに平板の曲げの原理を応用した治具を作製し,従来と同じ直径3mmの円板状試験片を治具のせん断負荷が作用する箇所に貼り付け,SEM内疲労試験機を用いて繰返し負荷を加える.そして,き裂伝ぱ挙動を観察する. (B)DICを用いた繰返し負荷時のin-situひずみ変化挙動観察: 前項で製作した疲労試験システムを用いて,試験片表面に微小なマーク(ここではコロイダルシリカ)を分散させてマーカとするDIC 法,つまりμ-DIC法を用いて負荷によって生じるひずみの変化挙動を観察する. 以上のその場観察手法の構築を完了し,さらに予き裂の圧延方向に対する影響の実験的検討を行なった.予き裂を圧延方向と平行に導入した場合,繰返しせん断負荷によって予き裂方向に疲労き裂が伝ぱすることは容易に想像できる.しかし,予き裂を圧延方向と垂直に導入した場合,結晶組織が予き裂方向とは垂直の方向に並ぶので,ひずみの局所化が生じにくく,き裂の伝ぱに影響がおよぶことが想像できる.この点に関して実験を通して明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,計画の前半部分に沿って構築した実験手法を用いて,後半の課題に取り組む.具体的には以下の項目である. (C)EBSD法を用いた結晶方位・塑性ひずみ発達挙動観察(除荷時): 同疲労試験システムを用いて,疲労試験を行ない,Electron Backscatter Diffraction(EBSD)法を用いて結晶方位の変化および塑性ひずみ発達挙動を観察する.ただし,EBSD法を用いた観察の際には,試験片を疲労試験機から取り外す必要があるため,観察は除荷時のみのとなる. (D)結晶塑性有限要素法,Crystal Plasticity FEM(CP-FEM)を用いた数値解析: 損傷蓄積モードの疲労き裂伝ぱは,材料の結晶塑性を考慮したFEM解析が必要である.これを可能にする CP-FEM解析を導入する.本申請課題に対して適用し,CP-FEM解析結果と上記試験観察結果と総合することによって観察手法の妥当性を検討し,方法を確かなものにする.
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